国民栄誉賞授与式迫る、「長嶋茂雄ラストショー(最後の賞?)」後の日本プロ野球の未来は?(玉木 正之)
日本のプロ野球の未来は、どうなってしまうのだろう……?
ペナントレースは熱戦が続き、もうすぐ交流戦も始まるという時期に、そんなことを考えたのは、長嶋茂雄氏と松井秀喜氏の国民栄誉賞の授与式(5月5日)が近づいたからだ。
安倍政権の政治的思惑や巨人の親会社の目算はさておき、東京ドームでのこのビッグ・イベントには、やはり感慨深いものがある。
戦後日本のプロ野球の歴史は、すべて長嶋茂雄氏の一挙一動から生まれたと言っても、けっして過言ではない。
かつてプロ野球以上の大人気を誇っていた東京六大学野球のスーパースター長嶋氏が、そのファンをごっそりと引き連れて巨人入り(1958年)。
翌年の彼の天覧試合サヨナラホーマー(59年)や、巨人のV9(9年連続日本一=65〜73年)で、プロ野球人気は確固たるものとなり、さらに長嶋氏の巨人監督時代、選手だった王貞治氏の通算本塁打記録が当時のアメリカのメジャー記録(ハンク・アーロンの通算755本塁打)を上回り、それをきっかけにして国民栄誉賞(77年)が生まれた。
その「賞」を、今回はアメリカへ渡ってメジャーの選手として活躍した松井氏と、巨人時代に彼を育てた長嶋氏が、揃って受賞する。
「時代」は大きく変わり、長嶋氏のプロ入り当時、ナショナル&アメリカン両リーグで16球団だったメジャー・リーグは30球団に増え、リーグ全体の経営規模も半世紀前とは比較にならないほど大きくなった。
変わらないのは日本のプロ野球で、セントラル・パシフィック両リーグ12球団制が、今も昔も頑迷に守られている(途中、1リーグに縮小再編する動きはあったが……)。
いや、日本のプロ野球も、大きく変わった面もある。
かつて「(六大学や高校野球よりも)マイナー的存在」と長嶋氏自身も語っていた職業野球が、日本で最も人気のある国民的人気のプロ野球となり、その頂点を経て、現在、観客数は長嶋氏の選手時代よりも増えたとはいえ、テレビ視聴率は落ち、主力選手はすべてアメリカに渡り、メジャー入りするようになった……。
そんな戦後日本プロ野球史の中心で、常に主役を演じてきたのが長嶋氏だったのだ。
では長嶋氏の「ラスト・ショー(最後の賞)」のあと、日本のプロ野球には、いったいどんな未来があるのだろうか……?
メジャー・リーグの一部(極東地区)に加わわる(呑み込まれる?)ような未来か……? それとも、メジャー・リーグに選手を供給する下部組織(マイナーリーグ)に甘んじるのか……?
それともかく、日本野球はアメリカのベースボール・ビジネスに利用される以外に道はないのか……? それが、TPP時代のプロ野球のあり方なのだろうか?
【毎日新聞4月20日付朝刊スポーツ面『時評点描』 + Camerata di Tamakiブログ『ナンヤラカンヤラ』 + NLオリジナル】