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パラスポ・トピック (24) 「4年後」を視野に、チャレンジをつづける、ブラインドサッカー(星野恭子)

日本代表、ブラジル遠征で手ごたえ

リオパラリンピックの開幕が迫り、出場が予定されるチームや選手は最後の仕上げに入っているかと思いますが、リオ出場権を逃したブラインドサッカー日本代表は、開催国枠で出場が決まっている2020年東京大会に向け、すでに始動しています。

昨年中にコーチやスタッフは新体制となり、代表選手にも新たな顔ぶれが加わり、4年後を見据え、長期的な視点で強化に乗り出しています。その一環として、6月1日から4日にかけてブラジル・リオデジャネイロで開催された国際親善試合「V International Challenge of Blind Football」に参加、リオパラリンビックを控える強豪国と対戦しました。

出場国はブラジル(世界ランク1位)、アルゼンチン(同2位)、中国(同4位)、日本(同7位)、イラン(同9位)、モロッコ(同14位)、メキシコ(同18位)で、ブラジルBチームを加えた8チーム中、日本の最終順位は7位でしたが、大きな手ごたえを得たようです。

グループリーグの1戦目は日本のリオ行きを阻止したアジアのライバル、イランでしたが、先制されたあと粘りを見せ、若きエース川村怜主将の同点弾で追いつき、1対1の引き分け。第2戦はメキシコに0対1、第3戦はブラジルAに0対5と大敗を喫したものの、気持ちを切り替えて7位決定戦に臨みます。

24_01 6月のブラジル遠征で、「歴史的2得点」を挙げた川村怜主将 (参考写真/2016年3月21日さいたま市ノーマライゼーションカップ2016日本対韓国戦より)

相手は、2007年の初対戦以来、連敗中の中国でしたが、鉄壁の相手ゴールを全員サッカーでこじ開け、最後は川村主将のシュートで1対0の勝利。日本の歴史を変える1勝となりました。最終順位は、1位がブラジルA、2位イラン、3位アルゼンチン、4位モロッコ、5位ブラジルB、6位メキシコ、7位日本、8位中国でしたが、この結果に、高田敏志監督は日本ブラインドサッカー協会(JBFA)を通じて次のようにコメントしています。

「いま取り組んでいることをパラリンピック出場国相手に出し切り、世界での立ち位置を知ろうと臨んだ。得点したことがないイラン相手にも攻撃的に挑み、結果は1対1ではあったがこれまでにない、いい戦い方ができた。ブラジル戦では日本が過去2戦でできていたことができず、スペースと時間を与えてしまった。だが、原因は分かっているし、通用するところも見えてきている。中国戦は自分たちのやることを出し切ることで勝つことができた。コンパクトに保った攻撃的なスタイルと、相手から時間とスペースを奪った守備が大会全体を通してできた。このスタイルを変えずに、まずは(来年の)アジア選手権で1位になり、そこからさらにステップアップしていきたい」。

また、2得点を挙げた川村主将は、「パラリンピックに出場する強豪国との試合を通じて、改めてそのレベルを肌で感じることができた。やってきたことを出し切る準備をして、チーム全員で意識を高めて戦えた。目指すサッカーの方向性に手応えを感じ、出し切れれば点をとれるという実感も得られた。イラン戦ではゴールできたし、それが中国戦の勝利へとつながった。技術、フィジカル、メンタル面は、アジアと世界では差を感じる。日本代表としての誇りを持ち、もっと戦う集団となり、勝てるチームにしていきたい」と力強いコメントを残しています。

国内リーグ戦でも新たなチャレンジ

チームとしてのさらなる進化が期待されるなか、統括するJBFAもまた、新たなチャレンジを発表しています。来月7月に開催される国内リーグの日本一決定戦「第15回 アクサ ブレイブカップ ブラインドサッカー日本選手権(7月9日~10日/東京・アミノバイタルフィールド)」の決勝戦と3位決定戦(10日)で、国内大会では初となる有料席を一部設けるというのです。

とはいえ、有料席はピッチ横に設置する仮設スタンドに設けるプレミアシート8席(5000円/指定席/プレミアムグッズと飲食付)とレギュラーシート92席(1000円/自由席)の計100席のみで、その他の観戦エリアと、予選ラウンド戦は従来どおりすべて無料で観戦できます。

JBFAによれば、有料席設置の理由は、障がい者スポーツが持つまだ知られていない価値を再認識してもらうことと、大会運営力の向上を目指してのこと。2020年東京パラリンピック以降のレガシーのひとつとして有料試合の継続的実施も目指しており、今回の取り組みをベースに試行錯誤しながら段階的に大会運営を進めていくそうです。

JBFAは過去、東京・原宿で開催した「IBSA ブラインドサッカー世界選手権 2014」「IBSA ブラインドサッカーアジア選手権 2015」を初めて有料試合として開催し、両大会でそれぞれ約6,300人、5,500人の有料観戦者を集めた実績があります。世界大会と国内大会では残念ながら関心度も集客力もかなり異なるかと思いますが、それだけに日本選手権でのJBFAのチャレンジの結果には注目したいと思います。

集客力アップのために、JBFAでは以前からさまざまな取り組みを行っています。例えば、視覚障がい選手がプレイするブラインドサッカーは通常のサッカーとは少し異なるので、ルールや観戦方法などを解説した、『観戦ガイド』(http://www.b-soccer.jp/medias/2015/01/Beginners_WEB_0121.pdf)も準備しています。

また、会場内では視覚障がい者も臨場感ある試合観戦が楽しめるよう、専門のアナウンサーによる「音声ガイドシステム(実況中継)」を早くから導入しており、無料貸し出しの受信機(保証金1000円)でサービスを受けられます。基本的には視覚障がい者用のサービスですが、自前のラジオがあれば、誰でも受信可能です。ブラインドサッカー観戦初心者にもルールや戦術などが聴けるので、嬉しいサービスではないでしょうか。

日本選手権は全15チームが参加予定で、先のブラジル遠征で活躍した日本代表選手たちも所属チームに戻って出場します。10日14時50分からの決勝戦の前には初の試みとして、ジュニアチームと女子チームが対戦するエキシビションマッチも予定されているそうです。こちらも、いったいどんな戦いになるのか興味深いです。

いろいろ画期的なチャレンジを重ねるブラインドサッカー。百聞は一見にしかず、です。この機会に一度、生観戦はいかがですか?

<第15回 アクサ ブレイブカップ ブラインドサッカー日本選手権> 日程: 7月9日(土)~10日(日)
会場: アミノバイタルフィールド(東京・調布市/味の素スタジアム横)
有料席チケット発売: 6月9日からJBFAストアサイト(https://store.b-soccer.jp)で受け付け中
大会公式サイト: http://axa-bravecup.b-soccer.jp/

(文・写真:星野恭子)

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