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更なる高みを目指し下剋上の幕開け(平野誠樹)

6月20日(土)18時〜21時のスケジュールで実施された、電動車椅子サッカー関東ブロック代表チームの練習の取材に行った。

会場は障害者スポーツ文化センター 横浜ラポール。

 

練習前ミーティンング

 

全国には8つのブロックが存在する。北から北海道、北陸、関東、中部、関西、中国、四国、九州。各ブロックで選抜チームを作り、国際競技規則に準じた最高速度10キロでの練習や大会が、クラブチームでの活動以外に行われている。ちなみに、国内競技規則では電動車椅子の最高速度は6キロに制限されている。よって、10キロでの活動はそのまま国際舞台へ直結していく重要な過程であり、日本代表を目指す選手にとっては選抜チームでの活動は欠くことのできない尊いものである。例年であれば、クラブ間同士の最強チームを決定する日本選手権大会をしのぐ、日本最高峰の位置付けのブロック選抜大会が夏に実施されている。

 

しかしながら、日本電動車椅子サッカー協会が会長や理事が変わるなどの大きな変革期を迎えていて、運営する資金も危機的状況に追い込まれている。その影響により2015年度はブロック選抜大会は中止に追い込まれた。これは、日本電動車椅子サッカー界にとって大変大きな損失であることは言うまでもないが、お金がなければ当然大きな大会を開催する事はできない。致し方ない苦渋の選択となったのだ。

 

幸い関東ブロックと中部ブロックは毎年、定期的に交流戦となる中部・関東ブロック代表戦を実施しており、練習の成果を発揮する場が残されている。

 

2015年7月11日(土)13:00-17:00の日程で、羽村市(東京都)スポーツセンターにて開催される。

 

関東ブロックは全国的にみてトップクラスの実力があり、2012年から昨年までブロック選抜大会において三連覇を成し遂げている。関東ブロック代表を昨年から率いているのは、電動車椅子サッカー日本代表のアシスタントコーチでもある眞島監督。彼が掲げる大きな理念はオール関東で若手の育成を図り、関東ブロック全体のレベルの底上げを実現していくことである。特に、チームの一体感を重視していて、競い合いの中にもお互いを尊重し合い、全員で一丸となって競技を普及させていきたいという強い思いが感じ取れる。

 

Cチームに激を飛ばす監督

関東ブロック代表は、ABCと3つのチームを作り高い競争意識を選手に植え付けさせ、練習しているように感じた。おそらく、Aチームがわかりやすく言えば最も実力のあるチーム構成となっていて、選手の全員が日本代表として国際試合での経験を積んだ事があるメンバーである。

 

Aチーム

写真:Aチーム(左から吉沢・竹田・三上・北沢選手)

 

Bチームの軸となる選手の中に女性初の日本代表での実績がある永岡選手がいる。想像するに眞島監督の意図はもうワンランク上のレベルの選手に成長させる為に、あえてAチームではくBチームに入れることにより永岡選手の新たな一面を開拓する事ではなかろうか。チームのリーダーとして、チームメイトとの密なコミュニケーションを図らせ、他の選手が最大限の力を発揮できるように指揮を執らせたいという想いがあるように感じた。

 

Bチーム

写真:Bチーム(左から木村・中山・永岡・石井選手)

 

Cチームには若手で将来、日本代表選手に選出されることを期待されている18歳の紺野選手を軸として構成されている。その他にも日本代表合宿に召集されたこともある女性の内橋選手など今後が楽しみな選手で構成されている。どうにかして自力で上回るハイレベルの相手に食らいついて脅かそうというハングリーな姿勢が印象的だった。

 

Cチーム

写真:Cチーム(左から菅野・紺野・黒沢・内橋選手)

 

少し物足りなかったのが、Aチームの選手達の戦いぶりだ。このチームの軸は2007年と2011年のワールドカップに日本代表として出場した北沢選手と吉沢選手である。彼らは東京都のレインボー・ソルジャーのチームメイトであり、全国的にみても屈指の2枚看板である。基礎技術も群を抜いていて他の選手とは存在感が全く違う。私の印象としてはこの2人のコンビネーションにYokohama Crackersの竹田選手と三上選手が追いつけていない。これは決して私がYokohama Crackersの監督だから自チームの選手のことを厳しく評価している訳ではない。あくまでも客観的に冷静なジャッジをしたまでである。

 

セットプレー練習

何が決定的に違うのかと言うと、やはり基礎的なキックの精度の差である。ここに欲しいというポイントにボールが蹴れていないため、意図や狙いがあっていてもその流れを無駄にしてしまうのだ。それに反して北沢・吉沢両選手は良い意味で力が抜けていて、当たり前のように練習通りに正確なキックを試合で発揮できるのだ。この差は間違いなく練習量と経験値の違いである。特に国際舞台での経験は計り知れないものがあるはずだ。

 

 

三上選手

写真:三上選手

 

竹田・三上選手には現状を明確に自己分析し、具体的にどうすれば基礎技術の精度が上がるのかを意識して危機感を持って練習に励む必要があるのではないか。彼らには高いポテンシャルがあり、時おり他の選手には真似できない光るプレーを演出することがある。それが偶発的ではなく意図を持ってコンスタントに正確に発揮出来るようになれば、彼らの見える世界は大きく変わるはずである。

 

宙に浮くボール

とにかくもったいないとしか言いようがない局面が多々あり、この日の練習に限って言えば消化不良の感が否めない。BチームとCチームとの間に決定的な違いがあるということを内容、結果ともに示して欲しかった。その辺りの気構えがAチームには不足しているように感じた。中部・関東ブロック代表戦では観るものを魅了するプレーが数多く観られることを期待したい。

 

集合写真

下記のURLから関東代表チームの活動の様子をユーチューブで配信しているサイトにアクセスできます。

 

ぜひご覧ください。

 

https://m.youtube.com/channel/UCP7oWmBVCWVxVbNUE89bq3Q