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「星野恭子のパラスポーツ・ピックアップ」 (150) リオ・パラリンピック、ここに注目!~(2)団体競技篇

日本勢大活躍のリオ・オリンピックも閉幕し、いよいよ9月7日(日本時間9月8日)にはパラリンピックが開幕します。近年、注目度も競技レベルも急速に高まっているパラリンピック。この機会にぜひ観てほしい! ということで、当コラムでも2週にわたって、日本代表情報を中心にその見どころなどをお伝えしています。前号の個人競技篇 につづいて、今号は団体競技篇です。

日本勢でメダルまで最短距離に位置するといわれるのが、前回ロンドン・パラリンピックで4位に入り、現在は世界ランキング3位のウィルチェアーラグビーです。競技専用の車いすに乗って行う球技で、1チーム4人の対戦競技。「ラグビー」の名の通り、車いす競技では唯一タックルが認められているので、激しいぶつかりあいで転倒もよく起こる迫力のプレイが魅力。ガシャン!という衝撃音には本当に驚かされます。

実は、頸髄損傷による四肢麻痺など比較的重度な障がいのある人を対象に考案された球技です。バスケットボールコートを使い、ボールを持った選手がパイロンで区切られた「キーエリア」を通過すると1得点となります。大きな特徴は「持ち点制」です。各選手には障がいの程度に応じ、重いほうから順に0.5点~3.5点までの「持ち点」が与えられ、コート上の4人の持ち点合計が8点以内でなければならないというルールです。障がいの重い「ローポインター」と軽い「ハイポインター」をどう構成するか。コート上の4人の組み合わせ、「ライン」がポイントです。日本は海外選手にもひけをとらないスピードとパワーをもつエース、池崎大輔選手を軸に、複数の「ライン」を駆使して戦います。

リオ・パラリンピックでは競技は9月14日から18日まで8チームで金メダルを争い、日本は14日、世界ランク6位のスウェーデン戦を初戦に、同7位のフランス(15日)、そして、同1位のアメリカ(16日)との予選ラウンドを経て、世界の頂点を目指します。

大会連覇を狙う、ゴールボール女子。静寂の中の熱い戦い

つづいて注目したい競技は、視覚障がい者の球技として考案されたゴールボールです。1チーム3人で、バレーボールと同じタテ18mXヨコ9mのコートで、ボールを相手ゴール(幅9mX高さ1.3m)に向かって投げ、得点を競うのですが、公平を期すため選手は全員「アイシェード」で目隠しして行います。

では、どうやってプレイするのか。実は、ボールは転がると音が鳴る特製のボールです。さらに、相手の足音や気配といった「音」を頼りにボールの位置を「サーチ」します。また、コート内の各ラインは紐の上からテープが貼られているので、選手は指先や足裏でその紐の凸凹を感じたり、ゴールポストに触れたりして自分の位置を確認します。視覚以外のあらゆる感覚を研ぎ澄まして戦うので、観客にも静かに見守ることが求められます。1試合は前後半12分ずつの24分間ですが、守備側は10秒以内にボールを投げ返さねばならない「10秒ルール」などもあり、静寂の中、息詰まる攻防が展開されます。

日本は前回ロンドン大会で、女子が団体競技としては日本チーム史上初となる金メダルを獲得しており、リオで2連覇に挑みます。海外勢に比べると日本選手はかなり小柄ですが、そこは組織力でカバー。浦田理恵主将を中心に体を張った鉄壁の守備と、すばやい移動やパス交換から繰り出す巧みな投球で得点のチャンスを狙います。

リオでは8日から競技がスタートし、大陸予選などを経た10チームが各5チームずつの予選プールに分かれて決勝トーナメントを目指します。日本はイスラエル(8日)、ブラジル(9日)、アメリカ(11日)、アルジェリア(12日)との対戦で予選を突破し、16日の決勝戦まで突き進みたいところです。

組織的なプレイとスピーディーな展開を堪能!

車いすバスケットボールは第1回パラリンピック大会(1960年)から実施され、歴史と人気を誇る花形競技です。スピード感や車いすならではの迫力もあり、また、「ダブルドリブルはなし」など一部を除き、使用するコートやゴールリングの高さ、ルールの大半は一般のバスケットボールと同じなので、観戦も楽しみやすいでしょう。

ただし、ウィルチェアーラグビーと同じく、「持ち点制」がキモになります。各選手には障害の重い順に1.0点から4.5点の「持ち点」が与えられ、コート上の5人 の合計は14点以内。各選手に与えられた得点や守備などの主な役割と「持ち点」とを考慮して、5選手の組み合わせ「ユニット」が緻密に練られます。複数の「ユニット」を戦略や試合展開に応じて巧みに使い分け、ゲームを進めるのが車いすバスケです。

リオ大会では9月8日から17日まで、男女12チームずつが出場します。日本からは男子チームが1964年東京大会から14回連続の出場を決めており、過去最高順位となる6位入賞を目標にすえています。トルコとの初戦(8日)から、スペイン(9日)、カナダ(10日)、オランダ(11日)、オーストラリア(12日)まで予選プールを戦い、決勝トーナメント進出を狙います。

2013年から日本代表を率いる及川晋平ヘッドコーチによれば、藤本怜央主将と香西宏昭選手という2枚看板を軸に、主に6つの「ユニット」を駆使して目標達成に挑みます。「緻密さ」「和」「積み重ね」をモットーに磨いてきた「個の力」と「組織力」との成果を、大舞台で存分に発揮してほしいものです。

最後にもうひとつ。重度の脳性まひや四肢麻痺の障がい者が対象のパラリンピック特有の競技で、カーリングに似た頭脳戦の球技、「ボッチャ」です。イタリア語でボールを意味するボッチャは個人戦と団体戦がありますが、ロンドン大会で団体戦7位入賞の日本は、ここ最近の国際大会でメダル獲得も重ねており、リオでの飛躍も期待大です。

19日にはそんなボッチャ日本代表(5人)のリオに向けた会見が開催されました。その席でお披露目されたのが、チームの愛称、「火の玉ジャパン」。「勇気と知性をもって勝利を目指し、一球一球、魂(ソウル)を込めて競技する」などの思いが込められているそうです。

150愛称「火の玉ジャパン」のロゴを披露するボッチャ日本代表選手。前列左から、廣瀨隆喜選手、杉村英孝主将、後列左から、木谷隆行選手、藤井友里子選手、高橋和樹選手 杉村英孝主将は、「オリンピックでの日本選手の活躍を見て、次は僕らの出番だと気持ちが高まっている。この4年間、これまで以上にボッチャと真正面から取り組み、リオで勝つために強化してきて、チームとしても自信をもって臨める。リオではすべてを出し切って、ボッチャのすごさや楽しさを、一人でも多くの人に伝えられるよう全力で戦いたい」と力強く語りました。

この言葉、リオに向かう他の競技の代表選手の、今の思いにも重なるのではないでしょうか。リオ・オリンピックは今日、閉幕しましたが、2週間後にはパラリンピックが開幕します。力強いパラリンピアンたちの出番を、皆さん、どうぞお楽しみに。そして、力強いエールもお願いします。

<参考>
テレビ放送
・NHK Rio 2016パラリンピック: http://www.nhk.or.jp/paralympic/
・スカパー! Rio 2016 Paralympic Games: http://www.skyperfectv.co.jp/special/rio/

大会情報サイト
・日本パラリンピック委員会 特設サイト: http://www.jsad.or.jp/paralympic/rio/index.html
・日本財団「パラサポ」 特設サイト: http://games.parasapo.tokyo/rioparalympic/

(文・写真: 星野恭子)