「星野恭子のパラスポーツ・ピックアップ」(92) 7.26~8.2
国内外のパラリンピック競技の話題を独自にセレクトした「パラスポーツ・ピックアップ」シリーズ。今号は、3競技の国際大会をリポート。パラサイクリング世界選手権での藤田征樹選手の金メダル獲得をはじめ、陸上競技グランプリ・ファイナルで複数のメダル獲得など、日本選手活躍のニュースが届いています。
■パラサイクリング
・8月1日: 世界46カ国から約300選手が参加し、スイス・ノットウィルで7月30日に開幕した、「2015UCIパラサイクリングロード世界選手権」で、56kmロードレースC3クラス(機能障害)に出場した藤田征樹(日立建機株式会社)が2位に1分以上の大差をつけて優勝した。レースは1周7kmを8周するコースで行われ、残り2周で藤田が絶妙なタイミングでのスパートから逃げ切り、世界の頂点に立った。
レース中の藤田征樹選手/(トップ): 世界選手権王者に与えられる、アルカンシエル(虹)のジャージに袖を通し、表彰台の中央に立つ藤田選手(情報・写真提供: 日本パラサイクリング連盟)
■陸上競技
・26日: IPC(国際パラリンピック委員会)陸上競技グランプリシリーズの最終戦、「2015IPCグランプリ・ファイナル」がロンドンのオリンピック・スタジアムで開催された。日本人選手は男子走幅跳T42&44クラス(大腿切断、下腿切断コンバインド)で山本篤が6m11をマークして銀メダルを獲得したほか、4個の銅メダルを獲得した。メダリストの詳細は下記の通り
<日本人メダリスト>
・男子100m T47クラス(上肢切断など): 多川知希 銅メダル 11秒38
・男子200m T42(片大腿切断など): 山本篤 銅メダル 26秒61
・男子1500m T54(車いす): 樋口政幸 銅メダル 3分4秒47
・男子走幅跳 T42&44: 山本篤 銀メダル 6m11
・女子走幅跳 T42&44: 高桑早生 銅メダル 4m58
▼大会結果詳細
IPC陸上競技グランプリシリーズは2013年から始められたシリーズで、3年目の今年はファイナルを含め、全10大会が行われた。シリーズ史上初めてオセアニア地区のオーストラリアで開催されたことで、今年は全5大陸での開催が初めて実現した。
■ゴールボール
・7月31日~8月2日: ゴールボール女子日本代表の強化を目的とした国際大会「2015ジャパンパラ・ゴールボール競技大会」が東京・足立区で開催された。昨年につづいて2回目の今年は、世界選手権2位のロシア、同3位のトルコ、そしてアジアのライバル、韓国が参加。2日間の予選ラウンドを経て、最終日に行われた順位決定戦では、予選3位の日本代表が3位決定戦に臨んだが、韓国に0-1で敗れ、メダル獲得を逃した。決勝戦では、トルコが逆転でロシアに4-3で勝利し、金メダルを獲得した。前方左から、韓国、日本(左から、若杉遥選手、欠端瑛子選手、安室早姫選手、天摩由貴選手、浦田理恵キャプテン)、後方左から、トルコ、ロシア=2015年8月2日/足立区総合スポーツセンター
ロンドン・パラリンピック金メダルの日本は、今大会はベテラン2選手をケガなどで欠き、若手主体の布陣で戦った。1勝1分3敗で迎えた予選最終戦で、それまで全勝のロシアから勝ち星を奪うなど健闘したが、3位決定戦では前半、韓国に先制され、後半は予選で全9得点を挙げた若杉遥を中心に懸命に反撃するも、韓国の堅い守備をこじ開けることはできず、無得点に終わった。日本の天摩選手(上段左)が投げたボールを、体を投げ出して止める韓国チーム=同
若杉は、「(得点を)入れたいと思う気持ちばかりが先行して焦りを生んでしまい、落ち着いて狙いにいけないことがあり、なかなか得点に結びつかなかった。(今大会を通して)ベテランの力に頼っている自分がいることを感じたが、頼ってばかりではいけないし、私自身は常に、ベテラン選手を一日も早く追い抜かしてプレイすることを意識しているので、今大会はそこにつなげられる大会になったと思う」と前を向いた。
11月には来年のリオデジャネイロ・パラリンピックの最終予選となる、「アジア・パシフィックゴールボール選手権」(中国)が控える。市川喬一ヘッドコーチは、「若手選手が、(勝つか負けるか)瀬戸際の戦いを経験できたことはよかった。(今後)ベテラン選手がケガから復帰し、若手とベテランが融合したときのチームは強くなると思う。今大会の結果を検証してチームを立て直し、リオ・パラリンピック出場権を獲得できるよう最大限の努力をしたい」と巻き返しを誓った。
(文・写真: 星野恭子)