松蘿玉液
著者:正岡子規
出版社:岩波書店
価格:¥432
野球に関する俳句や和歌を数多く残した子規は、新聞社「日本」に勤めていたとき(1896年/明治29年)、黎明期の日本の野球に関する記事を発表した。それをまとめた本書は、野球を知らない人々に野球というスポーツの面白さを伝えようとする野球を愛する子規の気持ちが表れている。第一高等学校(現在の東京大学教養学部)の野球チームが、在日アメリカ人チームに敗れたことを「国辱」とまで記した子規だが、贔屓チームの勝敗ばかりを重視する現代の野球ファンよりも、よほど野球という球戯そのものにある醍醐味を愛していた。そのことは彼の残した歌にも表れている。
〈春風やまりを投げたき草の原〉
〈夏草やベースボールの人遠し〉
〈うちあぐるボールは高く雲に入りて又落ち来る人の手の中に〉