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「星野恭子のパラスポーツ・ピックアップ」(83) 5.10~5.17

国内外のパラリンピック競技の話題を独自にセレクトした「パラスポーツ・ピックアップ」シリーズ。今号では、韓国・ソウルで10~17日まで開催された、視覚障害者スポーツの世界大会「IBSAワールドゲームズ」と、16~17日に横浜で開催された、パラトライアスロン世界大会のリポートをお届けします。

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■ソウル発

・17日: 「ソウル2015 IBSAワールドゲームズ」が閉幕した。同大会は国際視覚障害者スポーツ連盟(IBSA)が主催する世界大会で、視覚に障害のある選手が参加し、パラリンピック競技でない競技も実施される。今大会では9競技(陸上競技、チェス、サッカー、ゴールボール、柔道、パワーリフティング、ショーダウン、競泳、テンピンボウリング)が実施され、日本選手団は6競技に参加した。それぞれの主な結果は以下の通り。

 

<陸上競技>

日本代表はメダル9個(銀6、銅3)を獲得。近藤克之監督は、「(若手もベテランも)各選手が日を追うごとに一致団結していった結果」と評価した。また、15日には価値ある日本新記録も誕生。男子800mT13クラス(弱視)で安西飛呂(17歳)が1分59秒44をマークし、日本人視覚障害選手として800mで初めて2分の壁を突破した。

 

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写真: 男子800mT13のスタート前に集中する安西選手。このあと日本新の快走をみせた=2015年5月15日/Incheon Munhak Stadium)

 

▼安西のコメント
「気持ちいいです。ついに800mで日本記録を出せました。初の1分台です。順位的には5位で、トップ(選手)は世界レベルで速いですが、僕はこれからまだ先がある。地道にやっていけば、届くと思います」

 

<サッカー>

・B1クラス(全盲)

日本は予選リーグ2勝1敗1分けで5位決定戦に回り、トルコに1-0で勝利して9チーム中5位だった。金メダルはアルゼンチン、銀はイギリス、銅はスペイン。日本代表はこのあと、9月に東京で開催予定のアジア選手権で、リオデジャネイロ・パラリンピック出場権の獲得を目指す。

 

・B2/B3クラス(弱視/ロービジョンフットサル)

日本は予選リーグ1勝3敗で3位決定戦に回り、1-2でイタリアに敗れ4位だった。予選の韓国戦で挙げた1勝はチーム史上初となる国際大会での勝利だった。金メダルはウクライナ、銀はスペイン、銅はイタリア。

 

<ゴールボール>

・男子: 予選リーグ4勝2敗1分けの3位で決勝トーナメント(8チーム)に進出したが、初戦のトルコ戦で5-6と敗退。金メダルはリトアニア、銀は中国、銅はスウェーデン。

 

・女子: 予選リーグ3勝3敗1分けの4位で決勝トーナメント(同)に進んだが、トーナメント初戦で中国に0-1で敗れた。金メダルはイスラエル、銀は中国、銅はカナダ。

 

なお、今大会でリオ・パラリンピック出場確定の可能性があったが、男女とも逃した。アジア・パシフィック選手権(11月/中国)で出場権獲得に再挑戦する。

 

<柔道>

個人戦では、男子60kg級で平井孝明が銀メダル、廣瀬誠が銅メダルを獲得。団体戦男子は金がロシア、銀が韓国、銅がアメリカとブラジル、同女子は金がウクライナ、銀が中国、銅がブラジルとロシア。

 

<パワーリフティング>

男子67.5kg級BPで大谷重司が銅メダルを獲得した。

 

<テンピンボウリング>

パラリンピック競技ではないテンピンボウリングにとって、今大会は数少ない国際大会のひとつ。日本代表は計11個(金4、銀5、銅2)のメダルを獲得する活躍をみせた。

 

【詳細な競技結果はこちらへ】

・大会公式サイト: http://www.ibsawg2015seoul.org/en-us

・日本障がい者スポーツ協会: http://www.jsad.or.jp/

 

■パラトライアスロン

・16日: トライアスロンでは世界最高峰の、「世界トライアスロンシリーズ(WTS)」の横浜大会が横浜市山下公園周辺で開幕。パラアスリートを対象としたパラトライアスロンのエリート部門として男女別5クラス(PT1~5)が実施され、世界各地から約60選手が参加した。

 

日本勢では、女子PT2(立位:機能障害)で秦由加子が金メダル、女子PT5(視覚障害)で山田敦子(同:武友麻衣)が銀メダル、男子PT5で中澤隆(ガイド:原田雄太郎)が銅メダルを獲得した。

 

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写真: WTS横浜大会エリートパラの部でメダルを獲得した日本人選手たち。左から、原田ガイドと中澤選手、秦選手、山田選手と武友ガイド=2015年5月16日/横浜市山下公園)

 

全完走者中、最速のフィニッシュは男子PT1(座位)のリッジ・シャボット(アメリカ)で、タイムは1時間1分50秒だった。

 

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写真: スイムを終え、バイクのトランジションエリアへ急ぐシャボット選手=2015年5月16日/横浜市山下公園)

 

・17日: WTS横浜大会第2日には、パラトライアスロンのエイジ部門が行われ、男女14選手が完走。総合1位は前日のエリート部門にも出場した、PT4(立位・機能障害)の佐藤圭一で1時間13分21秒だった。

 

また、総合12位でフィニッシュした女子PT5の中田鈴子は視覚だけでなく、横浜大会では初出場となる、聴覚にも障害のある盲(もう)ろう選手だった。箱谷幸恵ガイドとはレース中、簡単な合図や手の平に文字を書くなどでコミュニケーションをとり、1時間56分19秒で完走を果たした。

 

中田は完走後、「嬉しい。(箱谷ガイドと)心が通じあったことが一番よかった。来年もまた、横浜大会に挑戦したい」と笑顔を見せた。

 

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写真: WTS横浜大会エイジパラの部で初の盲ろう者として完走した中田鈴子選手と箱崎幸恵ガイド=2015年5月17日/横浜市山下公園)

 

(文・写真: 星野恭子)