ノーボーダー・スポーツ/記事サムネイル

近代オリンピックの遺産

613fmwekc-L._SL500_

 

『近代オリンピックの遺産』

著者:アベリー・ブランデージ 

訳者:宮川毅

出版社:ベース・ボールマガジン社

価格:¥1,080

 

 

 シカゴの建設会社の社長としてオリンピックで大儲けをしたといわれる元IOC会長は、ヒトラーのナチ・オリンピックの開催に協力しても、東京オリンピックの開催決定のために多大な贈り物(賄賂?)をもらっても、まったく悪いことをしたという意識すらなく、ひたすら「アマチュアリズム」の擁護のために「努力」する。もちろん彼のアイデンティティともいうべき「アマチュアリズム」とは、もとはといえばヨーロッパ貴族が肉体労働者を排除するために生まれた差別思想なのだが、みずから貴族社会にあこがれる俗物に、そんな発想は微塵も生じない。なるほど、これが「近代」の「遺産」というものか、と裏読みすれば歴史的資料としてきわめて面白い本である。