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「星野恭子のパラスポーツ・ピックアップ」(306) 東京パラ500日前に、河合選手団長が改めてメッセージ。「こえろ、みんなで」

新型コロナウイルス感染拡大を受け、延期された東京パラリンピックですが、東京都など7都府県に緊急事態宣言も出され、大会を目指す選手の練習環境にも影響が出ています。こうした状況のなか、新たな東京大会開幕日(2021年8月24日)から数えて「500日前」となった4月11日、東京パラ日本代表選手団団長で、日本パラリンピック委員会(JPC)の河合純一委員長がJPCの公式フェイスブックに動画を投稿し、大会を目指すアスリートたちに向け、メッセージを送りました。

「苦労を乗り越えた先に、東京2020パラリンピック競技大会という最高峰の舞台に立つことができる。困難な状況にチーム一丸となって、立ち向かっていきましょう」

パラリンピアン出身らしく、「世界中のアスリートが等しく、この状態を耐え忍んでいる」と慮った上で、「500日後とゴールが決まった今、タイムラインを引き直し、万全の準備をして最高のパフォーマンスを発揮してほしい」と呼びかけています。「できないことを考えるのではなく、どうすれば、できるかを工夫してみては」とし、自宅でのトレーニングや映像情報などを駆使した自分自身やライバルの分析、SNS等を通じたチームメンバーとのコミュニケーションの機会をと提案。

来年の本番では、「満員の会場で、皆さんの最高のパフォーマンスを通して、勇気・強い意志・インスピレーション・公平という、パラリンピックの4つの価値を届けたい」とし、最後に、「こえろ、みんなで」と日本代表スローガンで力を込めました。

▼日本パラリンピック委員会(JPC)河合純一委員長のメッセージ動画
https://www.facebook.com/jpcsports/videos/346091119684793/

河合委員長も指摘していますが、「困難な状況」のなか、どう対応するかが問われています。パラスポーツ関連の主な動きを以下にまとめました。

8日には強化拠点の一つである、東京・北区にある、味の素ナショナルトレーニングセンター(NTC)と国立スポーツ科学センター(JISS)と国立スポーツ科学センター(JISS)が5月6日まで使用中止となりました。また、全国各地でジムや体育館、プールといった練習場所も使用不可となっています。

2019年9月に開業した、味の素ナショナルトレーニングセンターの拡充棟「NTCイースト」の外観。パラリンピック選手に対応し、バリアフリーの施設になっており、練習場と宿泊施設、食事場所が隣接し、パラアスリートからも「使いやすく、練習に集中できる」と好評だった。
(撮影:星野恭子)

先週もお伝えしましたが、パラスポーツ専用体育館「パラアリーナ」も、新型コロナウイルス感染者用施設に転用されることが発表されています。

▼日本財団、パラ専用体育館などを改修し、新型コロナ軽症者用に1万床を整備へ
https://op-ed.jp/sports/4852

鈴木大地スポーツ庁長官も8日、都内で会見を開き、「できる限りのサポートはしたい」とした上で、「選手の不安はものすごくよく分かりますが、まずはコロナに対して全国民、世界中のアスリートも含めて一致団結して、終息に向けて動き出すことが第一。リスクがある中でだましだましトレーニングするより、しっかり終息した上でスポーツ活動を思いっきりやる。今はそういう方向になっている」と強調しました。

また、国際パラリンピック委員会(IPC)は9日、毎木曜にパラアスリートらに向けて発信している「新型コロナウイルス感染症に関する情報」を更新しました。

主な内容として、来年に延期された東京大会のスケジュールや会場については、できる限り従来の計画を維持する方針であること。代表選考方法や予選大会、選手のクラス分けの基準や方法などは各競技団体と早急に協議しながら、新たな指針を示す意向であること。また、すでに各国や地域の選手が獲得した出場枠は、来年まで維持する方針が示されました。

また、販売済みの観戦チケットについては、基本的には延期された日程でも有効とし、必要な場合は返金にも応じるとしています。

一方で、大会延期の影響の一つとして、「キャッシュフローの変化」を挙げ、例えば、IPCとして今後の資金繰りへの対応が必要だとしています。

▼国際パラリンピック委員会の情報ページ(4月9日更新)
Information for Para athletes and IPC members regarding coronavirus (2020-4-9)
https://www.paralympic.org/news/information-para-athletes-and-ipc-members-regarding-coronavirus

さらに、IPCは公式サイトのなかで、新型コロナウイルスに立ち向かう事例も紹介しています。例えば、「パラリンピック発祥地」である、イギリスのストーク・マンデビル病院に隣接する、パラスポーツ施設が感染者向けに約240床のベッドを設置した医療施設に転用されたようです。

また、東京大会出場を目指す選手の中には現在、医療従事者として最前線で活躍している選手もいるそうです。その一人、スペインのトライアスリート、スザーナ・ロドリゲス選手は、「東京大会はきっと、人々の健康と自由と平和を祝う、特別な大会になるはずです」とコメントしています。

「500日後の笑顔」を信じて、今はまず、世界中の皆が一丸となってウイルスを封じ込めることが最優先でしょう。その中で、一人ひとりがそれぞれの立場でできることを懸命にやるべき時にあるのだと思います。

(文:星野恭子)