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「星野恭子のパラスポーツ・ピックアップ」 (148) リオ・パラリンピック開幕まで1カ月。日本は17競技に127選手を派遣。「目標は金10個」

開幕まであと1カ月となったリオ・パラリンピックに向け、日本パラリンピック委員会(JPC)は先週8月2日、日本代表選手団の結団式・壮行会を都内のホテルで開催しました。選手127名に加え、競技パートナー15名や役員など全225名が日本代表選手団としてリオに派遣されます。

選手団主将を務める車椅子バスケットボールの藤本怜央選手は、「パラリンピックには4度目の出場になるが、この主将という大きな役割をいい緊張感に変えて挑みたい。リオ・パラリンピックはこの4年間の努力の集大成となるが、(20年)東京大会にしっかりバトンをつなぐ役割も担っている」と決意表明。また、旗手を務める車いすテニスの上地結衣選手は「パラリンピック出場と、金メダルを獲ることが車いすテニスを始めた頃からの最大の夢であり目標。ぜひ今回のリオで達成したい」と意気込みを語りました。

148リオ2016パラリンピック競技大会日本代表選手団結団式で、決意表明を行う藤本怜央主将(中央)と旗手の上地結衣選手(右)

大槻洋也選手団団長は、金メダル10個とメダル獲得ランキングで10位に入ることを目標として掲げ、開催国として迎える2020年東京大会でよりよい成績を上げるためにもぜひ達成したいと語り、「今日がチームジャパンのスタート。パラリンピックの面白さも伝えてほしい」と選手たちに呼びかけていました。

「金10個」という数字について、前回ロンドン大会では金5個、銀5個、銅6個ですから、少し高い目標に感じますが、大槻団長は近年の実績を根拠に積み上げた数字だといい、例えば、男子車いすテニスでシングルス3連覇を狙う国枝慎吾選手や陸上走り幅跳びの山本篤選手、水泳の木村敬一選手や鈴木孝幸選手らの名前を挙げました。

たしかに、他にも自転車の藤田征樹選手や車いすマラソンの土田和歌子選手など国際大会での優勝経験者も少なくありません。本番で実力を存分に発揮して、ぜひ目標達成を期待したいです。

さて、私はこれまで、2008年北京大会から4度、パラリンピック日本代表選手団の結団式・壮行会を取材していますが、今回特に印象的だったことが2点あります。ひとつは取材陣の数。前回ロンドン大会では約150人だったメディアが、今大会は約260人に急増。20年東京大会の開催決定以降、大会現場などでも同じ状況が見られますが、パラリンピックへの関心の高まりを改めて感じました。取材対象となる選手には戸惑いなどもあるかと思いますが、注目を励みに力にしてもらえたらと思います。

もうひとつは、「オリンピックと同等に」という姿勢が強くみられたことです。例えば、この壮行会時点では文部科学大臣だった馳浩氏(*)は来賓祝辞の中で、「リオ後は、合同パレードを企画している。オリンピアンと一緒に銀座をパレードできるよう、いい成績を残してほしい」とパラリンピアンにエールを送りました。事前の報道によれば、合同パレードは10月7日開催で準備が進められているようです。実現すれば、日本では史上初。選手には大きな励みだと思います。4年後の東京パラリンピックに向けて弾みをつける意味でも、リオ大会での日本選手の活躍が大いに期待されます。
(*)8月3日に発足した第3次安部第2次改造内閣で、松野博一氏が文部科学大臣教育再生担当に起用

実は、過去に比べて異例だったことがもうひとつ。式典の冒頭で、7月に相模原市の障がい者施設で発生した殺傷事件を受け、出席者全員が黙とうを捧げたのです。主催者挨拶に立った鳥原光憲JPC会長は、「我々は長年、スポーツを通じて障がい者の自立と社会参加を促し、共生社会の実現を目指してきた。共生社会への変革が進みつつある中、偏見に起因する凶悪事件を断じて許すわけにはいかない」と強い憤りを示しました。

会長はさらに、「パラリンピックにはエリートスポーツとしての魅力はもとより、残された機能を最大限に発揮して、限界に挑戦するアスリートの姿に多くの人が感銘し、勇気を与えられ、ひいては共生社会への変革がもたらされるという、パラリンピックならではの価値がある」と話し、その価値を最大化するために日本代表選手は大きな役割を演じる存在であり、来賓者らにも選手へのさらなる支援を呼び掛けていました。

このように、リオ・パラリンピック日本代表選手団には障がい者理解を深め、共生社会を実現するきっかけとして、あるいは20年東京大会に弾みをつけ、その先のレガシーにもつなげるための担い手としてなど、さまざまな期待がかかっています。9月7日に開幕するリオ大会では、選手の皆さんには持てる力を存分に発揮してもらいたいですし、また一般の皆さんには、「パラスポーツ」を知る大きなチャンスとして注目し、楽しんでいただきたいと思います。

(文・写真: 星野恭子)