ノーボーダー・スポーツ/記事サムネイル

「星野恭子のパラスポーツ・ピックアップ」(483) 世界で活躍する日本代表選手たちの今!

1月から2月にかけて、「世界」と戦った日本代表選手たちの活躍について、今号では冬本番に海外転戦中のノルディックスキー、パリパラリンピックで悲願の金メダルを目指す車いすラグビー、パリパラリンピック出場権獲得を狙う車いすバスケットボールの3競技に注目しました。

■ノルディックスキー
ワールドカップ2大会で、川除大輝選手が2冠!

国際スキー・スノーボード連盟(FIS)主催のパラノルディックスキーワールドカップがイタリアのドッビアーコ(1月24日〜28日)とマルテール(1月31日~2月1日)で相次いで開催され、2022年北京パラリンピック金メダルの川除大輝選手(日立ソリューションズ)が、初戦のクロスカントリースキー10kmクラシカル(マススタート)と第2戦の同スプリントクラシカル(1.3km)の男子立位カテゴリー2種目で優勝を果たした。

FISパラノルディックスキーワールドカップ第2戦(イタリア・マルテール大会)のクロスカントリースキー・スプリントクラシカルで男子立位カテゴリーの表彰台中央で笑顔を見せる川除大輝選手 (写真提供: 日本障害者スキー連盟)

川除選手は他に同10㎞クラシカル(個人スタート)で2位、同10kmフリースタイルで6位入賞を果たした。

日本障害者スキー連盟を通して川除選手は、ドッビアーコ大会での10kmクラシカル(マススタート)では、「序盤は自分のペースを守りつつ、後ろとのタイムを確認しながらリラックスして入ることができた。終盤は2位の選手にかなりタイムを縮められたが、残りの力を振り絞り1位でゴールすることができた」と振り返り、次戦のスプリントクラシカル(1.3km)では、「大会会場のマルテールは標高(1700m)が高く、ドッビアーコからの期間も短かったため、調整がとても難しい状況だった。だが、予選から自分の強みを活かし、決勝でもラストの登りで2位の選手を突き放し優勝することができた」と手応えをうかがわせた。

ワールドカップ第2戦(イタリア・マルテール大会)で、スプリントクラシカルで上り坂を力走する川除大輝選手 (写真提供: 日本障害者スキー連盟)

レジェンド、新田佳浩選手(同)も同2大会を通し、同じく男子立位でクロスカントリースキー10kmクラシカル(個人/マススタート)と、同スプリントクラシカル(1.3km)の3種目で4位入賞を果たした。

また、マルテール大会ではバイアスロン競技も行われ、7.5kmスプリントで男子立位ベテランの佐藤圭一選手(セールスフォース・ジャパン)が5位に入賞した。

佐藤選手は「射撃は満射できたが、射撃タイム短縮に課題が残る。スケーティングは特に海外選手との走力差があるため継続的なトレーニングが必要。結果的に滑るスキーを作ってくれたワックスマンとチームのサポートによりなんとか入賞する事ができ、良かった。自分の実力を上げてメダル獲得を目指したい」と今後への意気込みを話した。

ワールドカップ第2戦(イタリア・マルテール大会)のバイアスロン(7.5kmスプリント)で5位入賞の佐藤圭一選手 (写真提供: 日本障害者スキー連盟)

なお、ノルディックワールドカップは3月にカナダでもう一戦、今季最終戦が行われるが、その前に2月24日~25日には国内で、「CO・OP 2024FIS パラ・ノルディックスキージャパンカップ白馬大会」が予定されている。川除選手をはじめ、日本代表選手たちの滑りを間近に観戦できるチャンスだ。会場は1998年長野パラリンピックの会場だった白馬クロスカントリー競技場(スノーハープ)で、観戦無料で開催される。

■車いすラグビー
3カ国対抗戦で日本が、7戦全勝優勝! 若手が貴重な経験

車いすラグビーの国際大会「2024ジャパンパラ競技大会」が1月25日から28日まで千葉ポートアリーナ(千葉市)で行われ、日本(世界ランキング3位)は決勝でブラジル(同)を55-43で破り、優勝した。大会はドイツ(同9位)を加えた3カ国対抗戦で、日本は総当たり戦3回ずつの予選リーグから7戦全勝でタイトルを手にした。

「2024ジャパンパラ競技大会」で優勝し、金メダルを手に笑顔を見せる車いすラグビー日本代表チーム (撮影: 星野恭子)

日本は序盤から好守備で相手にプレッシャーをかけターンオーバーを誘ってボールを奪うなど、トライを重ねてリードを広げた。選手交代で多くのラインナップも試しながら、最後まで主導権を握りつづけた。

