「星野恭子のパラスポーツ・ピックアップ」(90) 7.5~7.12
国内外のパラリンピック競技の話題を独自にセレクトした「パラスポーツ・ピックアップ」シリーズ。今号は、週末に行われたブラインドサッカー日本選手権の結果速報を中心に、車いすテニスのウィンブルドン大会での上地結衣選手の連覇のニュースや国際パラリンピック委員会(IPC)と日本メディアとの大型契約などを集めました。なお、ブラインドサッカー日本選手権については、後日、より詳しいリポートをお届けする予定です。どうぞお楽しみに!
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■ブラインドサッカー
・11日~12日: ブラインドサッカーのクラブチーム日本一を決める、「第14回アクサブレイブカップ ブラインドサッカー日本選手権」が東京のアミノバイタルフィールド(調布市)で開催された。今年は全国から過去最多の14チームが参加。4グループでのグループリーグから上位チームによる決勝トーナメントを経て、決勝戦でAvanzareつくば(つくば市)がPK戦の末、たまハッサーズ(八王子市など)を下し、3連覇を達成した。
【写真:3連覇が達成を喜び合う、Avanzareつくばの選手とサポーターたち】
20分ハーフで行われた決勝戦は、キックオフから両チームが果敢に得点を狙うも決めきれず、前半は無得点。スコアが動いたのは後半に入って2分、ハッサーズのエース、黒田智成が得意のドリブルからシュートを決めて先制。Avanzareは必死に反撃を試み、16分すぎに佐々木ロベルト泉がドリブルでゴール前に持ち込んだボールを田村友一がゴールに押し込んで追いついた。このあと、両チームとも追加点を狙うも、試合は1-1の同点のまま終了、PK戦へともつれこんだ。
3人制のPK戦はハッサーズの先攻で行われたが、Avanzareの2人目、川村怜がゴール左上に豪快なシュートを決めると、ハッサーズ3人目のシュートをAvanzareのキーパー、福永克己がしっかりと止め、勝敗が決した。
【写真:チームに勝利をもたらした川村怜選手のPK戦でのシュート】
▼川村怜選手コメント
PKはリラックスして力まずに打てれば決まるという自信があった。決勝戦では流れのなかで得点を決められず、まだまだ。でも、(今大会を通して6得点で)特に準決勝の大切なところで得点できたのは満足している。
▼黒田智成選手コメント
暑さのなか、厳しい戦いだったが、自分たちらしい(パスでつなぐ)いいサッカーはできた。プレッシャーのなか、必要なところでゴールを決められたのは、今後につながる経験だったと思う。
●最終順位
優勝 Avanzareつくば
準優勝 たまハッサーズ
3位 ラッキーストライカーズ福岡 (福岡市)
4位 大阪ダイバンズ (大阪市)
5位 乃木坂ナイツ (港区)
6位 buen cambio yokohama (横浜市)
7位 埼玉T.Wings (さいたま市、所沢市)
8位 新潟フェニックスファイヤーズ (新潟市)
9位 兵庫サムライスターズ (神戸市)
10位 ナマーラ北海道 (札幌市)
11位 GLAUBEN FREUND TOKYO (東京都)
11位 F.C.長野RAINBOW (坂城町)
11位 コルジャ仙台FC (仙台市)
13位 山梨キッカーズ (甲府市)
(※11位決定戦を2つ行い、1試合が引き分けたため、11位が3チームとなった)
▼各賞
最優秀選手賞: Avanzareつくば 田村友一
ベストゴールキーパー賞: Avanzareつくば 福永克己
得点王: 埼玉T.Wings 齋藤悠希 (13得点)
フェアプレー賞: 埼玉T.Wings
会場では、元Jリーガーの中西哲生氏と選手によるトークイベントやブラインドサッカー体験会、フットサル大会ほか、イベントも多数開催された。日本ブラインドサッカー協会の発表では、2日間で2、540人が来場した。
■車いすテニス
