ノーボーダー・スポーツ/記事サムネイル

パラスポ・ピックアップ・トピック (12) 伝統の大分国際車いすマラソンで、 山本選手が、リオ代表に内定!(星野恭子)

来年のリオデジャネイロ・パラリンピックの日本代表選考レースの初戦となる、大分国際車いすマラソンが8日、大分市内で開催され、山本浩之選手(49)が1時間25分2秒で2位に入り、リオ代表選手としての推薦内定を決めました。優勝は6連覇達成となったマルセル・フグ選手(29/スイス)で1時間24分53秒でした。

選考条件は、男子は1時間27分00秒、女子は1時間43分30秒以内のタイムで、海外選手を含む3位以内かつ日本人1位になると、来年のパラリンピックの日本代表選手として推薦されるというものでした。なお、女子は今大会での代表推薦内定者は出ませんでした。

12_01第35回大分国際車いすマラソン大会のフルマラソンのスタート。大会にはハーフを含め、19カ国から283選手がエントリーしていた

レースは1時間27分以内というタイム設定もあり、スタートからハイペースでレースが進みました。序盤は11人のトップ集団でしたが、気温25度を超える暑さもあり、集団は徐々に小さくなり、中間点ではフグ選手、山本選手を含む5選手に絞られる厳しい戦いとなりました。その後は、フグ選手を中心に日本選手が代わる代わる仕掛ける、しびれる展開でした。

レースが動いたのは37キロ地点。フグ選手がスパートをかけ、すぐに反応した山本選手の2選手が抜け出す形に。最後は地力に勝るフグ選手が先行し、9秒差で山本選手がフィニッシュしました。

レース後、「大分のコースがいちばん得意なので、ここで(代表内定を)決めたかった」と話した山本選手は2008年北京、12年ロンドンパラリンピックの代表で、3度目のリオ大会は50歳で迎えます。ロンドン大会以降、見直してきたフォームとポジション(⇒註)が今年春、ようやく安定してきたと言い、「今日はここ数年でいちばん調子がよかった。リオに向けてもっときっちりと固めて、1段も2段もレベルを上げてリオに臨みたい」と意欲を語ってくれました。

⇒ポジション: 車いすの座席の位置。姿勢なども含めた快適性に加え、車輪に力を伝えやすくよりスピードが出せるよう、座席の高さや前後の位置を調整する。慣れて安定するまで長い期間を要することもある。

12_02レース後、インタビューを受ける山本浩之選手

実は、国内の男子車いすレースでは山本選手に加え、副島正純選手(45)と洞ノ上浩太選手(41)からなる「三強」時代が続いています。今大会でも副島選手が3位、洞ノ上浩太選手が5位だったのですが、この二人の間に入り込んだのが31歳の西田宗城(ひろき)選手です。

「失うものは何もない。自分の力をしっかり出そう」と決めてスタートラインにつき、その目標通り、積極的なレースを展開。残念ながら4位に終わり、代表内定は逃しましたが、「前半から積極的に攻めるレースができたことは合格。次につながる」と話しました。「三強」を脅かす一番手として名乗りを上げた西田選手、今後の活躍が楽しみです。

12_03約7キロ地点のトップ集団。先頭は優勝したマルセル・フグ選手。フグ選手の後方ゼッケン12番の白いウエアが西田宗城選手、手前3番が副島正純選手。山本選手は奥のゼッケン2番

そして、次の選考レースは来年2月に開催される第10回東京マラソンになります。今回、推薦内定権を逃した選手はほぼ全員出場する見込みで、さらなる激戦が予想されます。

また、東京マラソンは来年よりIPC(国際パラリンピック委員会)公認大会となり、国際化することが決まっています。これまで日本選手だけでしたが、海外勢も参加することになり、ハイレベルの戦いの中で日本選手が代表争いもするという、とても興味深いものになります。

ところで、大分大会は1981年、「世界初の車いすだけのマラソン大会」としてスタートし、今年で35回目を数えた伝統の大会です。これを機に、賞金額も大幅に引き上げられました。1位30万円から100万円、2位15万円から50万円、3位7万円から30万円となり、さらに世界記録更新ボーナスも20万円から100万円に増額されています。

今年も、男子は世界ランキングのトップ10中8人が、女子はトップ3が全員エントリーしていました。もともと海外勢にも人気の大分大会ですが、今後のさらなる盛り上がりも楽しみです。

車いすレースはスピード感と駆け引きが魅力の見ごたえあるスポーツ。まずは、見どころ多い来年の東京マラソンを、ぜひご観戦ください。

(文・写真: 星野恭子)