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パラスポ・ピックアップ・トピック (10) パワーとテクニックにあふれたパラサイクリング。 気軽に体感できるイベントが日本に! (星野恭子)

2020年東京パラリンピックの開催が決まって以降、障がい者スポーツへの注目も少しずつ高まってきています。実は、今月10月はおすすめの大会(*)が目白押しなのですが、今回は自転車競技の、パラサイクリング大会をご紹介します。

パラサイクリングとは、国際自転車競技連合(UCI)が管轄し、その競技規則に則って行われる自転車競技で、選手は障害の内容と使用する機材(自転車)によって4クラスに分けられ、さらに障害の程度によって細かく分類されて競技します。詳しくは、日本自転車競技連盟の公式サイトを参照いただきたいのですが、4クラスとは、Cクラス(通常の二輪自転車)、Tクラス(三輪自転車)、Bクラス(二人乗り用タンデム自転車)、Hクラス(ハンドバイク)の4つで、それぞれクラス内で選手の障害の重いほうから、C1、C2・・・などと数字で分類されています。

このように使用機材が異なる以外は、一般の自転車レースとほぼ同様のルールや方式で競技が行われます。トラック種目でもロード種目でもスピード感や迫力が楽しめるのはもちろん、三輪自転車やハンドバイク、タンデム車などは車体幅や長さなどが通常の自転車とは異なる分、それぞれテクニックが必要で、そこにもまた、パラサイクリングの見どころがあるのです。

迫力のパラサイクリングが、さいたま新都心で!

そんなパラサイクリングを間近に観て感じるチャンスが、今月はなんと2回もあります。まずは、24日(日)にさいたま市で行われる自転車ロードレース「2015ツール・ド・フランスさいたまクリテリウム」です。クリテリウムとは、市街地などに距離の短い周回コースを設定し、何周もする形式のロードレースで、「さいたまクリテリウム」のコースは、同市のさいたま新都心駅前の高層ビル群の一角に設定されています。

この大会は世界最高峰のロードレース「ツール・ド・フランス」の名を冠した、世界のトップライダーが参加する大会で、2013年からさいたま市でも開催されているのですが、3年連続3回目となる今年は、初めて「パラサイクリング」の部も実施されることになりました。
97_01【写真:「2015ツール・ド・フランスさいたまクリテリウム」の記者会見より。左端が、個人タイムトライアル・パラサイクリングの部に出場する藤田征樹選手】

パラサイクリングの部が行われるのは、今大会から新設される個人タイムトライアル(3.1km)レースで、国内外から各クラスの世界トップクラス選手7組8選手の出場が予定されています。

9月24日に行われた記者発表会では、C3クラスの藤田征樹選手(両下腿義足)が代表して会見し、「昨年はテレビ観戦していたこのような素晴らしい大会に、今年はパラサイクリングの代表として参加できることに興奮しています。レースには4つのクラスからそれぞれ王者が出場します。コーナーワークなど世界王者の高いテクニックを見てほしいです」と抱負を語りました。

藤田選手も今年8月に行われた、ロード世界選手権で金メダルを獲得した世界王者ですが、その彼が話した通り、4クラスいずれも優勝経験のあるトップ選手(下記リスト参照)が出場するので、パラサイクリングの世界を体感するにはぴったりの大会です。例えば、Bクラスの鹿沼由理恵選手は2014年ロード世界選手権の金メダリスト。同選手権をともに制した田中まいパイロット(日本競輪選手会)と、今大会もペアを組み、息の合った走りを見せてくれるはずです。

会場もJRのさいたま新都心駅目の前とアクセスも便利で、パラサイクリングのレースに加え、一般のレースもあり、世界クラスの選手70名による高いパフォーマンスが楽しめるでしょう。周辺では試乗会や飲食ブースなども開かれるそうなので、ぜひ気軽にパラサイクリングの世界を、そしてトップクラスの走りを体感していただけたらと思います。

国内初の、パラサイクリングの国際大会!

もう一つおすすめしたいパラサイクリングの大会は、「さいたまクリテリウム」の1週間後に開催される、「ジャパンパラサイクリングカップ2015」です。10月30日~11月1日の3日間、静岡県伊豆市の日本サイクルスポーツセンターを会場に行われる、UCI公認の国際公式戦で、2015年としては世界で唯一トラックレースとロードレースが同時開催されます。日本チームを含む8カ国以上、約40選手が、世界ランキングのポイント獲得を目指し、熱戦を繰り広げます。

「さいたまクリテリウム」に出場する選手は全員、こちらのカップ戦にも出場予定ですが、他にも2008年北京パラリンピック金メダリストの石井雅史選手(C4クラス/高次脳機能障害)や、2014年世界選手権入賞の藤井美穂選手(C2/片足切断義足なし)などもエントリーしています。

障がい者スポーツでは、世界レベルのパフォーマンスを間近に観るチャンスはまだ少ないのが現状です。「さいたまクリテリウム」も「ジャパンカップ」も本当に貴重なチャンス。こうした生観戦の経験が、2020年東京パラリンピックを盛り上げ、楽しむことに、きっとつながっていくと思います。

<ツール・ド・フランスさいたまクリテリウム>

・10月24日(日) 10時~17時/さいたま新都心駅周辺

・公式サイト: http://saitama-criterium.jp/

・パラサイクリング出場選手
・Cクラス(自転車)
藤田征樹 (C3)/オウン・クリフォード(C3/アイルランド)/コリン・リンチ(C2/アイルランド)
・Tクラス(三輪自転車)
ハンス・ピーター・ダスト(T2/ドイツ)
・Hクラス(ハンドバイク)
ヴィコ・メルクレイン(H4/ドイツ)
・Bクラス(タンデム)
鹿沼由理恵・田中まいパイロット
*1名調整中(後日発表)
<ジャパン パラサイクリング カップ2015>

・10月30日(金)~11月1日/日本サイクルスポーツセンター、伊豆ベロドローム

・世界8カ国40選手以上

・主催: 日本パラサイクリング連盟: http://www.jpcfweb.com/

<10月に日本で開催される主なパラスポーツ国際戦>

・三菱電機2015IWBFアジアオセアニアチャンピオンシップ千葉

http://iwbf-aoz-chiba.com/index.html

リオデジャネイロ・パラリンピック切符をかけた地区予選を掛けた真剣勝負!

・三菱商事2015IWRFアジア・オセアニア チャンピオンシップ

http://www.wrtj.jp/?cn=100049

こちらもリオ・パラリンピックの出場権が掛かった「負けられない」戦いです。

(文・写真:星野恭子)