ノーボーダー・スポーツ/記事サムネイル

「星野恭子のパラスポーツ・ピックアップ」 (147) 超人たちが帰ってくる!~イギリス民放チャンネル4制作のリオパラCMが話題に!

9月7日に開幕するリオデジャネイロ・パラリンピックをPRするコマーシャル、“We’re The Superhumans(我々は超人だ)”が7月中旬、世界に向けてリリースされ、「すばらしい!」と話題になっています。制作したのは、イギリスの民間放送局「Channel 4(チャンネルフォー)」。4年前のロンドン大会につづき、リオ大会のイギリス国内放送を行うホスト局です。

⇒ リオ大会CM We’re The Superhumans” (音量注意)

実は、ロンドン大会のときも、“Meet The Superhumans(超人たちに会いに行こう)”というタイトルで、地元開催のパラリンピックを宣伝するCMを制作。パラアスリートたちの肉体的、精神的な強さを、斬新でスタイリッシュな映像で表現したCMは視聴者の興味を刺激し、ロンドン大会の盛り上がりに大きく貢献したと言われています。作品自体も、世界最高峰のCM賞「カンヌライオンズ」のグランプリをはじめ、数々の賞を受賞するなど評価されました。

⇒ ロンドン大会CM “Meet The Superhumans(音量注意) 

ロンドン大会版は戦場や交通事故など障がいの要因を彷彿とさせるシーンも盛り込まれ、かなりシリアスなつくりでしたが、新作のリオ大会版は一転、ユーモラスな雰囲気の明るいつくりです。障がいのあるミュージシャンたちのバンドが奏でる軽快な音楽にのり、パラアスリートたちが躍動しています。

超人技の数々とともに、日常生活の様子もクロスオーバーで映し出されるので、「パラアスリートも同じ人間」という親近感や共生の思いも伝えるものになっています。

全編を貫くテーマは、“Yes, I Can! (私はできる!)”。どんな障がいや困難があろうと、人間は可能性にあふれ、挑戦をつづければ、不可能なことなんてないのだ!という力強いメッセージも届けます。

さらに、秀逸なのは、ノーマル版に加え、聴覚障がい者や外国人などにも便利な「手話・字幕付き版」と、視覚障がい者なども楽しめる「音声ガイド付き版」も同時に制作していること。さまざまな状況にある、より多くの人にリーチできるので、伝えたいメッセージをしっかりと伝えることができます。

⇒ リオ大会CMSigned & Subtitled(手話・字幕付き)版 (音量注意)

⇒ リオ大会CMのAudio & Described(音声ガイド付き)版 (音量注意)

こうしたCMもそうですが、「ロンドンはすごいな」と感じます。4年前のロンドン大会でメイン会場だった「オリンピック・パーク」を公園として整備し、スポーツイベント開催など繰り返し利用していますが、イベントには車いすバスケットボールなどのパラスポーツも含まれ、人気の維持に役立っています。

また、パラスポーツの国際大会も積極的に誘致しているし、7月末に開かれたパラ陸上のグランプリ大会は、チャンネル4が一部、中継放送を行ったりもしています。ロンドンでは「パラリンピック後」も、その意義を引き継ぎ、伝えつづける努力がされているのです。

2020年東京大会成功に向けて、組織委員会などにも「ロンドンをお手本に」という姿勢が見られますが、「大会後のレガシー」についても、ロンドンは学ぶべきことが多いなあと、改めて感じています。

(文: 星野恭子)