「星野恭子のパラスポーツ・ピックアップ」(108) 2月~3月の注目競技
国内外のパラリンピック関連ニュースを独自にまとめた「パラスポーツ・ピックアップ」。
今号は少し趣向を変え、先月、大きな試合を終えた、アルペンスキーとブラインドサッカーに注目しました。実は、それぞれ今週末、日本国内で試合が予定されています。会場でぜひ、ご声援ください。
■アルペンスキー
2月24日~3月4日まで、今季最終戦となる「IPCアルペンスキー・ワールドカップ・アスペン大会」が米国コロラド州のアスペン・スキー場で開催された。日本からは、男子6名(座位4、立位2)、女子1名(座位)が参戦した。
同ワールドカップは、シーズンを通して世界各国の会場を転戦しながら戦うシリーズレースで、2015/2016シーズンは、これまでに4カ国4会場でレースが行なわれてきた。選手には各レースの順位によってワールドカップ・ポイントが与えられ、最終戦終了時点の合計ポイントで、種目別および全種目総合のシーズン・ランキングが確定する。優勝者には、その栄誉を称えクリスタルトロフィーが授与される。
アスペン大会の結果を受け、日本勢では、男子座位では、森井大輝(トヨタ自動車)が全種目総合優勝のクリスタルトロフィーを獲得した。種目別タイトルでも、ジャイアントスラローム(大回転)とスラローム(回転)で優勝し、3大会連続パラリンピアンの強さを見せた。
2015/2016 男子座位総合優勝を果たし、クリスタルトロフィーを手にした森井大輝選手 (写真提供: 堀切 功/日本障害者スキー連盟)
女子座位でも、ソチ冬季代表の村岡桃佳(早稲田大学)が全種目総合3位となり、クリスタルの銅メダルを手にし、種目別でもジャイアントスラロームで優勝、同スーパーGで2位と健闘した。
女子座位総合3位でクリスタルの銅メダルを獲得した、村岡桃佳選手(右) (写真提供:堀切 功/日本障害者スキー連盟)
・24日: ジャイアントスラローム(大回転)1戦目: 女子座位: 村岡桃佳(早稲田大学) 優勝/男子座位: 森井大輝(トヨタ自動車) 3位
・25日: ジャイアントスラローム2戦目: 女子座位 村岡 優勝/男子座位: 森井 3位
・26日: スラローム(回転): 男子立位: 三澤拓(SMBC日興証券) 2位/同座位: 鈴木猛史(KYB) 優勝、森井 2位
男子立位2位に入った三澤拓選手。片足1本で攻め、2008年以来、久しぶりに表彰台に立った (写真提供: 堀切 功/日本障害者スキー連盟)
・3月1日: ダウンヒル(滑降)1戦、目: 男子座位の狩野亮(マルハン) 3位
・3日: スーパーG(スーパー大回転)1戦目: 女子座位: 村岡 3位
・4日: スーパーG 2戦目: 村岡 3位/男子座位: 狩野 3位
【総合王者となった森井大輝選手のコメント】
本当に長いシーズンでした。序盤にスラロームで波に乗れたことが、すごくうれしいです。松井貞彦元監督に『苦手種目を作るな』と言われ続けてきたのですが、その頃はスラロームが苦手で、それをなんとか克服しようと努力してきた結果だと思います。種目別タイトルが獲れるまでになれたことは自分でも信じられない気持ちですが、でも少しは成長できたのかなと感じています。それも、たくさんの皆さんに支えていただいたおかげだと思っているので、日本に帰ってお礼を言いたいです。
男子座位総合優勝の森井大輝選手。座席にスキー1本を取り付けた、チェアスキーで果敢にアタック(写真提供: 堀切 功/日本障害者スキー連盟)
大日方邦子パラアルペンチームGM
今大会は5人の選手が表彰台に立てたので、これは大きな成果だと感じている。一方で、世界のレベルが上がってきているという印象をあらためて強く持った。日本チームとしての課題は、ひとつは高速系のトレーニング、もうひとつは、チェアスキーなどの用具をどうしていくか。体力強化や栄養指導など、医科学的なアプローチも採り入れてきた。その効果を検証し、さらに良い結果に結びつけることを考えていきたいです。今の日本チームは、本当にたくさんの人からの協力や応援に支えられている。そういった支援に対する感謝の気持ちと責任をつねに感じながら、2018年ピョンチャン・パラリンピックに向けて精一杯の努力を、チーム一丸となってやっていくこと。そして、そのことを通じてスポーツの価値やパラリンピックの魅力を伝えていけるように、チーム一同がんばっていきたい。
【テキスト提供: 日本障害者スキー連盟 写真提供: 堀切 功/日本障害者スキー連盟】
なお、熱戦を終えたアルペンスキー日本代表選手たちは今週末、日本の長野県白馬に舞台を変え、国内大会に臨む。力強い滑りをぜひ、間近で!
