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 「星野恭子のパラスポーツ・ピックアップ」(486) パラ・ノルディックスキージャパンカップで2勝の川除選手、「練習の成果出せた」

2月24日から2日間の日程で、「CO・OP2024FISパラ・ノルディックスキージャパンカップ白馬大会」が長野県の白馬クロスカントリー競技場(スノーハープ)で開催され、日本代表選手から育成選手ら26人が出場しました。

2日間のレースを終え、観客らとともに記念写真に納まる選手たち (提供: 日本障害者スキー連盟)

初日は好天のなか、1.25kmのコースでスプリントクラシカル種目が行われ、身体や視覚、聴覚、ID(知的)に障害のある23選手が出場。男女もカテゴリーも区別なくオールコンバインド方式で行われ、予選ラウンドを勝ち上がった12選手が6人ずつの準決勝に進出。各組の上位3人が決勝に進み、時差スタートによる白熱のレースの結果、昨季のワールドカップ総合チャンピオンの川除大輝選手(LW5/7/日立ソリューションズ)が優勝しました。2位には同W杯3位の新田佳浩選手(LW8/同)、3位には昨年3月に第1子を出産し、産休から復帰した阿部友里香選手(LW6/同)が入りました。

川除選手は、「平地が多いコースで自分の苦手なコースレイアウトでしたが、(昨年の)春先からの平地でのスピードを意識した練習の成果を出すことができ優勝することができました」と手応えを語りました。
スプリントクラシカルを制した川除大輝選手のフィニッシュシーン (提供: 日本障害者スキー連盟)

新田選手は、「全カテゴリーのオールコンバインドで、条件によってどの選手が勝つかわからない状況でしたが、なんとか2位になることができ良かったです」とレースを振り返った上で、「また育成選手も白馬大会に参加しており、強化選手たちと一緒にレースができたことで自分の位置やレベル差を身近で感じたことは来シーズン以降にも繋がるように頑張ってもらえればと期待しています」と、ベテランならではの視点で大会の意義にも触れていました。

阿部選手は、「障害関係なく、全カテゴリーで競う今回のスプリントレースは今までになく盛り上がり、白熱したレースとなりました。私自身予選から決勝まで力を出し切ることができ、自信に繋がりました」と充実の表情で語りました。

産休明けのレースで力強い滑りを披露した阿部友里香選手 (提供: 日本障害者スキー連盟)

2日目の5kmフリーのレースは降雪の中、19選手が男女別に立位と座位に分かれてレースを行い、1.25kmのコースを4周回し、男子立位は川除選手が、同座位では森宏明選手(LW12/朝日新聞社)が、女子立位では阿部選手がそれぞれ優勝しました。

男子立位で2位に入った佐藤圭一選手(LW8/セールスフォース・ジャパン)は、「前日のレースの疲労で身体は重く自分の滑りにはほど遠かったため結果には満足していませんが、起伏のあるコースレイアウトが、この後のバイアスロン世界選手権カナダ大会(3月13日~18日)と似ていて良い調整ができたと思います」とレースを振り返り、白馬地区の雪不足のなか、無事に大会が開催されたことには、「ご尽力頂いた関係者の方々に感謝の気持ちでいっぱいです。近年は温暖化により雪の確保が難しい状況があり選手としてもSDGsやサスティナブルな活動を行うなどしていかなければと感じる大会でもありました」と話しました。

3位に入った岩本啓吾選手(LW3/土屋ホーム)は、「今日は自分なりにいい感じでスタートすることができました。後半は疲れてしまいましたが最後まで粘って走る事ができました。 3月にはカナダでワールドカップがあるのでいい成績が残せるように頑張りたいと思います」と力を込めました。

5㎞フリーの男子立位の表彰式の様子。左から2位の佐藤圭一選手、1位の川除大輝選手、3位の岩本啓吾選手 (撮影: 日本障害者スキー連盟)

5位に入った村越裕太郎選手(ID=知的障害/十日町アクティブスポーツ/あかね園)は3月3日から8日までポーランドで行われるVirtus(国際知的障害者スポーツ連盟)世界選手権に出場予定です。「今日は、来週からの世界選手権のため、大会の練習としての滑りでしたが、良い結果が出て、良かったです。世界選手権ではメダルを取って来たいと思います」と目標を語りました。

女子立位2位に入った岩本美歌選手(LW8/北海道エネルギーパラスキーチーム)は、「得意としているフリー競技で、距離も短くコースも簡単な方だったので自信があったのですが、少しの差で負けてしまいとても悔しかったです。ですが、まだ大会は続きますし、自分の成長を感じられてさらに頑張ろうと思えました。残すところカナダのW杯になりました。今年はとても長いシーズンでしたが成長できました。最後まで笑顔で悔いなく走り抜きます」と意気込みました。

また、育成選手7名が測定レースに参加し、男女・障害カテゴリーの区別なくコンバインドで競い合い、これまでの練習の成果を確認しました。1位となった鈴木剛選手(LW8)は選手発掘プログラム「J-STAR6期生」で、昨年12月に初めて雪上を走ったばかりだそうですが、それから数回の合宿を経て臨んだ今大会で右腕1本のストックながら力強い滑りを見せました。「スタッフの方々の支えはもちろん、同じ育成の選手たちとも互いに刺激し合いながらレースをした事で今回の成績が得られたと思います。まだまだ選手としては未熟者ですので、この結果に満足せず、さらに上を目指していき、今後は全体の順位で表彰台に立てるようになりたいです」と前を見据えました。

同5位に入った岩崎大輔選手(LW10.5/横山工業)は座位の選手です。「今年度、育成選手として夏からローラースキーを始め、今大会に至るまで、連盟スタッフの皆様にも支えられたことにより、育成選手一人ひとりが課題をもって成長することが出来ました。今回のレースはコース5kmが初めてで、完走を始め、登り坂が登りきれるかが不安でしたが、無事、走り切る事が出来ました。
今後、自主トレーニングを始め、どれだけ競技のことを考え、自分で「やるか、やらないか」を積み重ね、成長していきたいと思います」と目標を口にしました。

切磋琢磨で今後の活躍が期待される育成選手の一人、岩崎大輔選手 (撮影: 日本障害者スキー連盟)

なお、ナショナルチームの選手たちは今季の締めくくりとなる3月の国際大会に向け、さらなる調整が続きます。ぜひ、応援ください。

(文・星野恭子/選手コメントは日本障害者スキー連盟のリリースより引用)