・12日: イギリスで開催中のウィンブルドンテニスで車いすの部が行われ、女子ダブルス決勝で第1位シードの上地結衣/J・ホワイリー(イギリス)組がオランダペアのJ・グリフィオエン/A・ファンクート組に6-2、5-7、6-3で勝ち、2連覇を果たした。
ウィンブルドンの車いすの部はダブルスのみの開催で、世界トップの男女各8選手が出場でき、各4組のトーナメントで競われる。上地/ホワイリー組は準決勝でL.ハント(イギリス)/K.クルーガー(ドイツ)組に6-0、6-3でストレート勝ちし、決勝に進んでいた。
男子は、国枝慎吾がフランスのS・ウデと組み、第1シードで大会に臨んだが、準決勝でG・フェルナンデス(アルゼンチン)/N・ピーファー(フランス)組に3-6、5-7のストレートで敗れ、決勝進出を逃した。
■ゴールボール
・5日: 足立区民を対象としたゴールボール体験会が足立区総合スポーツセンターで開催された。同会場は今月末に開幕する、「2015ジャパンパラゴールボール競技大会」の会場であり、大会のプロモーションも兼ねて競技の認知・普及が目的だった。
<2015ジャパンパラゴールボール競技大会>
・日程: 7月31日(金)~8月2日(日)足立区総合スポーツセンター
・会場: 足立区総合スポーツセンター(東京都足立区)
・参加国: 日本、韓国、ロシア、トルコ
・プロモーション映像: http://www.jsad.or.jp/movie/2015japan-para_goalball_pv.html
・11日~12日: 11月に開催予定の、「2015日本ゴールボール選手権大会」の男子一次予選大会が国立リハビリテーションセンター体育館(埼玉県所沢市)で開催された。出場10チームの総当たり戦で順位が競われ、上位5チームが日本選手権出場権を獲得した。残る出場枠はあと3つ。2次予選大会は、9月12日~13日に滋賀県の守山市民体育館で開催される。
▼最終順位/日本選手権出場権獲得チーム
優勝: チーム付属A/準優勝: スーパーモンキーズ/3位: Amaryllis/4位: IBK/5位: 国リハMen’s チーム雷
■ドイツ発
・9日: 国際パラリンピック委員会(IPC)は日本のWOWOWとの間で、世界で活躍するパラアスリートの姿に迫るドキュメンタリーシリーズを制作することで契約合意に至ったと発表した。契約期間は2016年から20年までの5年間で、16年リオデジャネイロ大会、18年ピョンチャン冬季大会、20年東京大会を目指すアスリートたちを取り上げる予定だという。
撮影は13日に開幕する、「IPC世界水泳選手権」大会(イギリスグラスゴー)からスタートし、番組は16年度からWOWOWで放送される予定という。
同契約について、IPCのフィリップ・クレイヴン会長は、「WOWOWとともにドキュメンタリーシリーズを制作できることをとても喜ばしく思います。アスリートはパラリンピック・ムーブメントの中心であり、彼らのパフォーマンスとストーリーはムーブメントを社会に広く浸透させるための触媒となるでしょう。20年東京大会は日本におけるパラリンピック・ムーブメントへの理解を深める大きなチャンスだと期待しています」
また、WOWOWの和崎信哉取締役会長は、「素晴らしいドキュメンタリーシリーズをIPCと協力して制作する機会をいただき、大変光栄です。“ダイバーシティ(多様性)”は未来における最も重要なキーワードのひとつだと強く信じています。このシリーズを通して、私たちは共生社会を進めるIPCの理念をさらに深め、広げられることと信じています」
この契約に先立ち、IPCは6月、NHKが18年冬季ピョンチャン大会から24年夏期大会(会場未定)までの夏、冬計4大会の独占放送権を獲得したと発表。金額、期間とも史上最高の契約内容といわれている。また、電通と、東京パラリンピックに向けたマーケティング活動を担う代理店契約を結んだことも発表している。
(文・写真: 星野恭子)