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「星野恭子のパラスポーツ・ピックアップ」(518) 4チーム参加のブラインドサッカートップリーグが開幕。品川CCパペレシアルが“ホーム”で白星発進!

10月5日、「Shinagawa LIGA.i(リーガアイ) ブラインドサッカートップリーグ2024」が品川区立総合体育館(東京都品川区)で開幕し、第1節の2試合が行われました。第1試合で埼玉T.Wingsとfree bird mejirodaiが0-0で引き分け、第2試合で品川CC パペレシアルがbuen cambio yokohamaに1-0勝利し、暫定の単独首位に立ちました。

▼大会特設サイト: https://liga-i.b-soccer.jp/

buen cambio yokohamaゴール前に攻め込む品川CC パペレシアルの森田翼選手(中央)と守るbuen cambio yokohamaの中村駿介選手(右)と和地梨衣菜ゴールキーパー

LIGA.iは今年で3年目。参加している4チームは初年度から継続参加しており、全3節にわたってリーグ戦をくり広げ、勝者が決定します。初年度はT.Wingsが、昨年はfree birdが優勝していますが、さて、今年はどのチームが優勝シャーレと賞金を手にできるでしょうか。

先行したのは第1節で唯一、1勝を挙げたパペレシアルです。この日はホームとする品川区での開催であり、さらに今年2月から合流した東京・品川港南エリアを拠点とする地域総合型スポーツクラブ「品川カルチャークラブ(CC)」から大勢のサポーターも駆け付け、「ホームゲーム」となりました。前半はbuen cambio yokohamaの好守備もあってスコアレスでしたが、攻撃のギアを上げた後半10分、森田翼キャプテンが相手ゴール前にボールを持ち込み、左足で技ありシュート。これが決勝弾となり、勝ち点3を挙げました。

この試合の「Player of the Match」も受賞した森田キャプテンは、「たくさんの方に応援に来ていただき、この素晴らしい試合を作ってくださった中で、勝たなきゃいけないというプレッシャーもありましたが、僕が点を決めて、しっかり勝利に導くことができました。キャプテンとしてやることをしっかりできたかなと、すごくいい試合でした」と、充実感をにじませました。

品川CCに加わったこともチームにとって大きかったそうです。例えば、品川CCの支援のおかげで高地トレーニング専門スタジオ「ハイアルチ」を利用できるようになったことで、「スタミナがつき、今日も最後まで走り切れた」と振り返り、また、「試合前も品川コールがあったり、360度すべての場所から僕たちに向けての声援や手拍子が来るという試合は初めてでした。いつも以上の力が発揮できました。また応援に来てもらえるように、いい試合を続けていきたいと思います」と、さらなる活躍を誓っていました。パペレシアルは心機一転の年にLIGA.i初優勝を目指します。

大勢のサポーター、チームロゴ・名称の入った横断幕やのぼりが並んだ“ホーム”ピッチで、気迫あるパフォーマンスを見せる品川CCパペレシアルの川村怜選手中央。左はbuen cambio yokohamaの中村駿介選手、右は同・齊藤悠希選手

一方、buen cambioの齊藤悠希選手は“アウエイ”な環境下での1点差での惜敗に、「ガチンコ勝負ができたことは僕たちの成長もあったかなと思いますが、決めるところを決められるところが違いになってしまったかなと思います」と悔しさをにじませました。

とはいえ、手ごたえを感じた部分もあったと言います。とくに大会に向けて練習試合を増やし、ブラインドサッカー特有の「壁(サイドフェンス)」のあるピッチでのプレイ経験を重ねたり、戦術のバリエーションを増やそうと、各選手がピッチ内で複数のポジションをこなせるように強化してきたと言います。buen cambioも初優勝を狙っています。今後の戦いぶりに注目です。

第1試合は連覇を狙うfree birdと王座復活を目指すT.Wingsが0-0で引き分けました。Free birdの鳥居健人キャプテンは、相手エースを抑えるため、「チーム全体で守備を固めるという意思統一はできていた」と手応えを口にしつつ、「点を取れる状況を作り出せず、反省点」と話しました。今季は得点源でもある丹羽海斗選手をケガで欠くなか、それでもパリパラリンピック代表4人を擁する強力な布陣。山本夏幹監督は今、攻撃面での「それぞれの型を開発中」と明かし、残る2戦で2勝し連覇をつかみとるべく、「頑張ります」と意気込みました。

一方、初代王者のT.Wings菊島充監督は、「やるべきことを伝え、各選手がそれをやり切れた形です」と前回優勝チームに引き分けた試合を振り返りました。試合前に伝えたやるべきこととは、「追回しと声の大きさ」。実際、選手たちはピッチ内を駆け回り、「去年は持てなかった『勝ちたい』という気持ちが今年はみんなで持てた」とチャレンジャー精神が好ゲームの要因だったと手ごたえを語りました。T.Wingsにはブラインドサッカー歴は短いもののサッカー経験豊富な晴眼の選手も多く、これからのチームの進化が期待されます。

ともに攻守に引き締まったパフォーマンスを見せ、スコアレスドローに終わった第1試合。埼玉T.Wingsの秦駿斗選手(左)とfree bird mejirodaiの鳥居健人選手(右)。奥(青#9)は同・北郷宗大選手

このように、「LIGA.i 2024」では個性はさまざま、実力は拮抗の4チームがしのぎを削り合い、タイトルの行方はまだ見えません。つづく第2 節は11 月23日(土)に、東京都内で開催予定。現地観戦はなく、試合の模様はオンラインで配信されます。最終の第3節は12 月1 日(日)に、フクシ・エンタープライズ墨田フィールド(墨田区総合運動場/東京都墨田区)で開催されます(後日、チケット発売予定)。ぜひ、応援ください!

なお、第1試合と第2試合の間に開会式が行われ、そのなかで参加する4チームからパリパラリンピックに出場した日本代表メンバー6名の花束贈呈も行われました。

パリパラリンピックに出場した6名。左から、free bird mejirodaiの永盛楓人選手、園部優月選手、鳥居健人選手、泉健也ゴールキーパー、品川CCパペレシアルの川村怜選手、佐々木ロベルト泉選手 

(文・写真:星野恭子)