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「星野恭子のパラスポーツ・ピックアップ」(100) 10.26~11.1

国内外のパラリンピック競技の話題を独自にセレクトした「パラスポーツ・ピックアップ」シリーズ。

今号も前号に引き続いて、22日よりカタール・ドーハで開催されたパラ陸上の世界選手権を中心にリポート。また、ウィルチェアー(車いす)ラグビーは、強豪オーストラリアを下し、リオ・パラリンピックの出場権を獲得しています!

■陸上競技

・31日: 90を超える国と地域から約1300選手が参加して、カタール・ドーハで開催されていた「2015IPC陸上競技世界選手権」が閉幕した。日本は金3個、銀2個、銅4個の計9個のメダルを獲得し、「2015IPC陸上競技世界選手権」が国別メダル獲得数で18位タイとなった。今大会で金メダル、銀メダルを獲得した選手は来年のリオデジャネイロ・パラリンピック出場内定となる。また、本大会では54個の世界新記録が誕生した。

<26日以降の日本のメダリスト>

・山本篤 (スズキ浜松AC): 走幅跳 T42 金メダル 6m29=大会新記録

「腰に痛みがあった」と試合後に明かした山本。腰に不安を抱え、前回覇者としてのプレッシャーもかかるなか、見事に連覇。最終試技で6m29をマークし、大会記録も塗り替えた。

「狙っていた金メダルをしっかり獲ることができて嬉しいです。次の目標は2つ。人生で一度は世界新記録を出したいし、4年に一度のパラリンピックで金メダルを獲りたい。リオ・パラリンピックにむけて、また頑張ります」

100_01走り幅跳びで2連覇を達成した山本篤。「いつも応援してくれる両親に、『ありがとう』と伝えたい」=写真提供: パラスポ!

・中川大輔 (T20/三菱自動車工業): 5000m 金メダル 15分39秒43

スタートから、先頭をいくアメリカ選手にぴたりとつけ、3000m過ぎに一気のスパートで抜き去ると、力強い走りでさらに差を広げた。ゴールの瞬間は右手を天に突き上げた。

「残り2000mで前に出ようと狙っていて、ここがチャンスだと思いました。苦しかったけど、我慢しました」

100_025000mを制した中川大輔選手。「アメリカ選手をマークしようと最初から決めていた。落ち着いて走れた」と笑顔=写真提供: パラスポ!

・佐藤友祈 (T52/岡山県身体障害者陸上競技連): 400m 金メダル 60秒91/1500m銅メダル 3分49秒79

左手にも障害があり、スタートでは出遅れ気味になるが、中盤以降の加速には定評がある佐藤。両レースとも、後方から追い上げ、メダルを手にした。

「初めての国際大会でメダルを獲得で来てよかった。(400m決勝は)強い選手が多く、神経を使ったが、こういう結果(金メダル獲得)に終わって嬉しい」

100_03初の国際舞台で、金と銀の2つのメダルを手にした佐藤友祈選手。「リオ・パラリンピックでも表彰台に上り、できればいい色のメダルがほしいです=写真提供: パラスポ!」

・上与那原寛和 (T52/ネクスト): 400m 銀メダル 63秒58/1500m 銀メダル 3分49秒62

現在、44歳。ベテランならでは落ち着いたレース運びで、2つの銀メダルを獲得。「佐藤友祈選手と二人の『日本チーム』としてメダルが獲れて嬉しい。若い(26歳)佐藤選手の金メダルは素晴らしい。負けないように、自分もまだがんばります」

・和田伸也 (T11/JBMA) : 5000m  銅メダル 16分31秒04

まだ蒸し暑さの残る夕方で、「サバイバルレース」を想定した戦略が光った。序盤から中盤は後方でじっくりマイペースを刻み、終盤、ライバルが失速するなか、着実に順位をあげ、メダルを手にした。「格上の選手ばかりのなか、3番に入れてよかったです。3000m以降n前を追いあげる作戦でした」。ドーハ入り後、体調を崩していたという中田崇志ガイドも、「スタートから二人の息もぴったり合っていた。(想定)通りの走りで、最後に逆転できました」

・木山由加選手 (T52/エイベックス G.H): 100m 銅メダル 25分37)

体幹の機能がないなど車いすクラスのなかでも障害が重いほうに位置するT52クラス。女子は特に少なく、このレースの出場は4選手で、パラリンピックでの競技成立が危ぶまれている。

「メダルは嬉しいが、タイムが出なくて悔しいです。(障害の重い)T52は世界的にも競技人口が少ないので、もっと多くの方に挑戦してほしいです」

日本代表 安田亨平監督の総括

目標(8~10個)達成となる、9個のメダル獲得は選手とスタッフが一丸となった結果。50選手を超える過去最多の選手団だったが、若手からベテランまで、それぞれがほぼ持てる力を発揮してくれた。メダルに関しては、期待していた選手の取りこぼしもあったが、その分若い選手の台頭もあり、結果として目標達成となり、選手層のすそ野の広がりが感じられた。今大会の結果や内容を分析し、来年のリオ・パラリンピックに向けて、さらなる強化を図っていきたい。

100_04400mT52決勝で、佐藤選手(26)が金メダルを決めたゴール。左には、銀メダルの上与那原選手(44)の姿も。若手とベテランがそれぞれ力を発揮した日本選手団の象徴的シーン==写真提供: パラスポ!

*詳細な記録や選手コメントなどは、日本パラ陸上競技連盟公式サイトに掲載あり。

【リンク先: http://jaafd.org/

■ウィルチェ(車いす)ラグビー

11月1日: 千葉ポートアリーナ(千葉市)で開催されていた、リオデジャネイロ・パラリンピック予選を兼ねたアジア・オセアニア選手権の最終日。決勝戦で、予選リーグ2位となり、前日にパラリンピック出場を決めた日本は、同1位のオーストラリアを56-51で破り、初優勝を果たした。オーストラリアは2012年ロンドン・パラリンピックの金メダリダルチームで、昨年の世界選手権にも優勝し、現在世界ランキング1位の強豪。日本はこの勝利で、世界らキングも4位から3位に上昇。4大会連続のパラリンピックとなるリオでの初のメダル獲得にも弾みをつけた。

(取材・文: 星野恭子/写真提供:パラスポ!)