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「星野恭子のパラスポーツ・ピックアップ」(85) 5.25~5.31

国内外のパラリンピック競技の話題を独自にセレクトした「パラスポーツ・ピックアップ」シリーズ。今号は、車いすテニスの国別対抗戦で大健闘した日本チームや、国内外の陸上大会で連発した日本新記録をリポート。2020年東京大会をにらんだ選手発信のクラブチーム発足など、新たな動きにも注目です!

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■車いすテニス

日本チーム、国別対抗戦で大活躍!

・25日~31日: “車いすテニスのデビスカップ、またはフェドカップ”として知られる国別対抗戦、「ワールド・チームカップ」大会がトルコ・アンタルヤで開催された。今年は、全5カテゴリー(男子、男子2、女子、クァード、ジュニア)に28カ国52チームがエントリーしており、日本は男子(国枝慎吾、眞田卓、齋田悟司)、女子(上地結衣、堂森佳南子、二條実穂)、クァード(⇒註)(川野将太、諸石光照、平田眞一)の3チームが出場、女子とクァードが銀メダル、男子は4位と全チームが好成績で大会を終えた。

 

⇒クァード(四肢まひ): まひなどの機能障害が3肢以上にみられる重度障害の人のクラス。オーバーハンドサービスができない、手動車いすの操作に支障がある、ラケットを握るのに支障があるためテープでの固定や補助具を使う必要があるなど障害の内容や程度には個人差が大きい。男女の区別はなく1クラスとして実施される。

 

日本車いすテニス協会によれば、女子は3年ぶり4回目の進出を果たした決勝戦で、連勝を重ねるオランダに対してシングルス0-2で敗れたが、銀メダルを獲得。クァードは、王者アメリカに対してダブルスまでもつれる熱戦の末、惜しくも敗れたが、14年ぶり2回目の銀メダル獲得となった。また、男子は、エース国枝慎吾の競技用車いすが移動中に破損するというトラブルに遭い、予選からすべて眞田、齋田の2選手だけの戦いを強いられたなかでの善戦だった。

 

■陸上競技

トラック、フィールドとも、日本新記録ラッシュ!

・29日~31日: IPCグランプリシリーズ第7戦がスイス・ノットヴィルで開催され、日本新記録が4つ誕生した。詳細は下記の通り。

 

<日本新記録>

男子1500mT54クラス: 樋口政幸 2分58秒91 (2位)

男子走り幅跳びT47クラス(上肢切断など): 芦田創 6m42 (1位)

女子5000mT54クラス: 土田和歌子 11分23秒62 (5位)

女子200mT53クラス(車いす): 中山和美 31秒31 (4位)

 

<日本人選手の全結果>

http://jaafd.org/pdf/02-2/20150530_result_or.pdf

 

・31日: 第69回山梨県陸上選手権が山梨中銀スタジアムで行われ、最終日の男子走り高跳びで、右下腿義足の鈴木徹が2m01を1回目でクリアし、自身のもつT44クラス(片下腿切断など)の日本記録を1cm更新し、2位に入った。

 

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<参考写真> セイコーゴールデングランプリ2015川崎大会で、1m95をクリアする鈴木徹選手の跳躍=2015年5月10日/等々力陸上競技場(神奈川県川崎市)】

 

シドニーから4大会連続のパラリンピアンで、9年ぶりに自己記録を更新した鈴木は今、35歳。来年のリオデジャネイロ・パラリンピック出場、そして、悲願のメダル獲得を目指して、まだまだ進化中だ。

 

■福岡発

2020東京のメダル目指し、車いす陸上チームが発足

・28日: 車いす陸上の日本記録保持者(フル、1万m、5000m)で、2015東京マラソン覇者の洞ノ上浩太選手がキャプテンを務める、車いす陸上のチーム、「チーム・ブルータグ 2ARM DRIVE(二腕駆動)」が発足し、練習拠点の福岡県飯塚市で記者発表会が行われた。

 

メンバーは洞ノ上選手など日本代表経験者から競技歴約半年の選手までキャリアも専門種目もさまざまな、福岡県内在住の6選手。日本における車いす陸上は指導者も少なく、個人練習が基本だが、そうした競技環境を整備し、スポンサー探しなども含めて情報やノウハウを共有し、世界で戦える選手の輩出を目指すのがチーム設立の目的だという。

 

パラスポーツは競技人口も限られており、組織的な強化体制は2020年東京大会開催決定を機に、ようやく本格化した感があり、これからが取組みが重要になる。選手主体で、かつ地方発信のクラブチームの挑戦に期待したい。

 

(文: 星野恭子)