<2016ジャパンパラアルペンスキー競技大会>
・日程: 3月19日~21日
19日(土): 開会式
20日(日): 回転 8時~
21日(月・祝): 回転 8時~
・会場: 長野県白馬八方尾根スキー場
■ブラインドサッカー
昨年のアジア選手権でリオ・パラリンピックの出場権を逃がしたブラインドサッカー日本代表は2月、高田敏志新監督体制となって初めて、トルコ代表を迎え、国際トレーニングマッチを行いました。昨年のヨーロッパ選手権を制し、リオ出場権を得たトルコ代表を相手に、2日間で15分x4ゲーム、15分x3ゲームを行い、計1対1で引き分けています。
チームは今、定評ある守備力と組織力に加え、攻撃的プレイスタイルへと進化中。トルコ戦の1点は、若きエースにして、今季から主将を任された川村怜が決め、自らの誕生日に花を添えた。
トルコとのトレーニングマッチで1得点の川村怜新主将 (写真提供 日本ブラインドサッカー協会)
そして、来週21日(月・祝)には、新体制後初となる25分ハーフでの国際試合、「さいたま市ノーマライゼーションカップ2016」に臨む。対戦相手は、昨年のアジア選手権3位の韓国代表。日本は同選手権で日本は韓国に予選リーグでは2対0で勝利したものの、3位決定戦で0対0のPK戦の末敗れている。新チームでリベンジを果たせるかが注目される。
同カップは、さいたま市が2011年に全国の政令指定都市に先駆けて制定した「さいたま市誰もが共に暮らすための障害者の権利の擁護等に関する条例(ノーマライゼーション条例)」の理念に基づいて開始され、今年で4回目となる。これまで、ブラジル代表、ドイツ代表、コロンビア代表を招聘している。
<さいたま市ノーマライゼーションカップ2016>
・日程: 3月21日(月・祝) 13時30分キックオフ
・フットメッセ大宮 (さいたま市)
・入場無料・入退場自由
・併催イベント: 大宮アルディージャサッカー教室(事前申込制)/ブラインドサッカー体験会/イオン飲食ブース/各種啓発ブースなど
今年は韓国と対戦!~さいたま市ノーマライゼーションカップ2016 (写真提供 日本ブラインドサッカー協会)
ブラインドサッカー観戦のチャンスはさらにもう1回。川崎市で26日から2日間にわたって開催される、「KMPGブラインドサッカークラブチャンピオンシップ2016」で、昨年8月より全国各地で行われてきた「地域リーグ」を勝ち抜いた強豪チームが集結し、日本No.1クラブチームを決定する大会だ。今回は21日のノーマライゼーションカップで来日中の韓国代表も招聘し、世界レベルで頂点を決定する。
<KMPGブラインドサッカークラブチャンピオンシップ2016>
◾日程:3月26日(土)~27日(日)※小雨決行 荒天の場合は中止。
◾会場:富士通スタジアム川崎 (JR線「川崎駅」下車 徒歩20分)
http://www.kawasaki-fujimi.com/access/neighbor.html
・2日間の詳細なスケジュール: http://www.b-soccer.jp/9255/event/20160327.html
・入場無料・入退場自由
・併催イベント(予定):企業ブース出展/ブラインドサッカー体験会/フットサル大会
(文: 星野恭子)