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パラスポ・トピック (25) 障がい者スポーツに、新たな動き。 さらなる普及の、新たな推進力となりうるか?

こちらのコラムでも、「パラスポーツ」を「障がい者スポーツ」を意味する言葉として使っていますが、この言い換えが世界的にますます広がっていきそうなニュースが届きました。冬季パラリンピックの人気競技、「アイススレッジホッケー(Ice Sledge Hockey)」の競技名称を、ピョンチャン・パラリンピックが開催される2018年から「パラアイスホッケー(Para Ice Hockey)」に変更するというニュースです。 日本アイススレッジホッケー協会公式サイトの6月10日付の記事などによれば、モスクワで5月に開催された国際パラリンピック委員会(IPC)による、IPCアイススレッジホッケーフォーラムでの決定事項らしく、17年は両名称の併用が可能ですが、18年からは完全にパラアイスホッケーとなります。IPCには以前より障がい者スポーツの名称を世界的に統一したい考えがあり、今後は「パラ○○」という競技名が増えていくとみられます。 「パラ○○」という名称はすでに、ルールは一般競技とほぼ同じで、障がいのある選手に合わせてルールの一部や使用機材などを工夫した競技では広まりつつあります。例えば、自転車やトライアスロンがそうで、それぞれパラサイクリング、パラトライアスロンとして定着し、国際大会などでも使用されています。また日本でも、「日本パラ陸上競技連盟(Japan Para Athletics)」は数年前までは日本障がい者陸上競技連盟という名称でしたが、いち早く団体名を変更し、大会名などにも使いだしています。 とはいえ、アイススレッジホッケーの名称変更に関しては数年間、協議されたようです。アイススレッジホッケーは「アイススレッジ」と呼ばれる氷上で使うそりに座って行うアイスホッケーですが、アメリカなどでは義足ユーザーが立ってプレイするアイスホッケーもあるそうです。そのため、「パラアイスホッケー」はアイスレッジホッケーという競技を明確に表した名称ではないといった反対意見もあったというのです。たしかに、名称はその競技をイメージさせ、理解を広めるためのものであり、障がい者が行う競技だからと、一概に「パラ」を付ければ分かりやすい、というものでもないと思います。 例えば、サッカーはさまざまな障がいに応じて、さまざまなサッカーが生れ、楽しまれています。アイマスクをつけ“全盲状態”で行うのは「ブラインドサッカー」、弱視者なら「ロービジョンフットサル」、切断者が松葉杖をついて行うのは「アンプティサッカー」、他に「脳性まひ者」や「聴覚障がい者」を対象にしたサッカーなど多彩です。日本だけでも7つの障がい者サッカー団体が活動しており、それらを「パラサッカー」としてまとめることはかえって混乱をきたすし、まして各競技の普及にはつながらないでしょう。 私が、「障がい者スポーツ」を「パラスポーツ」と言い換えて呼ぶのは、「障がい者だけのスポーツ」ではなく、「障がい者も競技できるよう考案されたり、工夫されたスポーツだけど、実は誰でも楽しむことができるスポーツ」といった思いも込めているからです。そういう意味で、「パラ」という言葉が多用され、広く認知されるようになることは大いに歓迎ではあるのです。でも、「パラ○○」という競技名を広めていくというIPCの取り組みには少しばかり疑問も感じます。今後どのように進み、どのような成果をみせるのか、こちらも注目していきたいと思います。 <参考: 日本アイススレッジホッケー協会> (文:星野恭子)