「星野恭子のパラスポーツ・ピックアップ」(458) パラ陸上世界選手権、閉幕。日本は金4つを含む11個のメダルと、14のパリパラ出場枠を獲得!
世界107の国・地域から約1300選手が出場し、フランス・パリで開かれていたパラ陸上の世界一決定戦、「パリ2023世界パラ陸上選手権大会」は7月17日、10日間の全日程を終え、閉幕しました。日本からは37名の代表選手が出場し、全11個(金4、銀3、銅4)のメダルを獲得。また、今大会4位以内に入った選手の所属国に与えられるパリ2024パラリンピックの出場枠は14枠をつかみ取りました。
なお、前号(457号)で、全7個(金2、銀2、銅3)のメダルを獲得していた13日までの前半戦をリポートしましたので、今号では14日から最終17日までの後半戦をコンパクトにお伝えします。
(参考:前半戦リポート)
▼(457) パラ陸上世界選手権、パリで開催中。来年のパリパラへの弾みに!
■期待のホープが、鮮烈デビュー
14日から17日までの後半戦では全4個(金2、銀1、銅1)のメダルを、4位以内に与えられる出場枠は6枠を獲得しました。
強い印象を残したのが、世界選手権初出場ながらメダル2個を獲得したT13(視覚障害・弱視)の福永凌太選手(中京大クラブ)です。まず、男子400mでは初優勝を果たしました。14日の予選をアジア新記録となった47秒79のタイムで1位突破し、翌15日の決勝でも「プラン通り」という大きな走りで同タイムをたたき出して勝利。フィニッシュでは「自然に勝手に出た」という豪快なガッツポーズと雄叫びが飛び出しました。
世界選手権デビュー戦で、男子400mT13を、アジア新で初制覇した福永凌太選手。2日後には同走り幅跳びでもアジア新で銀メダル獲得の活躍 (撮影:吉村もと)
福永選手は小学校から陸上を始め、大学では10種競技でインカレを目指していましたが、「世界一になる」ことを目標に約3年前からパラ陸上に参戦。来年のパリパラリンピックをその舞台に見据えていましたが、いち早く夢をかなえました。
さらに、最終日に行われた同走り幅跳びでは3回目に7m01を跳び、アジア記録を更新すると、5回目には7m03まで記録を伸ばし、銀メダルを獲得しました。金メダルにはわずか3㎝届かずでしたが、「今日の周りの選手の結果なら金を狙えたが、これが今の実力。(最初の種目だった)400mと違い、走り幅跳びは楽しめた」と穏やかな表情で振り返りました。来年のパリパラリンピックでは400mを中心に複数種目で、「世界記録を更新して金メダル」の目標を掲げます。さらなる活躍が楽しみです。
後半戦もう一つの金メダルは、16日に行われた4x100mユニバーサルリレーでつかみ取りました。障害の異なる男女各2名の4選手がバトンでなくタッチでつなぐパラ陸上特有のリレーです。全8チームが4チームずつの予選を走り、東京パラ金で世界記録ホルダーのアメリカや強豪の中国が失格するなか、日本は確実につないで予選を3番手(48秒21)で突破。メンバーは1走(視覚障害)の澤田優蘭選手・塩川竜平ガイド(エントリー)、2走(切断・機能障害)の三本木優也選手(京都教育大)、3走(脳原性まひ・立位)の高松佑圭選手(ローソン)、アンカー(車いす)の生馬知季選手(GROP SINCERITE WORLD-AC)でした。
4x100ユニバーサルリレーで初めての金メダルを獲得した日本代表チーム。左から、澤田優蘭選手と塩川竜平ガイド、辻沙絵選手、松本武尊選手、生馬知季選手(撮影:吉村もと)
午後に行われた決勝では2走を辻沙絵選手(日本体育大学)、3走を松本武尊選手(AC・KITA)に替えて臨み、今季ベストとなる47秒96をマーク。2位でフィニッシュしましたが、1位のカナダが失格となり、日本が繰り上がりで金メダルを獲得しました。2位はイギリス、3位はブラジルでした。
ユニバーサルリレーを指導する高野大樹コーチは、「予選も決勝も選手はしっかりつないで走ってくれた。確実につないでいけば何かがあるということ。金メダルを獲得できて本当に良かった」と話しました。
他に、女子砲丸投げF46(上肢障害)で齋藤由希子選手(SMBC日興証券)が11m42で銅メダルを獲得しました。元世界記録ホルダーの齊藤選手は昨年3月に第1子を出産、「産後1年でここまでよくやったと思います」と振り返り、「4位以内が目標だったので、今日の出来としては100点です」と笑顔で話しました。
女子砲丸投げF46で銅メダルを獲得した齋藤由希子選手。来年のパリで、さらなる高みを目指す (撮影:吉村もと)
また、4位に入り、パリパラ出場枠を獲得したのは3人です。まずは、女子走り幅跳びT63 (大腿切断)で東京パラ4位の兎澤朋美選手(富士通)が4m59を跳び、4位に。また、男子F37(脳原性まひ)円盤投げで日本記録を更新する50m99を投げた新保大和選手(アシックス)、女子走り幅跳びT20(知的障害)でアジア新となる5m44を跳んだ酒井園実選手(ISFnet)の二人です。ともに世界選手権初出場ながら、堂々としたパフォーマンスで大きな結果を残しました。
なお、今大会全体では世界新記録が35個も生まれるなど、パラ陸上の進化を強く感じさせる大会でもありました。次の世界選手権は日本で初開催となる神戸市で、来年5月17日から25日までの開催が決まっています。
若い選手たちの活躍も印象的だった今大会の日本代表は、地元開催となる来年の神戸大会や、その先のパリパラリンピックも見据え、さらなる強化を図っていきます。
(文:星野恭子)