桂吉弥の嗚呼タイガース 「内弁慶タイガース」改め「チャレンジタイガース」へ変身せよ!
2015年のプロ野球交流戦が終わった。阪神タイガースは10勝8敗、セ・リーグで唯一の勝ち越しを決めた。
今年は試合数も少なく優勝チームは決めずにリーグ対抗戦ということだったが、セ・リーグは44勝61敗3分とパ・リーグに17つも負け越してしまったのだ、なんでやろか。
「楽しそうにやってるパ、苦しそうにやってるセ」なんて言いはる野球解説者がいた。確かに6月9日からのヤフオクドームでの3連戦、12日からの京セラドーム3連戦はタイガースも苦しかった。ファンは罵声を浴びせる元気さえ残らないほどの完敗。ソフトバンク松田にサヨナラホームランを打たれた木曜日。メッセンジャーが9回完封したのに10回柴田のエラーでサヨナラ負けになった金曜日、土曜日は1対15、日曜日は1対10でパ・リーグ最下位のオリックスにまさかの3連敗で真っ暗な週末だった。
途中でテレビやラジオのスイッチを切ってしまったファンも多くいることだろう。スタンドのファンも試合途中で家路についた。私もこのコラムのタイトルをこう用意していた「終わりよろしくなければ全てよろしくなくなりまっせ!」
ところが6月16日、雨天中止で1つ残っていた日本ハムとの甲子園での試合、11対4で岩田の完投勝ち。終わり良く……なってしまった。ゴメス、マートンの両外国人は相変らず調子悪くノーヒットだったけれど。この試合で阪神タイガースは今年の交流戦、甲子園球場では8勝1敗というとんでもない勝率で終了。しかもこの1敗は9回2アウトランナー無しまでロッテを追いつめながら角中に満塁ホームランを呉昇桓が打たれたあの試合だ。あの時、あと1アウトを取っていれば2015年交流戦は甲子園球場で全勝という内弁慶っぷりである。
甲子園球場が広いから投手がホームランを気にせずに伸び伸び投げられる、いつも人工芝で守っている選手は土と天然芝のグラウンドは守りにくい、甲子園特有の浜風をタイガースの選手は攻守ともに利用している、と理由は考えようと思えばいくつか上げられるが、ハッキリは分からない。いつもスタンドを埋めてくれる満員のファンのおかげです!なんて言うてくれたらめちゃ嬉しいのだが。
そしてこの貯金を吐き出したのがアウェイ、2勝7敗。この2つをよう勝てたなあと思いません?詳しく見るとやはりメッセンジャーと藤浪で1つずつ勝利。5月29日の西武戦はメッセンジャーが二軍から上がってきての初めてのゲーム。後々には「俺を下に落としたことが間違いだったと証明出来ている」と発言する男がこの試合に燃えない訳はなく、7回無失点。後は継投で完封。
もう1つの6月10日の藤浪は昨年日本シリーズ第3戦の屈辱をはらすという気持ちがあったことだろう。7回4失点だがしつこく粘った。執念だった。この2人のように1試合にかける気持ちが強くなければ、今のタイガースは相手球場では勝てないのではないだろうか。
得点も失点もホームランも盗塁もリーグ最下位のチームが(この成績で借金2の第3位にいることがホント不思議だが、これも甲子園球場のおかげか)これから始まるセ・リーグの公式戦で勝って行く為には、チャレンジする新しい気持ちが無ければダメだ。
実際、6月4日に甲子園に私が足を運んだロッテ戦。先発岩貞投手は左腕をちぎれんばかりに振り抜いていた。今期初勝利、甲子園球場での初めての勝ち投手を目指してのピッチングはスタンドから見ていて涙が出るほどだった。彼に勝ちを付けたいとの上本選手会長のタイムリーヒットも気持ち入ってたなあ。
いま現在、レギュラーの選手がいつもどおりの力を出せれば勝てるって状況ではない。和田監督はチームにも選手にも常に新しいチャレンジを提示すべきである。
まずは右投手の時には左打者、左腕の時には右打者という形骸化している起用法をやめるべきだ。次の日の予告先発を見ただけで選手が「ああ俺明日はスタメンちゃうわ」と判断してしまう。
梅野に対しても「キャッチャーの修行してこい」と2軍に落としたものの、2軍戦では指名打者での起用ばかり、結局梅ちゃんは守備機会ほとんど無しで1軍に戻ってきた。鶴岡と藤井でキャッチャーは決まりで梅ちゃんは代打専門やらすのか。開幕には今シーズン梅野でいくって決めてたのに、チャレンジする機会を与えて欲しい。
セ・リーグは交流戦のおかげで面白くなった。6位の広島から首位巨人までわずか4.5ゲーム差。タイガースが優勝争いを続ける為には「○○投手プロ初勝利!」「○○選手初スタメンで決勝タイムリー!」「毎日変わる猫の目打線」なんて見出しがバンバン出てこなあかんで。
〈文:桂吉弥〉