「星野恭子のパラスポーツ・ピックアップ」(457) パラ陸上世界選手権、パリで開催中。来年のパリパラへの弾みに!
パラ陸上の世界一決定戦、「パリ2023世界パラ陸上選手権大会」が7月8日からフランス・パリで開催されています。107カ国から約1330選手がエントリーしている今大会は4位以内に入った選手の所属国にパリパラリンピックの出場枠が与えられる重要な大会でもあります。大会は全10日間、17日まで続きます。
男子T11(視覚障害・全盲)5000mで初の金メダルを獲得した唐澤剣也選手(中央)と前半を伴走した森下舜也ガイド(左)と後半伴走者の小林光二ガイド (撮影: 吉村もと)
日本からは37人(男子23人、女子14人)の代表選手が出場枠獲得に挑んでいて、大会6日目の13日までに金メダル2個、銀メダル2個、銅メダル3個を獲得しています。
金メダルを獲得したのは2選手で、まず、男子T11(視覚障害・全盲)の5000mで、唐澤剣也選手(SUBARU)が15分5秒19の大会新記録で金メダルに輝き、1500mでも4分8秒26で銀メダルを獲得しました。
男子T11(視覚障害・全盲)5000mで、金メダルに向かってラストスパートする唐澤剣也選手(右)と小林光二ガイド。2位の選手を2秒以上離してフィニッシュした (撮影: 吉村もと)
唐澤選手は5000mのレース後、「来年のパリ(パラリンピック)に向けて自信になると思うが、他の選手も私を目標にやってくると思う。負けないように、来年も金を取れるように頑張りたい」と意気込み、1500mについては「初めてのメダル(獲得)なので嬉しいし、自信になる。ただ、タイム的にはまだまだ」と、さらなる成長を誓っていました。
また、男子T52 (車いす)の佐藤友祈選手(モリサワ)が1500mを大会新記録(3分36秒22)で3連覇達成。しかし、自身のもつ世界記録(55秒13)の更新と4連覇を狙っていた400mでは56秒41の銀メダルに終わりました。東京パラリンピック二冠の佐藤選手は来年のパリパラリンピックを見据え「パラリンピックの金メダルは譲りわたさない。世界記録は(優勝したベルギーの選手が)54秒19を出してしまったので、(次は)しっかり塗りかえるという気持ちでやっていきたい」と覚悟を語りました。
銅メダルはまず、女子走り幅跳びから二人。T64(片ひざ下切断)で前回2019年大会の女王、中西麻耶選手(阪急交通社)が5m38(-0.5)で、T12(視覚障害・弱視)の澤田優蘭選手(エントリー)が5m23(-0.4)で、ともに今季ベストの跳躍で3位に入りました。
中西選手は前回2019年大会の女王でしたが、「挑戦者に戻って、今自分ができる精一杯をいかに尽くしていくかというところにだけ集中しようと思っていた」と振り返り、2大会連続のメダル獲得を振り返りました。
さらに、男子T52(車いす)の1500mで、世界選手権初代表の伊藤竜也選手(新日本工業)が1分0秒84の自己ベストで銅メダルを獲得しました。「すごく緊張していたが、自分の中で士気を高め、それがいい結果につながったんじゃないか。60秒台を目標にずっとやってきて達成したのも良かった」。15日にはメイン種目の100mにも出場します。
若手選手も躍動しています。東京パラリンピック7位入賞の21歳、T36(脳原性まひ)の松本武尊選手(AC・KITA)は男子400m決勝で55秒85のアジア新記録をマークし4位入賞を果たしました。「タイムは思ったより速くてビックリ。8レーンなので、周りは気にせず、ドカンと行こうと思って走った。(東京パラの時より)気持ちが成長した」と手応えを語りました。
伸びやかなフォームが持ち味の松本武尊選手。400mで前半から積極的な走りでアジア新をマーク (撮影: 吉村もと)
世界選手権初出場の新星たちもポテンシャルを存分に発揮しながら、貴重な経験を得たようです。男子T12(視覚障害・弱視)の23歳、石山大輝選手(順天堂大大学院)が走り幅跳びで6m83を跳び、4位入賞。「自己ベスト(7m07)付近までもっていければと思っていたが、(慣れない海外で)調整がまだできていなかった」と悔しさをにじませつつ、「海外の試合は観客が多く楽しかった」と、さらなる成長を誓いました。
T34(脳原性まひ)の19歳、小野寺萌恵選手(あすなろ屋羽場店)は100mで初の決勝進出も果たし、19秒41で5位入賞を果たしました。18秒98の自己ベストを持ち、メダルも期待されただけに、「最低でも4位以内に入りたいと思っていたが、ベストタイムが出せず難しかった」と悔しさをにじませました。16日の800mで巻き返しを狙います。
T20(知的障害)の21歳、菅野新菜選手(みやぎTFC)は女子400m予選で今季ベストの1分0秒55をマーク。決勝では1分0秒59で7位入賞を果たしました。59秒86の自己ベストを持ち、「周りが速い選手ばかりで、(スタートから)頑張ってついていったが、1分かかってしまった」と振り返り、今後はスタートの強化などに取り組み、さらなる進化を誓っていました。
なお、会場は連日、子どもたちを含む大勢の観客が集まり、選手たちの挑戦を大声援で後押ししています。閉幕する17日まで競技はつづき、日本勢もまだまだ多数、登場します。また、世界新記録も多数、生まれています。この先もどうぞ応援ください!
パリ2023世界パラ陸上競技選手権大会の舞台、シャルレティ・スタジアム (撮影: 吉村もと)
選手たちの素晴らしいパフォーマンスに声援を送る観客たち (撮影: 吉村もと)
(文:星野恭子)