「星野恭子のパラスポーツ・ピックアップ」(84) 5.18~5.26
国内外のパラリンピック競技の話題を独自にセレクトした「パラスポーツ・ピックアップ」シリーズ。今号は、来年のリオデジャネイロ・パラリンピックで初のメダル獲得を目指すウィルチェアーラグビー日本代表の国際強化試合での優勝のニュースから、日本におけるパラスポーツ振興を目的に1965年に設立された日本障がい者スポーツ協会が50周年を迎えたニュースなどをレポートしています。
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■ウィルチェアー(車いす)ラグビー
日本が、予選から全勝で優勝!
・22日~24日: 世界ランク4位の日本、イギリス(同5位)、デンマーク(同6位)、ニュージーランド(同8位)を迎え、日本パラリンピック委員会(JPC)が主催した国際強化大会「2015ジャパンパラ・ウィルチェアーラグビー競技大会」が千葉ポートアリーナで開催され、日本が予選リーグから5戦全勝で金メダルを手にした。
写真: 4カ国対抗戦で全勝優勝を果たし、金メダルを獲得した日本チーム=2015年5月24日/千葉ポートアリーナ
巧なチェアワーク(車いす操作)と激しいタックルで得点を重ねたエース池崎大輔は、「初戦からいいスタートが切れたのでよかった。誰もがチームのために全力を尽くした結果。(選手間の)コミュニケーションをもっと取っていきたい」と振り返った。
現在、世界ランク4位の日本はトップ3(オーストラリア、カナダ、アメリカ)に割って入り、来年のリオデジャネイロ・パラリンピックでのメダル獲得が大目標だ。萩野晃一ヘッドコーチは、今大会の優勝を評価しながらも、「メダルに届くか、今はまだ自信がない。メンタル強化やトレーニング方法を変えて、さらに取り組んでいかなければ」と気を引き締めた。
日本代表はこのあと10月下旬に、来年のリオデジャネイロ・パラリンピック出場権をかけた大一番、「アジア・オセアニア選手権」(千葉ポートアリーナ)に臨む。今大会の優勝を弾みに、まずは「大目標」への挑戦権をしっかりとつかみ取ってほしい。
<日本の全試合結果>
予選リーグ第1戦: ○ 56―43 ニュージーランド
同 第2戦: ○ 55-36 デンマーク
同 第3戦: ○ 56-49 イギリス
準決勝: ○ 51-41 ニュージーランド(予選4位)
決勝: ○ 57-43 イギリス
<最終順位>
優勝:日本/2位:イギリス/3位:デンマーク/4位:ニュージーランド
■車いすテニス
国枝と上地が単複制覇。ジャパン・オープンで他を圧倒
・16日: 福岡県飯塚市で12日から開催されていた「第31回飯塚国際車いすテニス大会(ジャパン・オープン)」の第5日、男女ダブルス決勝が行われ、男子は国枝慎吾/ゴードン・レイド(イギリス)組が、ミカエル・ジェレミアス(フランス)/マイケル・シェーファース(オランダ)組を6-1、6-1のストレートで下した。女子は、上地結衣がジョーダン・ホワイリー(イギリス)と組み、サビーネ・エラーブロック(ドイツ)/ルーシー・シューカー(イギリス)組に4-6、6-3、6-4で逆転勝ちを収めた。
・17日: ジャパン・オープン最終日は男女シングルス決勝が行われ、男子は世界ランキング1位の国枝慎吾(ユニクロ)がゴードン・レイド(イギリス)を6-2、6-3のストレートで下し、大会8連覇を達成。女子も同1位上地結衣(エイベックス・グループ・ホールディングス)が同2位のアニク・ファン・クート(オランダ)をフルセットの末、1-6、6-1、6-3で退け、3度目の栄冠を手にした。
■陸上競技
義足アスリートによる世界新が、続々誕生!
・18日: 国際パラリンピック委員会(IPC)によれば、16日にスペインで開催されたパラ陸上競技大会で、男子T44クラス(片下腿切断など)走り幅跳びで、ドイツのマルクス・レームが8m29をマークし、自身のもつ世界記録を5cm更新する、世界新記録を樹立した。レームは昨年7月、ドイツ選手権で当時の世界新記録となる8m24を跳び、健常者を抑えて優勝も果たし、注目された。
また、同日にオランダで行われた大会では、女子T43クラス(両下腿切断など)200mで、同国のスター、マーロウ・ファン・ラインが25秒99をマークし、彼女自身が3年前のロンドンパラリンピックでつくった世界記録を0.19秒、更新した。また、ファン・ラインは100mでも追い風参考記録ながら、世界新レベルの12秒69をマークした。現在の世界記録は今年2月、UAEで開催された大会で、彼女自身がつくった12秒85。
■東京発
日本のパラスポーツ普及・発展のために!
・26日: 24日に創立50周年を迎えた日本障がい者スポーツ協会(JPSA)が都内で記念式典を行い、文部科学省の下村博文大臣や2020年東京オリンピック・パラリンピック組織委員会の森喜朗会長、多くのパラリンピアンら約300人が来場した。
式典では同協会の鳥原光憲会長があいさつしたほか、火の鳥の羽をモチーフに、アスリートの心の中で燃える炎をイメージしたという、新しいコミュニケーションマークも発表された。JPSAによれば、日本の障がい者スポーツの未来を見据え、新たな思いを形にしたシンボルマークだという。
(文・写真: 星野恭子)