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本領発揮~やれば出来る(平野誠樹)

第16回電動車椅子サッカー中部・関東ブロック代表戦が7月11日(土)に羽村市スポーツセンターにて開催された。朝から夏の暴力的な暑さを感じて目を覚ました。冷房設備が使用出来ない会場なので、第一関門として選手は暑さとの戦いを乗りきらなければならない。特に遠方から大会に参加した中部ブロック代表の選手にとって過酷な1日となったはずである。

 

 

交流戦に臨む選手達

写真:交流戦に臨む選手達

 

 

まず最初に交流戦が1試合行なわれた。その後に公式戦が2試合実施され、2試合合計の勝ち点(勝ち3点、引き分け1点、負け0点)で勝敗を決する大会規定となっている。

 

 

相手と競り合う紺野選手(真ん中)

写真:相手と競り合う紺野選手(真ん中)

 

 

今年度はここ最近継続して開催されていた日本最高峰の大会に位置付けられていた、国際規則と同様の10キロ(国内競技規則は6キロ)で実施される電動車椅子サッカーブロック選抜大会が、日本電動車椅子サッカー協会の資金不足が原因で中止に追い込まれた。

 

そのためこの中部・関東代表戦が各ブロックで争われる、今年度最後の大会となることを意味する。特にワールドカップに出場することを目指す選手にとっては貴重な10キロでの真剣勝負の場となった。

 

今回は、前回の記事で取り上げた関東代表Aチームに着目して2階から試合を観戦した。

 

 

吉沢選手(左)と松浦選手(右)

写真:吉沢選手(左)と松浦選手(右)

 

このチームの4人は全員国際舞台の経験がある日本代表クラスのメンバーで構成されている。 特に北沢・吉沢両名は2007年に東京で開催された第1回ワールドカップと、2011年にフランスで開催された第2回のワールドカップに連続して出場しているトップアスリートで、電動車椅子サッカー界でその名を知らぬ者はいない。

 

私は北沢選手を彼が17歳の時から知っているが、その当時からサッカーセンスが抜群でテクニックもあり、今まで見たこともないような観るものを魅了するプレーを幾度となく目の当たりにしてきた。一番のセールスポイントは、緩急をつけた柔らかいクレバーなプレースタイルである。通常のサッカーで言えば香川と遠藤選手を足して2で割ったような、まさに電動車椅子サッカーの申し子といったイメージが強い。

 

 

ボールの行方を追う北沢選手

写真:ボールの行方を追う北沢選手

 

交流戦を関東代表が若手中心のメンバーで臨み、完勝した。その良い流れのまま北沢選手率いる関東代表Aチームが公式戦第1試合を迎えた。今大会は残念ながら中部代表のエース、飯島洸洋選手が体調不良で不参加となってしまい、関東代表が総合力で上回る優位な状況であった。

 

戦前の予想通り関東代表がボールをキープして押し上げる展開になり、開始早々に左サイドの北沢選手が折り返したマイナスのパスをセンターの三上選手がゴールに叩き込み先制点を奪う。その後すぐにキーパー兼リベロの吉沢選手が不用意に蹴ったゴールキックを、カウンターで蹴り返され意外な展開で中部代表が追いついた。しかしながら、経験、技術共に勝る関東代表がゴール前のセットプレーで、北沢選手の正確なパスを受けた竹田選手がゴールを決め勝ち越す。そして3点目は関東代表らしい戦術から生まれた追加点だった。全員が全ポジションをこなせる関東代表は状況によってポジションチェンジを行い、ゲームを組み立てる。瞬間的に三上選手のセンターのポジションに北沢選手が入り、フリーになり豪快にミドルシュートを蹴り込んで3対1で前半を終える。後半はさらに竹田選手のこの試合2得点目となる追加点。そして三上選手のゴールも生まれ、5対1で快勝した。

 

前回の関東代表の練習を取材した時の記事では、私が監督を務める横浜クラッカーズに在籍する三上・竹田両選手を酷評した。それで奮起したのかは定かではないが、本番の大会ではあたかも別人のようなキレのあるプレー内容であった。練習での課題を短期間で修正して試合で力を発揮できる柔軟性は高い評価に値する。もちろん北沢・吉沢両選手の常にぶれることのないプレーでチームとしての土台がしっかりと確立されているからこそ、周りの選手が自由に動き回ることができるのだ。特に北沢選手の安定感はレベルの高い関東の中でも群を抜いている。

 

公式戦第2試合は、日本代表での経験もある永岡選手が率いる関東代表Bチームが中部代表と対戦。Aチームと比べると戦力の差は歴然だが、永岡選手がチームの中枢として精一杯のプレーを披露した。2対1で迎えた後半終了間際に、セットプレーから失点して2対2の引き分けで試合は終了。

 

 

ボールを保持する永岡選手

写真:ボールを保持する永岡選手

 

関東ブロック代表が2試合合計の勝ち点で4対1で中部ブロック代表を上回り、優勝という形で大会の幕は閉じた。

 

眞島関東ブロック代表監督の2年間の集大成であった今大会。例年であれば最終目標のブロック選抜大会の優勝に向けて活動していくのだが、今年度に関してはここで終了。関東代表の4連覇に向けて始動した2015年。それだけに不完全燃焼の感は否めないが、日本代表のアシスタントコーチでもある眞島監督の下で、選手達はかけがえのない経験という財産を手にしたはずだ。youtubeでの練習や試合の映像配信、スポンサーからのユニフォーム提供など、関東代表の競技普及の活動は電動車椅子サッカー界に革命を起こした。眞島監督の功績は賞賛に値する。その意思を選手やスタッフ、電動車椅子サッカー関係者は忘れることなく、受け継いでいく必要がある。継続する事の難しさとその価値を明確に示した関東ブロック代表監督の眞島監督の挑戦の日々は終わらない。

 

 

優勝して歓喜の雄叫びを上げる眞島監督

写真:優勝して歓喜の雄叫びを上げる眞島監督

 

 

◆試合結果

 

交流戦 : 5(関東)対0(中部)

 

公式戦第1試合 :5(関東)対1(中部)

 

公式戦第2試合 :2(関東)対2(中部)

 

関東ブロック代表 勝ち点4

中部ブロック代表 勝ち点1

 

関東ブロック代表 優勝