「星野恭子のパラスポーツ・ピックアップ」(523) 熱戦つづく日本選手権。ゴールボールは男女年間勝者が決定、ブラインドサッカーは予選ラウンドがスタート!
年度末が近づき、国内ではさまざまな競技で年間王者を決める大会が開かれています。今号では11月2日から3日にかけて行われた視覚障害者スポーツ2つの日本選手権をリポートします。
一つは、ゴールボールのクラブチーム日本一を決める、「第31回 日本ゴールボール選手権大会」です。7月から9月にかけて行われた予選会を勝ち抜いた男女各6チームが出場。それぞれ総当たり戦を行い、上位4チームが決勝トーナメントに進み、最終順位を競います。その結果、男子の部はゴールデンスターズが2連覇を、女子はチーム附属が3連覇を達成しました。
アイシェードを着けた選手が3人対3人で得点を競うゴールボール。日本選手権は今年で31回目を迎えた
男子優勝のゴールデンスターズは全員が20代という若手主体のチームですが、パリパラリンピック日本代表2人を擁します。男子得点王にもなりチームを率いたのはパリ大会日本代表の主将も務めた金子和也選手です。「連覇がかかり、いろいろなプレッシャーがある中でやり遂げれられたのは大きい。去年に比べて、1つひとつの課題を 1人ひとりが改善して克服して、成長を感じられる大会だった」とチームとしての手ごたえを語りました。さらに、「若いチームなので、ベテランチームに比べれば、経験値は少ないのでミスもある。だからこそ、一喜一憂しないようにとメンバーには伝えていた。点は取られるもの。でも、点を取り返したり、次に失点しないためにどうするかなど、コミュニケーションを取ることを心がけようと話し、それを実行できたことが(ベテランチームの)経験に勝てた要因かなと思う」と振り返りました。
同じくパリ大会で活躍した鳥居陽生選手は、「個人的にはコンディションが良くない中で臨んだ大会だったので、2連覇できてチームメイトに感謝したい」と話しましたが、代表選手の存在がチームに与えるアドバンテージも大きいようです。高野悠斗選手は「ディフェンスの仕方や改善点を教えてもらえるのは大きな強み」と言い、徳田龍之介選手は、「技術的なアドバイスだけでなく、同じコート内で戦うことで技術を吸収するぞという気持ちでプレーしている」。チームワークの良さを感じさせました。
ゴールボール日本選手権男子の部を制した「ゴールデンスターズ」。左から、鳥居陽生選手、金子和也選手、高野悠斗選手、徳田龍之介選手
女子を制した「チーム附属」もパリパラリンピック日本代表や強化指定選手が4選手中3人という強豪です。大会MVPにも輝いた神谷歩未選手は、「女子予選会ではディフェンスで崩れてしまい、勝ちはしましたが、苦しい展開だった。本戦はそこを修正して 0失点を目標にやってきて、達成できてよかった」と手応えを口にしました。また、大会敢闘賞を受賞しパリパラリンピック日本代表としても活躍した安室早姫選手は「3連覇を目指していたので、嬉しいです。勝ちたい勝ちたいと前のめりになるよりは、楽しんで思い切ってやろうと決勝前に思えたのがよかった」と勝因を語りました。
また、「攻撃で貢献したいと思い、自分のボールを磨くことをひたすら頑張ってきた」という木村由選手は「得点でチームに貢献できてよかった」と笑顔で振り返り、途中出場で守り切った松村めぐみ選手は、「私はなかなか練習に参加できないなかでしたが、この1年でチームの絆が深まり、シンプルに楽しめた大会でした」とチームスポーツの魅力を口にしていました。
女子の部で大会3連覇達成の「チーム附属」。左から、木村由選手、神谷歩未選手、安室早姫選手
なお、11月22日、23日にはパリパラリンピックで金メダルを獲得したゴールボール男子日本代表選手たちも出場する、「2024ジャパンパラゴールボール競技大会」が開催されます。日本A・Bチームがオーストラリア、ポーランドチームと頂点を競います。入場は無料で、オンライン配信も予定されています。世界一のパフォーマンスを間近で見るチャンス。こちらも、ぜひ応援ください!
<第31回 日本ゴールボール選手権大会 結果>
男子の部=優勝:ゴールデンスターズ/準優勝:スーパーモンキーズ/3位:サンダース/4位:Triple Search/5位:Team JIN/6位:チーム雷
女子の部=優勝:チーム附属/準優勝:Mervilles/3位:なでしこ/4位:RE☆STARTS/5位:順天堂大学Moons/6位:Shiny One
個人賞
MVP女子の部:神谷歩未(チーム附属)/同男子の部:金子和也(ゴールデンスターズ)
最多得点賞女子の部:小宮正江(なでしこ)/同男子の部:金子和也(ゴールデンスターズ)
敢闘賞女子の部:安室早姫(チーム附属)/男子の部:小野悠(スーパーモンキーズ)
■頂上決戦は来年2月。ブラインドサッカーの日本選手権
ブラインドサッカーでは、クラブチーム日本一決定戦である「第22回 アクサ ブレイブカップ ブラインドサッカー日本選手権」が11月から来年2月にかけて開催中です。今年は全22チームがエントリーしており、予選ラウンドを全国2会場(葛飾、広島)で行い、勝ち上がった8チームが12月22日の準決勝ラウンド(浜松市)に進出。上位4チームが来年2月8日のFINALラウンド(東京都町田市)で3位決定戦、決勝戦を戦うという大会形式で行われます。
ブラインドサッカー日本選手権予選ラウンドで熱戦展開。相手エースのドリブル突破を阻止しようとチームで守る「free bird mejirodai」の選手たち(オレンジ)
11月2日から3日にかけて、予選ラウンドの一つが葛飾区水元総合スポーツセンター多目的広場(東京都葛飾区)で行われました。全22チームのうち10チームがグループA、B、C、Dに分かれ、各グループで総当たり戦を2日間にかけて行いました。この結果、各グループの首位となった4チームが準決勝ラウンドへの出場権を獲得しました。大会連覇を狙う「free bird mejirodai」、古豪「たまハッサーズ」、強豪「buen cambio yokohama」、そして、初の準決勝ラウンド進出となった「琉球Agachi」の4チームです。
なお、11月16日、17日には広島会場で残りの予選ラウンドが行われます。12チームが葛飾会場と同様に4グループに分かれて総当たり戦を行い、各グループ首位の4チームが準決勝に進出します。こちらも入場無料です。ぜひ、ご注目ください。
準決勝ラウンド進出を決めた「buen cambio yokohama」の齊藤悠希選手(中央)
【第22回 アクサ ブレイブカップ ブラインドサッカー日本選手権】
準決勝ラウンド:12月22日(日)/サーラグリーンフィールド(浜北平口サッカー場/静岡県
浜松市)
FINALラウンド:2025年2月8日(土)/町田市立総合体育館(東京都町田市)
なお、チーム球技の日本選手権としては、12月20日から22日(横浜市)に車いすラグビーが、来年1月31日から2月2日(東京・渋谷区)に車いすバスケットボールが予定されています。こちらも、どうぞお楽しみに!
(文・写真:星野恭子)