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「星野恭子のパラスポーツ・ピックアップ」(86) 6.2~6.8

国内外のパラリンピック競技の話題を独自にセレクトしたシリーズ。今号は、全仏オープンテニスの車いす部門で国枝慎吾が単複制覇を達成したニュースや好記録が連発した車いす陸上の大会結果のほか、2020年東京パラリンピックに向け、パラスポーツの普及・振興を支援するセンターの新設などをリポートしています。

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■車いすテニス

王者国枝、全仏でも単複制覇! 

・3日~5日: 全仏オープン車いすテニスの部が全日程を終了、男子シングルス世界1位の国枝慎吾がシングルス、ダブルスとも優勝した。これで、1月に開催された全豪に続いての2冠達成となり、年間4大大会(グランドスラム)全種目制覇にまた一歩近づいた。残るは7月のウィンブルドン(ダブルスのみ実施)と、9月の全米オープンの2大会だ。

 

国枝は前週、トルコで行われた国別対抗戦「ワールド・チームカップ」にも出場予定だったが、競技用車いすが移動中に破損するというトラブルに見舞われ、欠場。修理のため一時帰国し、今大会にはぶっつけ本番での出場だったが、練習不足の影響など微塵も見せず、シングルスでは落としたゲームはわずかに3つだけという圧勝だった。

 

女子は、世界1位の上地結衣はシングルスでベスト4、ダブルスでは準優勝に終わった。

 

■陸上競技

車いすクラスで、好記録が続々

・5日: 車いすのみの陸上競技大会「ダニエラ・ユッツラー・メモリアル」がスイス・アルボンで開催され、日本新記録が6つ、世界新記録が17つ誕生した。

 

▼日本新記録

男子1500m T54クラス: 樋口政幸 2分56秒33 6位

同 100m T54: 永尾嘉章 14秒07 3位

女子800m T53: 中山和美 1分49秒38 6位

同800m T54: 土田和歌子 1分48秒56 2位

同1500m T54: 土田和歌子 3分23秒65 5位

同5000m T54: 土田和歌子 11分04秒77 2位

 

▼大会全リザルト

http://jaafd.org/pdf/02-2/20150604_djm_results_en.pdf

 

・6日~7日: 車いすクラスのみの陸上競技大会「スイス・オープン・ナショナル」がスイス・アルボンで開催され、4つの日本新記録が誕生した。

 

▼日本新記録

男子800mT54クラス: 樋口政幸 1分32秒06 3位

同 400mT54: 永尾嘉章 47秒59 7位

女子400m T54: 土田和歌子 55秒11 3位

同 800m T54: 土田和歌子 1分43秒83 2位

 

▼大会全結果

http://jaafd.org/pdf/02-2/2015_SON_results_en.pdf

 

・8日: 国際パラリンピック委員会(IPC)は、リオデジャネイロ・パラリンピックの陸上競技で実施する種目を最終決定し、全177種目(男子96、女子81)を発表した。マラソンに女子視覚障害クラスが初めて加えられるなど、前回ロンドン大会に比べて女子の種目と障害の重いクラスの種目が増えている。IPCでは、1)女子の種目を増やす、2)障害の種類や程度をより幅広くし、参加選手を増やす、3)競技性を高めるという3つの観点から、実施種目の検討を重ねていた。

 

▼2016リオデジャネイロ・パラリンピック 陸上競技 実施種目一覧 (英文)

http://jaafd.org/pdf/02-1/20150611_2016_rio_medal.pdf

■東京発

・2日: 日本財団が、「日本財団パラリンピックサポートセンター」を設立したと発表した。障がい者スポーツの普及・振興のため、20年東京パラリンピック開催後の21年末までに、100億円の予算規模で選手の競技環境の整備やパラリンピックの普及・啓発などの事業を行うという。

 

なかでも注目は、パラリンピックの競技団体を対象に、日本財団ビル内の一角を事務所用地として無償提供し、経理などの専門知識をもつ専任スタッフの雇用サポートを行うという事業だ。パラリンピックの競技団体の大半は法人化されておらず、専用の事務所もなく、スタッフも手弁当のボランティアスタッフが多く、選手が競技に集中できるよう組織基盤の強化が課題だった。

 

会長に就任した日本パラリンピック委員会の山脇康委員長は、「人材を育成しながら、(各競技団体の)自立を目指したい」とコメントした。

 

(文: 星野恭子)