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東アジアカップレポート③「オリンピックとワールドカップへの道」(大住良之)

中国の武漢で行われていた男女の東アジアカップ。女子なでしこジャパンは最終戦で中国に2-0の勝利を収め、1勝2敗で3位だった。優勝は北朝鮮(3勝)である。そして男子日本代表は、最終戦も勝てず、中国と1-1で引き分けて2分け1敗、4チーム中最下位に終わった。こちらの優勝は韓国(1勝2分け)だった。

今回は、日本の話に限定せず、東アジア、といっても今年の大会に出場した中国、日本韓国、北朝鮮の4カ国のサッカー全般について考えてみたい。女子は来年のリオデジャネイロ・オリンピックに向けての直接のライバルであり、男子もワールドカップのアジア最終予選で当たる可能性が十分ある。

女子サッカーでは、東アジアは世界的な強豪地域に当たる。

日本が2011年ワールドカップで優勝し、2012のオリンピックと2015年ワールドカップで準優勝。中国は1999年ワールドカップで準優勝し、95年大会は4位だった。そして北朝鮮は過去2回ベスト8の実績がある。

ここに韓国が過去数年で急成長し、ことしのカナダ大会でも、東アジア勢は日本の準優勝を筆頭に、中国がベスト8、韓国がベスト16と奮闘した。北朝鮮は2011年大会でドーピング検査陽性の選手が出たためことしの大会には出場できなかったが、出場していればベスト8の力は十分あっただろう。

今回、なでしこジャパンはワールドカップの主力選手をすべて外し、プレー機会の少なかった選手6人に若手を加えたメンバーで臨んだ。しかし中国も韓国もほぼワールドカップ・チームと同じだった。

経験のある選手が交代しながら出場し、若手が中心になったチームで戦ったなでしこジャパンは、総じて非常によくプレーした。ワールドカップ・クラスの相手にひるまず、韓国や中国の大型選手にも果敢に挑んだ。

若手のなかでは、非常に落ち着いたプレーを見せたGK山下杏也加(日テレ=19歳)、これまで攻撃専門だったのが今回は右サイドバックとして起用され、大きな可能性を示したDF京川舞(INAC神戸、21歳)、上背はないがヘディングが強く、攻撃への展開に確実さを見せたDF村松智子(日テレ、20歳)、豊富な活動量でチームを牽引したMF杉田亜未(伊賀、23歳)、最前線で高い技術を見せたFW田中美南(日テレ、21歳)が目立った。

またワールドカップ出場のMF川村優理(仙台、26歳)は、キャプテンとして試合ごとに成長し、豊富な運動量とスケールの大きなプレー、何よりもチームを背負う責任感を示して、これからのなでしこジャパンの中心選手になれることを証明した。

7月のワールドカップ・カナダ大会に出場した主力は、はっきり言って限界が見えており、これ以上の成長は難しいように思う。思いきってこれらの選手を中核に据えてリオ五輪を目指してもいいように感じた。

他の3チームのなかで私が最も気に入ったのは韓国だった。全員が高い技術と戦術能力をもち、粘り強くしっかりとした攻撃を組み立てる。ワールドカップメンバーではなかったMF李珉娥がトップ下として豊富な運動量と才能を示し、日本にとっては最も難しい相手に見えた。中国と北朝鮮は体力任せのようなサッカーで、小柄ながらもそうした当たりにはひるまない姿勢を身につけた今回のなでしこジャパンにとっては、より戦いやすい相手だった。

来年のリオ五輪のアジア最終予選は、来年3月に日本で開催される予定だが、アジアからの出場枠はわずか2。東アジア4カ国にオーストラリア(ワールドカップベスト8)が加わり、世界で最も熾烈な戦いとなる。その戦いに向けて、何人かの新戦力を確認できた今大会は、佐々木監督にとって有意義な大会だっただろう。

一方、来年スタートするワールドカップのアジア最終予選をにらんで男子を比較するのは少し難しい。日本と韓国は主力がヨーロッパでプレーしており、今回は彼ら抜きで戦わなければならなかったからだ。

一方、中国と北朝鮮はフル代表。日本には2-1で逆転勝ちした北朝鮮だが、今回参加した4チームのなかでは最も力が落ちるように思えた。ただ、最後まであきらめずに奮闘する姿は素晴らしかった。

中国は近年クラブチームが豊富な資金力をもち、待遇が良くなったため、苦労をしてまでヨーロッパに挑戦しようという選手がいなくなった。だがそれは同時に、ナショナルチームに対するモチベーションの低下にもつながっているようだ。今回も何人もの選手が出場を辞退したという。そうした状況が、そのまま試合に出て、ホームチームでありながら「2軍」の韓国に敗れ、2位だった。

優勝した韓国は力があった。ベテランのGK金承奎、DF金英権、MF張賢秀らが守備を固め、FW李庭協をはじめとした攻撃陣がめまぐるしくポジションを替えて攻め込んだ。ただ3試合とも完全に主導権を握りながら決定的なチャンスの数は意外に少なく、「前線のオーガナイザー」不在は否めなかった。

日本はJリーグの選手のみでの参加。ハリルホジッチ監督が嘆いたように初戦はコンディションが悪く、良いスタートを切りながら北朝鮮に逆転負け。第2戦はとくに前半守備的に戦い、なんとか韓国と引き分けた。そして中国との最終戦は、立ち上がりこそ中国のパワーに受け身になり、先制点を許したが、徐々に盛り返し、前半のうちに同点とすると、後半は完全に主導権を握った。しかしFWの人材不足は覆いがたく、この試合も1-1で引き分けた。

「若手のテスト」の意味合いもあったこの大会。とくに目立ったのは最初の2試合は右サイドバックでプレーし、最終戦はボランチを務めた遠藤航(湘南)だ。リオ五輪を目指すU-22日本代表のキャプテンだが、ワールドカップ予選の最中にもレギュラーポジションをつかむかもしれない。

もうひとり、出場した北朝鮮戦と中国戦で1点ずつ取った攻撃的MFの武藤雄樹(浦和)も、得点力と前線でのオーガナイズ役として注目された。26歳だが、これまで「代表」と名のつくものには縁がなかった。しかし今季仙台から浦和に移籍して大ブレーク。縦への意識を強調するハリルホジッチ監督のサッカーに、香川真司(ドルトムント)や本田圭佑(ACミラン)以上に適した人材として注目される。

ただ、こうした「発見」の一方で、永井謙佑(名古屋)、川又堅碁(名古屋)、宇佐美貴史(G大阪)といったFW陣はハリルホジッチ監督を失望させてしまった。この大会に「得点力のあるFWを探す」という目的をもって臨んだハリルホジッチ監督だけに、満足にボールも止められず(川又)、コンビネーションプレーもできず(永井)、戦う姿勢の感じられなかった(宇佐美)選手たちに暗澹たる気持ちだっただろう。

日本代表も、いつまでも香川、本田、そして岡﨑慎二(レスター)といった選手たちに頼っていることはできない。この東アジアカップを戦った攻撃陣は、危機感をもたなければならない。

文:大住良之(サッカージャーナリスト)