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パラスポ・ピックアップ・トピック(2) 障害を越えた「夢の一戦」に感じた期待

大型連休も終盤となった5月5日、東京・品川区の大井ふ頭中央公園で、聴覚障がい者(ろう者)サッカー(前半は東日本選抜、後半は日本代表)と知的障がい者サッカー日本代表がエキシビションマッチを行いました。数ある障がい者サッカーの中でも、両サッカーは通常のサッカーと同じ11人制サッカーで競技を行うことから、以前から交流戦が検討され、ようやくこの日、関係者の尽力によって、「史上初」の夢のマッチが実現したのです。

 

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【写真: エキシビションマッチ後半戦で対戦する聴覚障がい者サッカー日本代表(青)と、知的障がい者サッカー日本代表(白)=2015年5月5日/大井ふ頭中央公園陸上競技場(東京品川区)】

 

唯一とも言える変則ルールは、「聴覚に障害のある選手にも審判のジャッジが伝わるように、主審もホイッスルだけでなくフラッグを手にし、笛と旗の二つで合図すること」です。確かに、この日のマッチでは主審と副審2人の3審判がフラッグを手にしていました。デフリンピック(ろう者対象の国際総合競技大会)などではジャッジがより的確に瞬時に伝わるよう、線審に加え両ゴール裏にも審判がおかれ、主審の笛に合わせてフラッグを掲げて合図を送るのだそうです。

 

さて、今マッチのほうは、前半はろう者東日本選抜が2-0で、後半も同日本代表が2-1で知的障がい者チームを制しました。一般的に聴覚障がいの選手は普通校で健聴者と混じって長くサッカーをプレイしてきた選手が多いのに対し、知的障がい者選手のほとんどは特別支援学校出身者であり、いわゆるサッカー経験値に差があると言われています。

 

この日、ろう者サッカー日本代表を率いた、植松隼人監督代理は、「エキシビションマッチということで観客も多く、緊張したが、いい試合を見せられたのではないかと思う。ほっとした」と話し、知的障がい者サッカーの小澤通晴監督は、「実力差があるのは分かっていた。聴覚障がいの選手は言葉によるコミュニケーションができない分を、顔を上げて首を動かし、広い視野で補い周囲の状況を把握していた。いい勉強になった」と振り返っていました。

 

障害を越えた交流戦は両チームにそれぞれよい刺激を与えたのではないでしょうか。国内ではなかなか代表レベルでの強化試合が難しい競技にとって、こうした「代表戦」は力試しやモチベーションアップにはよい機会になりそうです。

 

また、「夢のマッチ」ということで単独での試合よりも観客やメディアも多かったように感じました。実際、私も両サッカーを初めて観戦した一人です。こうした機会が増えることで、一見しただけでは障害が分かりにくいと言われる聴覚障害や知的障害への理解が進む機会にもなりうるのではないか。それもスポーツのもつ力だなと感じました。

 

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【写真:表彰式などでは手話通訳がつき、選手や観客に対し、情報伝達をサポート(白)=同】

 

実は今回のマッチは、4日から行われていた聴覚障がい者サッカーの東日本大会「第14回EJDFAデフリーグ」の中の特別試合として行われたのですが、せっかくの第一歩。今後も、大きな国際大会前の強化試合や壮行試合など、何らかの形で交流が継続されたらと思いました。

 

(文・写真:星野恭子)