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「星野恭子のパラスポーツ・ピックアップ」(505) ブラインドサッカー男子とデフバレー女子、それぞれの大舞台に向けて手応え

今号では6月から7月にかけて、開幕が迫る大舞台に向けた前哨戦として国際大会を戦った日本代表2チームの結果をお届けします。

■ブラサカ男子日本、前哨戦で準優勝!

ブラインドサッカー男子日本代表は7月4日から7日にかけて大阪市で開催された「ダイセルブラインドサッカージャパンカップ 2024 in大阪」に出場しました。世界ランキング3位の日本は7日の決勝戦で同8位のモロッコと対戦し、前後半を終えて1-1からのPK戦で惜しくも敗れ銀メダルでした。

大会には4カ国が参加し、日本は予選ラウンド初戦のマレーシア(同26位)に1-0で勝利、モロッコには0-1で敗れ、メキシコ(同9位)に0-0の引き分けの勝ち点4で決勝戦に進出。一方のモロッコは3戦全勝の首位で勝ち上がっていました。

モロッコのエース、アブデラザック・ハッタブ選手(右)のゴールを、体を張って守る日本勢。左から、佐々木ロベルト泉選手、佐藤大介GK、平林太一選手 (撮影:星野恭子)

決勝で日本は、予選での敗戦経験を活かし、序盤から積極的にゴール前に攻め込みます。前半8分、ゴール正面で得たフリーキックから川村怜キャプテンが左に持ち出し、左足を振り抜いて先制ゴールを決めました。しかし、前半終了間際にモロッコがキーパースローからの速攻で同点に追いつきます。後半になると両チームともさらにスピードアップして猛攻を仕掛け合いますが、ともにゴールは奪えずPK戦に入りました。PK戦では既定の3人までで1-1と決着がつかずにサドンデスに入り、最後は5人目の選手が決めたモロッコが2-3で勝利しました。

PK2点目を決めた後藤将起選手(中央)と喜ぶ日本チーム (撮影:星野恭子)

惜しくも敗れましたが、日本にとっては出場を決めているパリパラリンピック前最後の国際大会であり、貴重な実戦経験となりました。とくにモロッコは東京パラリンピック銅メダルの強豪で、パリパラリンピックのグループリーグでも同組が決まっています。モロッコとは2019年の親善試合が最後の対戦であり、中川英治監督はパリ本番を前に、「モロッコと2戦できたことは大きな収穫。プレッシャーのある試合を若い選手も体験できたことは意味のある大会だった」と振り返っています。

昨年から日本代表入りした後藤将起選手はモロッコとは初対戦。「モロッコはドリブルが少し特徴的。今回実際に直接試合ができたことは大きい。事前にスタッフからいろいろ情報をいただいていても、僕たちは見えないので、やってみないとわからない部分が多い」と話していました。

一方、得点は4試合で川村キャプテンによる2得点に留まりました。川村キャプテンは、「チャンスを決めきれるような力をチームとしても身につけたい」と力を込め、ゴールが期待された若きエース、平林太一選手は、「4試合連続で無得点は代表に入ってからの最長記録。ふがいない」と悔しさをにじませ、「マークされている感じもあるが、しっかり相手の出方とかも研究しつつ、自分を高めていかないといけない」と前を見据えていました。

なお、今大会の会場はJR大阪駅直結のオープン広場に特設したピッチで無料開催され、通りがかった人が誰でもフラッと観戦できるという異例の形で行われました。観戦用のスタンドはなく、普段は通路である大きな階段の一部が観戦席になりました。「音」を頼りにプレーするブラインドサッカーなので静かに観戦するのがマナーですが、今回はあえて周囲の音を完全には遮断しにくい環境を選んで大会を実施しました。これは、パリパラリンピックの会場が13,000人収容のエッフェル塔下の特設ピッチであり、雑音の影響も大いに想定されることから、その環境への慣れも意図していたと言います。

JR大阪駅直結のグランフロント大阪うめきた広場で開かれた「ダイセルブラインドサッカージャパンカップ 2024 in大阪」。多くの観客がブラインドサッカーの迫力あるプレーを堪能 (撮影:星野恭子)

できうる準備を万端に行い、ブラインドサッカー男子日本代表は決戦の地へと向かっていきます。

パリパラリンピックは8月28日から9月8日まで開かれ、ブラインドサッカーは9月1日から7日まで、パリ市内のエッフェル塔スタジアムで行われます。

<最終結果>
順位
1位:モロッコ/2位:日本/3位:メキシコ/4位:マレーシア
個人賞
MVP:ズハイール・スニスラ選手(モロッコ)/MIP:後藤将起選手/大会得点王(2点):モハメッド・エル・アムシ選手、川村怜選手/ベストGK:ハリッド・ケルマディ選手(モロッコ)


■デフバレー日本女子、世界制覇!

聴覚障害のある選手を対象とする「世界デフバレーボール選手権2024豊見城大会」が6月21日から30日まで沖縄県豊見城市で開催されました。5チームが出場した女子の部では日本代表が30日の決勝でアメリカをセットカウント3-1で下し、金メダルを獲得しました。来年11月に東京で日本初開催となるデフリンピックに向け、大きな弾みとなる結果を残しました。

世界デフバレーボール選手権優勝を喜ぶ女子日本代表チーム (提供:デフバレー女子日本代表中田美緒選手)

女子の部には日本のほか、アメリカ、ウクライナ、トルコ、イタリアが参加。日本は予選ラウンドでの総当たり戦を3勝1敗の2位で勝ち抜き決勝トーナメントへ。準決勝ではトルコを3-0のストレートで下し、決勝に駒を進めていました。

一方のアメリカは予選ラウンドで2敗していましたが、準決勝でウクライナに3-1で勝利して決勝へ進出。ウクライナは日本が予選で唯一、黒星を喫していたチームでした。

決勝では日本が2セットを先取後、第3セットは24-26で惜しくも落としましたが、第4セットを取り返して勝ち切りました。日本は堅い守備からの多彩な攻撃やサービスエースなどで得点を重ねるなど総合力の高さを示しました。

決勝戦でアメリカと対戦中の日本(左)。ベストセッター賞を受賞した中田美緒選手(#8)を起点に繰り出される多彩な攻撃や堅守を武器に世界の頂点に立った (提供:デフバレー女子日本代表中田美緒選手)

男子の部には日本をはじめ、ウクライナ、フランス、トルコ、イタリア、インド、アメリカの7チーム(*)が出場し、日本は6位でした。決勝でトルコがイタリアを3-0のストレートで下し、優勝しました。(*イランもエントリーしていたが、棄権)

東京デフリンピックは来年11月15日から26日まで駒沢オリンピック公園総合運動場など17会場で開かれる予定です。

<最終結果>
女子
1位:日本/2位:アメリカ/3位:ウクライナ/4位:トルコ/5位:イタリア

男子
1位:トルコ/2位:イタリア/3位:ウクライナ/4位:アメリカ/5位:フランス/6位:日本/7位:インド/8位:イラン

(文:星野恭子)