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「週刊Jリーグ通信」第15節「浦和の第1ステージ優勝が事実上決定」(大住良之)

 Jリーグは6月7日(日)に行われた第15節後に短い中断にはいった。国際サッカー連盟(FIFA)が定めた「国際カレンダー」により、6月8日(月)から16日(火)までの9日間が日本代表の活動期間となるからだ。第16節は6月20日(土)に行われる。

 

 アジアでは早くも今月から2018年ワールドカップ・ロシア大会の第2次予選が始まる。第1節の11日(木)は、日本はオフだが、第2節の16日にはシンガポールを迎えてのホームゲームが行われる(19時30分、埼玉スタジアム)。

 

そして予選のない11日には、イラクとの親善試合が予定されている(19時、日産スタジアム)。シンガポール戦は本来アウェーゲームだったが、シンガポールの国立競技場が東南アジア競技大会で使用中のため、11月のホームゲームと入れ替えになったものだ。

 

 さて、Jリーグでは、15節を前に6月3日(水)にAFCチャンピオンズリーグ(ACL)のために延期されていた第10節の2試合(柏レイソル×浦和レッズ、ガンバ大阪×鹿島アントラーズ)の2試合が行われ、柏×浦和は3-3の引き分け、G大阪は2-0で勝った。

 

 柏が今季最高と言っていいプレーを見せ、浦和はなかなか形をつくれなかったが、後半ロスタイムにMF関根貴大のクロスをMF武藤雄樹が頭で決め、なんとか引き分けに持ち込んで勝ち点1を確保した。この結果、第15節で浦和が清水エスパルスに勝ち、G大阪がヴィッセル神戸に負ければ、浦和の第1ステージ優勝が決まることになった。

 

 結果から言えば、G大阪が0-0で引き分け、勝ち点1を積み重ねて総勝ち点を28にしたため、清水に1-0で勝った浦和(勝ち点37)の優勝は第15節では決まらなかった。

 

 G大阪はACLのために延期された日程をもう1試合(6月23日、対柏)残しており、第1ステージの残り試合は3。仮にその全試合に勝ち、浦和が残す2試合を落とせば、勝ち点37で並ぶことになる。ただし、得失点差は浦和が+19(得点33、失点14)、G大阪が+10(同20、10)。G大阪は大量点による勝利を重ねなければならない。

 

 「私は非常に慎重な人間ですので普段はこのようなことは言いませんが、今日の勝利をもって第1ステージの優勝はほぼ手中に収めたのではないかと思います」

 浦和のミハイロ・ペトロヴィッチ監督が清水戦後に語ったように、第15節の結果で、浦和の優勝は事実上決まったと言ってよい。

 

 その清水戦、浦和は思いがけない苦戦を強いられた。シュートは8対8。浦和が浦和らしい攻撃を出したのは後半の前半ぐらい。あとは若い清水に走り負け、なかなか相手ゴールに迫ることができなかったのだ。

 

 浦和はDF森脇良太が足の故障で欠場。その穴を今季のJリーグでは初出場の岡本拓也が埋めたのだが、判断が遅く、そこで攻撃のリズムを失ったことが大きかった。浦和の攻撃の切り札的存在になりつつある右MFの関根が、清水のオーストラリア代表左MFミッチェル・デュークのパワーに抑えられたことも痛かった。

 

 それでも、浦和はなんとか1ゴールをもぎ取る。後半7分、中央から攻め込み、FW興梠慎三から走り込んだMF柏木陽介にパス。柏木の突破は妨げられたが、こぼれ球を拾った興梠が超人的なテクニックを見せる。

 

 目の前には清水の選手たちが立ちふさがっていたため、興梠は右足でかかえ込むようにしてボールを左外に持ち出し、いったんはゴールに背を向けたような形にした。この動きで清水の守備の圧力が一瞬ゆるむ、しかしその瞬間、興梠は右足を踏み込み、左足で180度ターンするようなキックのシュート。ボールは正確にゴールの右隅に送り込まれた。

 

 勝ち点13位で17位という危機的な順位にいる清水は、何としても勝ち点3がほしい。最後の20分間は、猛攻に次ぐ猛攻をかけ、エースのFW大前元紀が何回も決定的なチャンスをつかんだ。しかし浦和はDF那須大亮やGK西川周作が好守を連発。なんとか守りきった。

 浦和は4日前の水曜日に柏との死闘(第10節の残り試合、3-3)があった。ACLに出場していなかったチームにはナビスコ杯の予選リーグがあったのだが、清水は試合のない順番に回っていた。浦和の疲労に、若い清水が果敢につけ込んだことでこのような試合展開が生まれたのだが、そうした状況でもなんとか勝ち点3を拾えるようになったことが今季の浦和の成長とも言える。

 

 浦和はこれで今季15戦して11勝4分け、負け知らずの勝ち点37。次節(6月20日)にも優勝が決まるだろうが、何度も書いてきたように、今季からの新制度下での「第1ステージ優勝」はあまり意味がない。第1ステージは残り2節だが、その最終節(6月27日)も「消化試合」などではなく、浦和の選手たちは勝ち点3を目指して戦うに違いない。

 

 11月末からの「チャンピオンシップ」はその場になって考えればいいことだ。力がありながら第1ステージで勝ち点を伸ばせなかったチーム、たとえば柏レイソル(勝ち点14で現在15位)などにとっては、「第2ステージ優勝」は大きなモチベーションになるだろうが、現在上位のチームにとって最大の目標は「年間勝ち点1位」になることだからだ。

 

 第1ステージ終了から1週おいて7月11日(土)に開幕する第2ステージは、ステージの順位表と年間通算順位表の2つを気にしながらという、やや複雑な戦いとなる。

 

〈文:大住良之、写真:Jリーグ公式サイトより〉