「星野恭子のパラスポーツ・ピックアップ」(91) 7.13~7.19
国内外のパラリンピック競技の話題を独自にセレクトした「パラスポーツ・ピックアップ」シリーズ。今号は、台風一過の大阪で好記録が続々誕生したパラ陸上の日本選手権の大会リポートを中心に、競泳の世界選手権の結果速報、車いすバスケットボールの大会結果などをお届けします。
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■陸上競技
・18日: IPC(国際パラリンピック委員会)公認の「第26回日本パラ陸上競技選手権大会」が大阪市のヤンマースタジアム長居で開幕した。台風一過の晴天と蒸し暑さのなか、アジア新記録2個、日本新記録21個など好記録に沸いた。
【写真: 男子4x100mリレーT42-47クラスで日本新記録44秒33をマークしたJapanAチーム。左から多川知希選手(1走/T47)、佐藤圭太選手(2走/T44)、鈴木徹選手(3走/T44)、芦田創選手(4走/T47)】
男子T42クラス(大腿切断など)の山本篤(スズキ浜松AC)が1人で2つのアジア記録を塗り替えた。200mで26秒00、走り幅跳びで6m36をマークし、ともに自身のもつアジア記録、日本記録を更新し、優勝した。
山本: 「今日は調子もよく風向きもよく、(先に競技があった)幅跳びでもベストを出していたので、200mもベストを出したいと思っていた。200mは今年、スランプかと思っていましたが、よかった。来週(7月26日)の試合(2015IPC陸上競技グランプリ・ファイナル/イギリス)でも200mと走り幅跳びに出場するので、がんばりたい。最終目標はリオ(パラリンピック)での金メダル。少しずつ上げていき、ピークを合わせたい」
【写真 : 200m走でアジア新記録を樹立した、山本篤選手の力強い走り(左)。右は日根野翔太選手(T42)】
男子4x100mリレーT42-47クラス(切断など)はJapanAチーム(多川知希、佐藤圭太、鈴木徹、芦田創)が44秒33で日本記録を更新し、優勝した。アンカーを務めた芦田創(早稲田大学)は、「44秒7くらいと思っていたが、実際は44秒前半。チームとしてまとまって走れたのかなと思う。ただ、バトンは流れてはいたが、詰まったところもあったので、43秒前半くらいを目標にして世界選手権ではしっかり戦いたい。個人の目標としては、1、2、3走までで接戦になったときに、(アンカーの)僕が最後に前に出られるような走力をつけたい」と話した。
・19日: 日本パラ陸上競技選手権大会2日目は競技開始から気温30度を超えるなか、熱戦がつづき、今大会3つ目のアジア新記録も誕生した。男子1500mT12(視覚障害)で堀越信司(NTT西日本)が4分04秒62をマークして、2週間前(7月5日)の関東身体障害者陸上競技選手権大会で自身がつくったアジア記録(4分08秒26)をさらに塗り替えた。前日、自己ベストから25秒近く遅れた5000mでのリベンジを期しての走りだった。
【写真: 1500m走で、あと1周の鐘の音を受け、ラストスパートする堀越信司選手】
堀越: 「なんとしても自己ベストを出すと決めて、昨日(の悔しさ)から切り替え、今日は内容のよい走りができてよかった。初めの300mから400mまでで突っ込みすぎないことを心がけた。セーブしつつ、いいペースで入り、そのままの流れで2周目を走る。3周目をしっかり粘って、ラスト300mでもう1回切り替えて、4分5秒は切りたいと思っていたので、よかった。自分の専門は5000mとマラソン。今年はまず、夏の練習で5000mの走力をつけて(ベスト更新の)結果を出し、所属チームの選手や応援してくれる方に恩返ししたい」
女子100mT13(視覚障害)では佐藤智美(東邦銀行)が13秒20の日本新記録を樹立した。佐藤も先の関東選手権大会で約5年ぶりに自身の持つ日本記録(13秒28)を1/100秒塗り替えたばかりだった。
【写真: 佐藤智美選手(中央)の100m日本新記録の力走。左は松本春菜選手(T13)、右は辻岡恵子選手(T11)と寺山典孝ガイド】
佐藤: 「(記録更新は)とても最高に気持ちがいい。関東(選手権)の後、もっと記録を縮めたいと、スタートに集中して練習してきた成果がでた。来年のリオ(パラリンピック)で決勝の舞台に立ちたいので、それまでに13秒を切るのが目標。スタートの強化がカギだと思うので、体幹を使ったブレないフォームを繰り返し練習して、体に覚えさせたい」
このほか、今大会は数々の大会新記録、日本新記録が誕生、国内での競技力向上を感じさせた。パラ陸上は今年10月、隔年開催の世界選手権がカタールのドーハで開催される。代表選手はまもなく発表される予定。
大会結果詳細: http://gold.jaic.org/jaic/para/mobile/2015/26jpn_champ/kyougi.html
■競泳
・13日~19日: 2015IPC水泳世界選手権グラスゴー大会がイギリス・グラスゴーで開催され、日本からは男子13名、女子7名の計20名が参加した。日本身体障がい者水泳連盟の速報によれば、日本は計7個(金2、銀4、銅1)のメダルを獲得、日本記録も8種目で更新した。
<日本人メダリスト>
・木村敬一(東京ガス): 金メダル=男子100m平泳ぎSB11クラス(視覚障害)
金メダル=男子100mバタフライS11
銀メダル=男子50m自由形S11(視覚障害)
銅メダル=男子200m個人メドレーSM11(視覚障害)
・田中康大: 銀メダル=男子100m平泳ぎSB14クラス(知的障害)
・山田拓朗(NTTドコモ): 銀メダル=男子50m自由形S9(運動機能障害)
・鈴木孝幸(ゴールドウィン): 銀メダル=男子50m平泳ぎSB3クラス(運動機能障害)
大会結果詳細: http://www.paralympic.org/glasgow-2015/schedule-results
■車いすバスケットボール
・18日~19日: 第24回東日本車椅子バスケットボール選手権大会が長岡市民体育館(新潟県)で開催された。12チームによるトーナメント方式で行われ、決勝でNO EXCUSE(東京)が宮城MAX(宮城)を71-52で下し、3年ぶり5度目の優勝を果たした。3位決定戦では、ワールドBBC(愛知)が埼玉ライオンズ(埼玉)に67-44で勝利した。
(文・写真: 星野恭子)