「星野恭子のパラスポーツ・ピックアップ」 (151)
ドーピング問題で、リオ・パラからロシア選手団除外。日本は追加派遣5選手を発表
8月23日: スポーツ仲裁裁判所(CAS)は、国ぐるみのドーピングを理由にロシア選手団のリオ・パラリンピックへの参加を認めないとした国際パラリンピック委員会(IPC)の決定について、取り消しを求めたロシア・パラリンピック委員会(RPC)の訴えを却下すると発表しました。CASのこの裁定により、ロシア選手団(約260人)のリオ大会からの全面排除がほぼ確定しました。 IPCの規則には、「加盟国は世界ドーピング防止規定を守る義務がある」と明記されており、IPCは今回、ロシアはこの義務を果たしていないので加盟国資格を停止し、そのため選手団もリオ大会から除外すると発表していました。CASはこの決定手続きについてIPCに違反はなく、ロシア側も決定を覆す証拠を提示できなかったとして、ロシアの訴えを却下する判断を下したというわけです。 IPCのクレイヴン会長は声明の中で、「パラリンピックにドーピングは一切許さないという我々の信念が認められた」とCASの判断を歓迎し、また、ロシアの選手への同情を示すとともに、ロシアが状況を改善し、将来的な復帰への期待感も示しました。 IPCはすでに、ロシアのリオ大会参加枠を各国に再配分しており、日本パラリンピック委員会は26日までに5選手の追加派遣を発表しました。これにより、日本代表選手団は選手132名、伴走者など競技パートナー15名、競技役員・コーチ65名、本部役員18名の計230名となります。 CASの決定に対してロシア側は、「政治的な意図がある」などと猛反発。プーチン大統領は、「不道徳で非人道的な決定」と非難し、リオ大会に出場できないロシア選手団のために「特別な大会」を開催する考えを示しています。また、RPCのルキン会長は26日、CASの裁定取り消しを求め、スイスの裁判所に提訴したことを明かしました。この問題はまだ、完全終結とはいえないようです。 なお、リオ・パラリンピックは9月7日(日本時間9月8日)から18日(同19日)までの11日間に、約170の国と地域から約4,000選手による熱戦が全22競技で繰り広げられる予定です。リオ大会チケット販売、急上昇
8月24日: 国際パラリンピック委員会(IPC)は、リオ・パラリンピック大会の観戦チケットの販売枚数が、21日のリオ・オリンピック閉会式前後の数日間で急増していることを発表しました。それによると、前日の20日は16,000枚だったものの、21日には5万枚、22日には10万枚と伸ばし、23日には13万3千枚を記録。これで、現時点でのチケット売上総数は60万枚を超えたそうです。 この状況について、IPCのゴンザレスCEOはオリンピック終盤でサッカーやバレーボールで優勝したブラジル選手の活躍が国民の意識を刺激し、パラリンピックへの興味にもつながったのだろうと歓迎しています。チケット額は競技や座席などによって10レアル(約310円)から130レアル(約4,000円)で、主催者発表によれば、チケット販売数の多い競技は、5人制サッカー(ブラインドサッカー)、シッティング・バレーボールのほか、陸上競技、水泳、車いすバスケットボールなどのようです。 とはいえ、チケット総数は全250万枚なので、やっと2割強を売り上げたところ。楽観視はできません。リオ・パラリンピック大会は以前から、運営資金の大幅不足のため会場の一部変更など予算削減対策を余儀なくされる状況になっていて、クレイヴンIPC会長も、「パラリンピックの56年の歴史上、初めての事態」と危機感を示しているほどです。開幕まであと10日間。チケット販売促進に加え、新たなスポンサー探しやコスト削減など今後の対応にもまだ注目が必要です。「2020東京」開幕まで4年。各地で記念イベント開催
8月25日: 2020年東京パラリンピック開会式まで、ちょうど4年となり、各地で記念イベントが行われました。東京都庁前広場では、カウントダウンイベント「みんなのTokyo2020 4Years to GO!!」が開催され、小池百合子都知事が、「パラリンピックを成功させてこそ、2020年大会が成功したと胸を張って言うことができる。(9月7日に開幕する)リオ大会でファンになり、2020年まで応援してほしい」などと挨拶しました。 つづいて、都内小中学生ら約100人が「2020パラリンピックの巨大エンブレムづくり」に挑戦。同エンブレムは2020オリンピックのエンブレムと全く同じ3種類の四角形が15個ずつ、計45のピースでデザインされており、制作したアーティスト野老朝雄さんによれば、「多様性と調和」が表現されています。そこで、イベントではオリンピック・エンブレムのピースを動かして、パラリンピックのエンブレムにつくり変えることで、「違いを認め、つながり合う」ことを体感しようというものでした。 2020オリンピック・エンブレムから、パラリンピック・エンブレムに見事に変化また、東京都内では「大江戸ステーションスタジアム」と題する特別展もスタート。都営地下鉄大江戸線22駅の構内で、2020東京パラリンピックで実施される22競技を紹介し、リオ大会への関心にもつなげようという企画イベントです。 「大江戸ステーションスタジアム」は8月25日から9月21日まで実施。都庁前駅1階コンコースでは「総合展示」として全22競技の紹介パネルがずらりと並ぶ
同展は、東京都が昨年から進めているパラリンピック体験プログラム事業「NO LIMITS CHALLENGE」の特別版で、各駅の展示場では競技のルールや見どころなどが大判ポスターや動画、実際の競技用具を使った立体展示などが展開されています。注目選手の心情を表したキャッチコピーも必見です。展示は9月21日まで行われています(見学無料)。詳細は、イベント公式サイトでご確認ください。 大阪でも、「パラスポーツを知って、観て、支えて」をテーマに、車いすバスケットボールなどの体験会や写真展などでパラスポーツをPRするイベント「パラスポーツフェスタ」が行われました。あと4年後に迫る「2020東京」大会に向けて、プロモーション活動も加速しています。 <参考>
■テレビ放送
・NHK Rio 2016パラリンピック:
・スカパー! Rio 2016 Paralympic Games:
■大会情報サイト
・日本パラリンピック委員会特設サイト:
・日本財団「パラサポ」特設サイト: ■大会ライブストリーミング (英語解説あり)
・国際パラリンピック委員会公式サイト:
(文・写真: 星野恭子)