日本はすでにパリパラリンピック出場を決めていて、2016年リオ、2021年の東京大会で2大会連続の銅メダルを獲得し、パリでは初の金メダル獲得も視野に強化を進めている。今大会は日本代表強化指定選手から国際経験の浅い若手選手も多数起用し、ベテラン勢と融合させた布陣で臨み、貴重な強化の機会となった。

クラス1.0のローポインターながら、スピーディーなチェアワークとアグレッシブさが持ち味の新星、草場龍治選手(左/三建設備工業)と、後方から声をかけるベテラン、池崎大輔選手(三菱商事) (撮影: 星野恭子)

リオ大会から2大会連続メダリストで、今大会は若きエースとして存在感を放った、クラス3.5の橋本勝也選手(日興アセットマネジメント)は、「今後の日本を僕が引っ張っていかねばならないと思っている。若手で臨んだ今回はコート上でどれだけリーダーシップをとれるかを意識した。優勝できてほっとしていると同時に、まだ海外選手のリーチングのうまさへの対応などの課題があるので、次の合宿で突き詰めていきたい。まずはパリの代表メンバーに選ばれて、金メダルを獲るためのキープレーヤーとなれるようにトレーニングを積みたい」とさらなる成長を誓っていた。

若き新エースとして、攻守にわたって勝利に貢献した橋本勝也選手(左) (撮影: 星野恭子)

昨年8月にケビン・オアー氏の後任として就任した岸光太郎ヘッドコーチは、「若手を使って全体的な底上げを目指したかった部分はできたが、今後も課題を克服しつつ、完成度を上げていきたい。チームディフェンスはまとまってきたが、より激しいプレッシャーがかかる世界ランキング上位国の中で同じことがキープできるか。個人のスキルアップに加え、全員が一致した戦術を確認し成し遂げる、チームとして戦う力が課題になる」と大会を総括。金メダルを目指すパリパラリンピックに向けて、「今回は若手中心のチームだったが、いろいろな経験をしたと思うので、ベテランを脅かす存在になり、いい意味での競争がチーム内に生まれると思う。(パリまでの)残りの期間に切磋琢磨していいチームに仕上げていきたい」と意気込みを示した。

長いリーチを武器に攻撃面での活躍も大いに期待されるホープ、白川楓也選手(中央/テスホールディングス) (撮影: 星野恭子)


■車いすバスケットボール
パリパラ出場目指した日本代表、女子は世界最終予選へ、男子は出場逃す

パリパラリンピックの予選も兼ね、1月13日から20日までタイ・バンコクで開かれていた車いすバスケットボールのアジア・オセアニア選手権で、女子日本代表は20日の決勝で中国に35-54で敗れ、今大会優勝チームに与えられる出場権を獲得できなかった。

この結果により、日本は4月に大阪で行われる世界最終予選に回ることになり、8チーム中4位以内に入ればパリ出場が決まる。

女子代表の土田真由美選手(シグマクシス)はパリ出場権がかかる最終予選に向け、「最後のチャンスをいただけるので、自分たちがやってきたことは間違いではなかったと思えるように、1日1日を大切にして、4月に向けて頑張りたい。感謝の気持ちを忘れず、結果で恩返しできるように、パリの切符を必ず勝ち取りたい」と意気込みを語った。

また、男子日本代表は19日の準決勝でイランに48-63で敗れ、パリパラリンピック出場を逃した。準優勝チームに与えられる世界最終予選への出場権も得られなかった。最終的に、イランが優勝し、パリへの切符も手にした。

日本は2021年の東京パラリンピックで史上初の銀メダルを獲得したが、2022年のアジア・オセアニア選手権をチームにコロナ陽性者が出たことで途中棄権し、2023年の世界選手権に出場できず、強豪たちとの貴重な対戦機会を持てなかった。一方、イランは同世界選手権でアジア最高の3位に食い込むなど、着実に進めていた強化が実った形だ。

男子代表の村上直広選手(BNPパリバ)は、「パリの切符を持って帰れず、申し訳ない気持ちでいっぱい。東京パラがそうだったように、もう1回チャレンジャーとして1戦1戦勝っていくプロセスを意識していくことが大切だと思う。当たり負けしないフィジカルやシュート力を強化できるよう、これからの4年間、また頑張りたい」と前を向いた。

同じく赤石竜我選手(コロプラ)は、「スタッフも含め、僕らはチームとして最大限の準備をしてきたのは胸を張って言える。1戦ごとにいい準備をして、準決勝のイラン戦にも臨めたと思っているが、イランは東京パラ後の3年間で、間違いなく強いチームになっていて、日本の成長スピードを上回るスピードだったと思う。そこに順応しきれなかったことが大きな敗因」と振り返り、「もっと実力をつけ、プレーで影響を与えられる選手になれるよう、1から見つめなおしたい」とさらなる成長を誓った。

(文:星野恭子)