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「星野恭子のパラスポーツ・ピックアップ」(502) デフバレーボール世界選手権、沖縄で開幕。東京2025デフリンピックの準備も進行中!

来年11月(15日~26日)に、聴覚障害のあるアスリートの総合競技大会である「デフリンピック」が東京で初めて開催されます。デフリンピックは1924年、パラリンピックよりも先に創設され、4年に1度開催されてきました。来年の「東京2025デフリンピック」はその25回目であり、100周年の記念大会でもあります。世界70~80カ国から選手団約6,000人の参加が見込まれ、21競技にわたって熱戦が展開される予定です。

その「東京大会」の開幕まで500日あまりとなり、さまざまな準備が進められています。6月21日には沖縄で初となる、「デフバレーボール世界選手権2024沖縄豊見城大会」が沖縄県豊見城市で開幕しました。4年に1度、デフリンピックの前年に行われるデフバレーボールの世界一決定戦であり、今年は「東京大会」への出場権獲得にもつながる重要な大会です。男女日本代表など男子の部には全8カ国、女子の部には全5カ国がエントリーし、頂点を競います。

大会公式ポスター (提供:デフバレーボール世界選手権2024沖縄豊見城大会)

デフバレーボールは6人制でコートや用具、競技形式など、一般のバレーボールとほぼ同じルールで行われます。豪快なバックアタックやジャンプサーブ、ち密なクイック攻撃など迫力十分です。

ただし、選手は聴覚に障害があり、聞こえない(聞こえにくい)状態でプレーするため、声や笛の音の代わりに審判がネットを揺らしたりなど視覚情報を取り入れたルールが工夫されています。また、選手たちは手話や読話、アイコンタクトなどを駆使したり、手話通訳士を介して意思疎通を図ったりしながら戦術を実行し、試合を進めています。

日本代表は男女とも過去大会でメダル獲得実績もある強豪チームで、今大会でもメダル有力候補です。会場観戦は無料で、Youtubeによるオンライン配信もあり、ライブでもアーカイブでも観戦できます。参加チームや試合日程などは下記公式サイトをご参照の上、ぜひ、応援ください!

<デフバレーボール世界選手権2024沖縄豊見城大会>
 公式サイト: https://www.jdva.org/wdvcokinawa2024/
 日程: 6月21日(金)~30日(日)
 会場: 豊見城市民体育館 (*観戦無料)
 オンライン配信: https://www.youtube.com/@WDVC2024

■クラウドファンディングもスタート!

「東京2025デフリンピック」を盛り上げるために、大会準備などを担う東京都スポーツ文化事業団が立ち上げたクラウドファンディングもスタートしています。5月24日から募集を開始し、支援者はすでに50人以上に上っています。受付は7月25日まで。詳細は以下のURLよりご確認ください。

▼「東京2025デフリンピック 無音の世界で活躍するデフアスリートの世界大会を応援!」
https://camp-fire.jp/projects/view/758654?utm_campaign=cp_po_share_c_msg_mypage_projects_show


■“多様な言語”に対応する「透明ディスプレイ」を設置

2025年には11月の「東京2025デフリンピック」に加え、9月には「東京2025世界陸上」も開催されることから、世界各地から多様な人々が東京都内に訪れることが想定されています。そこで、東京都ではデジタル技術を活用し、障害の有無や言語の壁を越えて円滑なコミュニケーションを実現する「透明ディスプレイ」の導入が6月14日から開始されました。東京都庁舎総合案内や都民情報ルーム、東京体育館といった各スポーツ施設など都が所有する全38箇所の施設に設置されます。

これは、会話の内容をリアルタイムに文字に変換して投影するディスプレイで、32カ国語(*)の多言語に対応し、翻訳した文章が表示されます。(*: 英語・中国語・韓国語・ポルトガル語・スペイン語・タイ語・ロシア語・フランス語・イタリア語など)

また、付属のタブレットに文字を入力すればディスプレイに表示されるので、手話ユーザーや声を発したり聞き取りの難しい聴覚障害のある人や高齢の方などにも、コミュニケーションが取りやすくなる設備です。

設置開始日の6月14日には東京都庁でお披露目のデモンストレーションも行われ、小池百合子東京都知事やデフ陸上の山田真樹選手も参加しました。手話ユーザーの山田選手は、「私は普段からコミュニケーションで壁を感じるということが多いですが、こちらの透明ディスプレイを利用できるのは大きなサポートだと思います。たくさんの方に使っていただけるといいなと思います」と感想を話しました。

東京都庁舎総合受付で、「透明ディスプレイ」を利用する山田真樹選手 (撮影:星野恭子)

山田選手は7月16日に台湾で開幕する「世界デフ陸上競技選手権大会」の日本代表にも選ばれていて、200mや400m、リレー(4x100m、4x400m)への出場が予定されています。「金メダル獲得が目標です。来年の東京デフリンピックにもつながるような良い結果を残せるように頑張りたいです」と意気込みも語っていました。

「東京2025デフリンピック」での活躍も期待される、デフ陸上の山田真樹選手 (撮影:星野恭子)

小池都知事はデフリンピック開催の意義として、「ろう者や手話の文化の理解促進や共生社会実現への弾みになると思います。また、技術革新を活用したユニバーサルコミュニケーションの促進を東京から発信する意義はとても大きい。ぜひとも成功させたいと思います」と話しました。

なお、デフリンピックの機運醸成や盛り上げるイベントとしては今後、「選手発掘プログラム」や「トークショー」なども企画されています。また、手話の講座も増えていて、受講者にも人気といった話も耳にします。

パラリンピックにつづいて東京で行われる大規模なスポーツ大会、デフリンピック。こちらでもご紹介していきます。ぜひ、ご注目ください。

(文:星野恭子)