「星野恭子のパラスポーツ・ピックアップ」(99) 10.22~10.25
今号では、22日よりカタール・ドーハで開催中の陸上競技世界選手権の現地リポートを中心にお送りします。大会4日目を終え、過去最多の日本代表団は厳しい戦いが続いていますが、大会では世界新記録も続々更新され、世界のレベルがどんどん上がっていることを感じさせられます。ライブ配信も行われています。どうぞ、応援ください!
■陸上競技
・22日: 90を超える国と地域から約1300選手が参加して、「2015IPC陸上競技世界選手権」がカタール・ドーハで開幕した。日本からは過去最多のとなる57選手(身体障害クラス45人、知的障害クラス12人)がエントリーしている。大会は31日まで開催される。初日には、走り幅跳女子T44(片下腿切断など)で高桑早生(エイベックスG.H)が自己記録を13cm更新する5m9cmの自己新記録で銅メダルを獲得、日本選手団に今大会初のメダルをもたらした。高桑は、「自分の持ち味は(助走の)スピードだけなので、そこを全面に生かしてしっかり集中して競技ができ、その結果、メダルが獲得できてよかった」と語った。
銅メダルを獲得した高桑早生。「初日でないと『日本人メダル獲得第1号』にはなれない。貴重な体験」と笑顔。=写真提供: パラスポ!】 同じく走り幅跳T42(大腿切断など)では、大西瞳が3m21ccmを跳び、自身のもつ日本記録を2cm更新した。「最近、調子があがっていたので、(新記録が)出るかなと思っていたが、出せてよかった」と話した。 ・23日: 2015IPC世界選手権2日目。800m男子T38(脳性まひ・立位)で井草貴文(AC.KITA)が2分12秒78をマークし、日本記録を更新した。しかし、予選通過はならなかった。「日本記録を更新できたが、世界のレベルは高いと感じた。リオ出場と東京でのメダルが目標なので、スピードとスタミナをつけて頑張りたい」この日、大きな注目を集めたのは、走り幅跳び男子T44で、パラリンピック金メダリストのマルクス・レーム(ドイツ)が自身の記録を11cm更新する世界新記録で金メダルに輝いた。レームは2014年のドイツ選手権で8m24cmを跳び、健常者をおさえて優勝。今年は8m29cmまで記録を伸ばしており、どこまで記録を伸ばすか注目を集めていた。ちなみに、現在の健常者の日本記録は8m25cm、12年ロンドン五輪優勝記録は8m31cm。
「(世界新のジャンプは)助走も踏切も、空中姿勢のバランスもよく、手応えがあった。最高の体調と気象条件に加え、試合を楽しめたことが記録を出せた理由。今後は、リオ・パラリンピックでもいいジャンプができるよう、もっとハードに練習したい」また、オリンピック出場の可能性も話題となっているが、パラリンピアンがオリンピックに出場することについてレームは、「大きなチャンス。オリンピアンとパラリンピアンがもっと近づくことを望んでいるし、パラリンピアンが素晴らしいアスリートであり、素晴らしい実績を残していることを多くの人に知ってもらいたいから」と話した。
・24日: 世界選手権3日目。日本勢は厳しい戦いが続く。走り幅跳び男子知的障害クラスで松本哲昇(ACたまがわ)が、6m60cmで日本新記録を更新して、8位入賞を果たした。「今日はアップの時から体が動けていたので、記録は出るかなとは思っていた。もう少し助走のスピードをあげ、最後の3歩を練習し、もっと高くジャンプできれば、記録ももう少し伸びると思う」と手応えを話した。メダル獲得はなかった。
1500m男子T54(車いす)では、メダル獲得も期待された選手団主将の樋口政幸(プーマジャパン)が7位入賞に終わった。「スタートから速く、ペースの上げ下げに対応しきれず、いいポジションもなかなか取れず、正直、何もさせてもらえなかった」と悔しそうに振り返った。・25日: 世界選手権4日目。100m男子T42(大腿切断など)決勝が行われ、予選でアジアタイ記録(12秒61)を出し、メダル獲得が期待された山本篤(スズキ浜松AC)は12秒74で5位に終わった。「悔しい。スタートは良かったが、課題の中盤から後半のトップスピードが足りなかった。体調は良いので、明日(26日)の走り幅跳びは金メダルを取りたい」と奮起を誓った。山本は前大会(13年/フランス・リヨン)の走り幅跳びで金メダルを獲得しており、大会連覇を狙っている。
<2015IPC陸上競技世界選手権大会>
【期間】 10月22日(木)~10月31日(土)
【会場】 カタール・ドーハ
【メイン会場】 スハイム ビン ハマド スタジアム (Suhaim Bin Hamad Stadium)
【ライブ配信】 www.doha2015.org
午前の部:9:30~(日本時間15:30~) 午後の部:16:00~(同22:00~)
■パラサイクリング
・24日: 「2015ツール・ド・フランスさいたまクリテリウム」が埼玉県さいたま市内にて開催され、パラサイクリングの部タイムトライアル(3.1km)で、C3男子ロード世界王者の藤田征樹が4分20秒57で優勝した。■ブラインドサッカー
・25日: 東日本リーグ第3節がMIFA Football Park (東京都江東区)で開かれ、全盲クラス3試合、弱視クラス1試合が行われた。試合結果は下記の通り。
なお、第4節は11月18日、埼玉県内での開催が予定されている。【全盲クラス】
1) △ Avanzareつくば 0 対 0 たまハッサーズ △
2) ○ 松戸・乃木坂ユナイテッド 5 対 0 buen cambio yokohama ●
3) ○ Avanzareつくば 4 対 2 GLAUBEN FREUND TOKYO ●
【弱視クラス】
C.SFIDAつくば 0 対 2 Grande TOKYO ○
(取材・文: 星野恭子/写真提供:パラスポ!)