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「星野恭子のパラスポーツ・ピックアップ」(496) パリパラに弾み! ボッチャと水泳で、日本代表内定選手たちが活躍!

4月29日から5月6日までカナダ・モントリオールで開催されたボッチャの国際大会、「モントリオール2024世界ボッチャカップ」で日本代表、「火ノ玉ジャパン」は金メダル2つ、銀メダル1つ、銅メダル1つの計4つのメダルを獲得しました。パリパラリンピック前の最後の国際舞台であり、すでにパリパラ代表に内定している選手たちにとって大きな弾みとなりました。

金メダルを獲得した一人はBC2男子の杉村英孝選手(TOKIOインカラミ)で、個人戦のグループラウンドを3戦全勝で決勝トーナメントに進出。トーナメントも順調に勝ち進み、決勝ではインドネシアの選手に5-1で勝利しました。

日本ボッチャ協会を通じて杉村選手は、「パリパラに向けて弾みがつく成果をあげることができたのではないかと思っています。そして、なによりも応援して下さっている皆さんのもとでボッチャができていることに感謝しています」とコメント。東京パラに続く連覇に向け、大きな手応えを得たようです。

BC2男子個人戦で優勝した杉村英孝選手(右) (提供:日本ボッチャ協会)

もう一つの金メダルはBC3ペアの有田正行選手(電通デジタル)と一戸彩音選手(スタイル・エッジ)のペアが獲得しました。グループラウンドから白星を重ね、決勝戦ではオーストラリアペアを4-1で下しました。有田選手は、「日本からの声援、また会場でも火ノ玉JAPANメンバーからの声援をたくさんいただいて気持ちよくプレーすることができました。また次の大会に向けてしっかりと準備していきます」。一戸選手も、「皆さんの声援や応援のおかげで気持ちよくプレーすることができました。これからもっともっと成長して、皆さんに楽しいと思っていただけるボッチャをしていきたいと思います」とコメント。3月の世界最終予選で準優勝してパリパラ代表に内定したばかりの同ペアにとって、初出場となるパラリンピックに向けた大きな自信となったことでしょう。

BC3ペアで金メダルを獲得した日本チーム。左は有田正行選手と有田千穂ランプオペレータ―(後方)、一戸彩音選手と一戸賢司ランプオペレータ―(同) (提供:日本ボッチャ協会)

さらに、BC1女子個人戦でパリパラ代表に内定している遠藤裕美選手(福島県ボッチャ協会)が銀メダルを獲得しました。準決勝で東京パラなどのメダリスト、藤井友里子選手(アイザック)との日本人対決を接戦の末、6-5で勝利。決勝ではシンガポールの選手に2-4で敗れましたが、自身初のパラリンピックでの活躍が期待されます。なお、藤井選手も3位決定戦で勝利し、銅メダルを獲得しました。遠藤選手は、「みんなの応援が力になりました」と感謝し、藤井選手は、「メダルが獲れたことを大変嬉しく思います。みんなつながっていいプレーができるように応援をよろしくお願いします」とコメントしました。火ノ玉ジャパンの活躍に、これからも期待です。

BC1女子個人戦で銀メダルを獲得した遠藤裕美選手(右) (提供:日本ボッチャ協会)

■好記録にわいた、ジャパンパラ水泳大会

5月3日から5日までの3日間、「WPS(世界パラ水泳)公認2024ジャパンパラ水泳競技大会」が横浜国際プール(横浜市)で開催され、参加標準記録を突破した約250選手が力泳を見せました。

パリパラリンピック日本代表に内定している選手も、ケガで欠場した宇津木美都選手を除く21選手(男子12、女子9)が出場。8月のパリ本番を見据え、今大会には大半が、「強化の一環、調整なし」で臨んでいたようですが、好記録をマークし手応えを口にする選手も多く、今後への期待が高まる大会となりました。

S11(視覚障害)の石浦智美選手(伊藤忠丸紅鉄鋼)は3種目(100m背泳ぎ、100m自由形、50m自由形)で日本記録を更新。とくにメインとする50m自由形は最終日に行われましたが、29秒84を出し、「ずっと目標としてきた29秒台が出てよかった。パリ(パラリンピック)では初日にメインレースなので、どのくらい出るか、自分自身に期待している」と笑顔で話しました。現在36歳で水泳歴33年というベテラン。眼病治療の影響で苦しんだ時期もありましたが、進化し続ける要因として、2017年から師事する高城直基コーチとの基礎から見直す地道な練習などの成果を挙げました。

S10(運動機能障害)の南井瑛翔選手(近畿大学)は100m背泳ぎと100mバタフライでアジア新記録を樹立しました。とくにバタフライについて、「あのタイム(59秒30)は正直、びっくり。先週から合宿中でのレースで不安もあったが、(トレーニングが)しっかりと泳ぎにつなげられているからだと思う」と振り返りつつ、「アジア新でも、世界ではまだ決勝に残れない。58秒台を狙って、夏までにもっと練習したい」と、自身2回目となるパリパラを見据えていました。

S5(運動機能障害)の日向楓選手(中央大学)と田中映伍選手(東洋大学)はともに両腕欠損で同じクラスの良きライバル同士です。今大会では100m自由形の予選で田中選手が1分9秒54で日本記録を更新するも、決勝で日向選手が1分18秒11でさらに塗り替えるという好レースを展開しました。田中選手は、「予選では攻めていって日本新が出てうれしかったが、決勝では前半からばててしまった。1日で100mを2本、泳ぎ切る体力がないので、これから頑張りたい」と振り返り、日向選手の存在について、「お互いに意識しあいながら、どっちが勝てるか分からない戦いなので、いい意味で引き締めあえている」と話しました。日向選手は、「2年ぶりにベストが更新できてよかった。予選で田中選手に新記録を出されて悔しかった」そうで、決勝では思いきってレースプランを変えて臨んだと言います。「田中選手が日本記録を出してくれたおかげで、自分も気持ちを切り替えてはまった気がする」と、互いに刺激し合い、切磋琢磨し合う様子がうかがえました。

他にもS12(視覚障害)の辻内彩野選手(三菱商事)やS14(知的障害)の木下あいら選手(同)、S7(運動機能障害)西田杏選手(シロ)らも日本記録などを更新。パラ水泳日本代表、「トビウオパラジャパン」の順調な調整ぶりがうかがえました。

(文:星野恭子)