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「星野恭子のパラスポーツ・ピックアップ」(105) 12.26~1.15

国内外のパラリンピック関連ニュースを独自にまとめた「パラスポーツ・ピックアップ」。

2016年は今号からスタートです。年末年始期間の主なパラスポーツニュースを集めました。今年はいよいよリオデジャネイロ・パラリンピック開催年。9月7日から18日まで23競技が実施予定です。また、2020年東京大会に向けた動きもいろいろ活発化してきています。当コラムでも興味深い話題をいろいろ追いかけていきますので、今年もどうぞよろしくお願いいたします。 

<2015年>

■車いすフェンシング
・26日: 「車いすフェンシングオープン大会」が駒沢オリンピック公園(東京都世田谷区)で開催され、4選手が出場した男子フルーレは決勝で安直樹(エイベックス)が藤田道宣を15-11で下し、初優勝した。

105_01車いすフェンシンング・オープン大会決勝戦で、安直樹選手(左)が藤田道宣選手を果敢に攻め込む様子。決勝は一般のフェンシングと同様に、会場中央の特設ピスト上でスポットライトが照らすなかで行われた (撮影:星野恭子)

安は車いすバスケットボール日本代表経験もあるが、一昨年引退し、2020年東京パラリンピック出場を目指し、車いすフェンシングに転向した異色の選手。「(優勝できて)ホッとした。課題も見えたので、20年に向けてまた頑張りたい」と話した。安のような他競技からの転向や夏・冬競技の掛け持ちなどは、競技人口の少ないパラスポーツにとって20年東京大会に向けた競技力強化策として期待されるモデルケースの一つだ。

また、今大会は史上初めて、「フェンシング全日本選手権個人戦」と同時開催された。車いすフェンシングは車いすが固定された状態で2選手が向き合い、剣を突き合う。

「初めて観た」というフェンシング経験がある男性は、「脚で動けない分、剣さばきで高い技術が求められるし、体力もかなり使うのではないか。フェンシングの1カテゴリーとして(一般のフェンシングと)試合を一緒にやることに何の違和感もない。むしろ、どんどんやるべき」と話していた。

競技力の強化と普及など、さまざまな意味でパラスポーツの現状と可能性が見えた大会だった。

■ボッチャ

・26日~27日: 「第17回日本ボッチャ選手権大会本大会」がグリーンアリーナ神戸(兵庫県神戸市)で開催された。予選を勝ち抜いた選手などトップ選手のみが参加できる大会で、4つの国際クラス(*)とオープンクラス(立位・座位)に分かれて行われ、各クラスの日本一が争われた。各クラスの優勝者は下記の通り。

<各クラス優勝者>

BC1 藤井友里子 (富山ボッチャクラブ

BC2 杉村英孝 (静岡ボッチャ協会)

BC3 高橋和樹 (埼玉ボッチャクラブ

BC4 藤井金太朗 (市原ボッチャクラブ

OP座位 嶋谷長治 (石川県ボッチャ協会)

OP立位 皆森俊夫 (伊丹ボッチャクラブ)

(*)ボッチャは重度脳性まひ者や同程度の四肢機能障がい者のために考案されたヨーロッパ生まれのスポーツで、パラリンピックの正式競技。カーリングに似ており、ジャックボールと呼ばれる白いボールに自分のボールを転がし、どれだけ近づけられるかを競う。選手は障がいの程度が重いほうからBC1~4まで4クラスに分けられる。

BC1: 車いすの固定やボールを渡してもらうなどの介助を要する

BC2: 上肢での車いす操作が可能

BC3: アシスタントによるサポートで勾配具を使用して投球

BC4: 頸髄損傷など比較的軽度の障がい

■ドイツ発

31日: 国際パラリンピック委員会(IPC)は「2015年素晴らしい瞬間トップ50」の第1位を発表。選ばれたのは、「IPCは2015年、過去最大級の契約内容となる大型のスポンサー契約を2つ締結した」というニュースで、1つはNHKとの2024年まで3大会のテレビ放映権などを含むもので、放送局との契約では史上最高額となる。もう1つは、トヨタ自動車とのワールドワイド・パラリンピック・パートナー契約で、20年東京大会を含む24年まで自動車や移動支援ロボットなどが提供されるというもの。

なお、この「トップ50」はIPCが毎年末恒例で発表しているもので、11月から毎日、50位からカウントダウン形式でIPCの特設ページで発表されていた。全50位の内容については同特設ページ(英文)で確認できる。

(なお、筆者ホームページでは概要のみ翻訳したものを掲載しています。ご興味ある方はぜひご覧ください。 )

<2016年>

■東京発

・4日: 東京都は2020年東京パラリンピックに向けて障害者スポーツの普及に重点的に取り組むため、200億円の「障害者スポーツ振興基金」を16年度に創設する方針を決めたと発表。具体的な使い道は未定だが、障害者スポーツの普及や啓発、競技活動の支援などの経費に充てる考えだという。

・5日: 東京都は平成28年度の予算案のなかで、車いすのまま乗車可能なバスやタクシーを普及させるため、事業者に車両の購入費用を補助する制度を新たに導入する方針を決めた。国土交通省によれば、都内で車いすのままで乗車できるタクシーは現在、約50台しかなく、都は20年東京大会までに1万台に増やすことを目指すという。

・11日: 20年東京パラリンピックの選手発掘を目指し、東京都が主催した「東京都パラリンピック選手発掘プログラム」が開催された。約200人の参加者に対して、各競技団体による競技説明や体験会などが行われた。昨年秋に都内在住、在勤、在学の小学5年生以上を対象に募集された事前申し込みでは10代から70代まで253人が応募したといい、20年東京大会への興味の高さが感じられた。

この日は、車いすバスケットボールや水泳、陸上など15競技から希望する競技の体験や、選手などからアドバイスを受けた。

なお、2月には記録測定や練習試合などを行い、参加者に適した競技を絞り込んでいくプログラムも予定されている。

■パラトライアスロン

・15日: パラトライアスロンの強化合宿が宮崎市で始まった。日本トライアスロン連合の強化指定選手から、陸上競技で3大会パラリンピックに出場し、今年から本格的にトライアスロンに転向し、20年東京大会を目指すという佐藤真海(サントリー)、リオデジャネイロ・パラリンピック女子代表候補の秦由加子(マーズフラッグ・稲毛インター)、競技歴2年の男子の中山賢史朗(東京ガスパイプライン)の3名が参加している。

なお、宮崎ではオリンピック代表候補も合宿中で、日本トライアスロン連合パラリンピック対策プロジェクトの富川理充リーダーによれば、オリンピックとパラリンピックの候補選手が同じ場所で同じ時間に合宿をするのは初めてという。合宿は18日まで行われる。

(文・写真: 星野恭子)