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星野恭子のパラスポーツ・ピックアップ」(81) 5.2~5.7

国内外のパラリンピック競技の話題を独自にセレクトした「パラスポーツ・ピックアップ」シリーズ。今号では大型連休中に行われた国内外の大きな大会の結果リポートを中心に、10日から韓国・ソウルで開幕する視覚障がい者スポーツの国際総合競技大会「IBSAワールドゲームズ」の情報もお届けします。

 

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■車いすバスケットボール

・4~6日: 「内閣総理大臣杯争奪 第43回日本車椅子バスケットボール選手権大会」が東京体育館(東京・渋谷区)で開催され、宮城MAXが埼玉ライオンズを64-19で下し、史上初の7連覇を達成した。宮城のエース、藤本怜央が10大会連続11度目の得点王に輝き、チームメイトの豊島英がMVPに選ばれた。3位決定戦は、千葉ホークスがワールドBBCを54―45で制した。

 

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【写真:7連覇を達成した宮城MAXのエース藤本怜央選手(中央白)と、MVPの豊島英選手(右手前)=2015年5月6日/東京体育館(東京・渋谷区)】

 

王者MAXは強かった。大黒柱の藤本は昨年秋からドイツのハンブルグSVでプレイし、今大会のために帰国し、チームに合流できたのは大会の4日前。フィジカル面や古巣とはいえコンビネーションが心配されたが、そんな不安を吹き飛ばす活躍だった。持ち前のシュート力やアグレッシブさに磨きがかかり、20kgの減量もあり、動きにはキレが増していた。

 

「ドイツ帰国後から時間がなく、不安はあったが、力強いバスケットを見せることができたと思うし、(宮城MAXの)チームとしての成長の手応えも感じることができた、非常にいい大会だった」と藤本は充実感にあふれた表情で大会を振り返った。

 

藤本も指摘したように、彼一人ではないところがMAXの強さであり、他を圧倒していた。「怜央がいなくなって弱くなったと言われないよう、残ったメンバーがシュート力アップなど懸命に努力してきた」という中澤大輔キャプテンの言葉通り、堅いディフェンスから速攻を操出す切り替えの速さとシュートを決めきる決定力は、岩佐義明ヘッドコーチ(HC)が目指す、「全員バスケ」そのものだった。

 

一方、準決勝戦を逆転で制し、初優勝を目指した埼玉ライオンズの水本栄喜HCは、「若いチームなので、決勝のコートに立てたことはよかった。選手にも自信になっただろう。まだ実力差があるので、1年間修正して、来年、再挑戦したい」と振り返った。王者の一人勝ちでなく、追いかけ、追い詰め、追い越すチームがいてこそ、日本の車いすバスケット全体の底上げになる。他チームの一層の奮起を期待したい。

 

なお、今大会は、各地区予選を勝ち抜いた15チームに、日本選抜車椅子バスケットボール選手権大会優勝チームを加えた16チームが出場し、日本一を競う大会。今年は16チームが4チームずつ4グループに分かれ、予選リーグを戦い、各グループ1位が準決勝戦に進む形式で行われた。

 

<最終結果>

優勝: 宮城MAX/準優勝: 埼玉ライオンズ/3位: 千葉ホークス/4位: ワールドBBC

<個人賞>

・得点王: 藤本怜央 (4.5/宮城MAX)

・MVP: 豊島英 (2.0/宮城MAX)

・スリーポイント賞: 宮島徹也4.5 (4.5/富山県WBC)

・ベスト5: 佐藤聡 (1.0/宮城MAX)

永田裕幸 (2.0/埼玉ライオンズ)

竹内厚志 (3.0/ワールドBBC)

土子大輔 (4.0/千葉ホークス)

藤本怜央 (4.5/宮城MAX)

 

 (⇒数字は、障害の程度による各選手の持ち点。数字の大きいほうが軽度となる。試合中、コート上の5人の合計が14点以内という制限がある。)

 

◎今年10月には、来年のリオデジャネイロ・パラリンピック出場権をかけた重要な大会、「2015IWBF アジアオセアニアチャンピオンシップ千葉」が千葉ポートアリーナでの開催が決まっている。男女日本代表は近日、発表される予定だ。

 

■陸上競技

・2日: 国際パラリンピック委員会(IPC)公認の「新日本製薬大分パラ陸上」が大分銀行ドーム(大分市)で行われ、女子砲丸投F46(上肢切断など)で加藤由希子(仙台大学)が12m24の世界新記録を樹立した。また、11個の日本新記録が誕生した。

 

同大会は、2006年より大分市内で開催され、11年大会を最後に休止されていた「大分陸上」を前身とする大会。パラリンピックなど国際大会を目指す日本の選手にとって、国内でIPC公認記録が取れる貴重なチャンスにもなる。

 

大会の全記録は、「大会公式サイト・リザルトページ」で公開中されている。

http://oitaathletics.com/2015record.html

 

■アイススレッジホッケー

・3日: 米国ニューヨーク州のバッファローで先月26日から開催されていた「2015アイススレッジホッケー世界選手権Aプール」は決勝戦でソチ冬季パラリンピック金メダルの地元、アメリカが前回覇者のカナダを3―0で下し、2012年大会以来、2大会ぶりの優勝を手にした。3位決定戦は、ロシアがノルウェーを2-1で下した。

 

日本は順位決定戦でチェコと対戦したが、1―5で敗れ、8チーム中の8位に終わった。この結果、日本はBプールへ降格が決まった。2010年バンクーバー・パラリンピックで銀メダル獲得後、14年ソチ大会出場を逃し、18年ピョンチャン大会でパラリンピック復帰を目指す日本代表にとって、厳しい現実を突きつけられた大会となった。

 

<最終順位>

優勝: アメリカ/2位: カナダ/3位: ロシア/4位: ノルウェー/5位: イタリア/6位: ドイツ/7位: チェコ/8位: 日本

 

■ブラインドサッカー

・7日: 10日に韓国・ソウルで開幕する視覚障がい者スポーツの総合大会「ソウル2015IBSAワールドゲームズ」(⇒註)に出場する、ブラインドサッカーとロービジョン(弱視)フットサル日本代表の壮行会が都内で行われた。

 

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【写真:「ソウル2015IBSAワールドゲームズ」に出場する、ブラインドサッカー、ロービジョンフットサル日本代表チームとスタッフら=2015年5月7日/MIFA Football Park(東京都江東区)】

 

 パラリンピック正式競技のブラインドサッカーは9月に東京でリオデジャネイロ・パラリンピックのアジア予選が行われることが決定している。パラリンピック初出場を目指す日本にとって、アジアのライバル中国と韓国が出場するワールドゲームズは前哨戦となる。落合啓士主将(37)は「勝利という結果で自信につなげ、9月のリオ・パラリンピック予選を最高の形で迎えたい」と決意表明した。

 

 魚住稿監督は、6位入賞した昨秋の世界選手権を踏まえ、「今大会ではさらに進化し、得点力がよりアップした新生日本代表でお見せしたい。9月のパラリンピック予選で皆さんの期待に応えられるステップ大会にしたい」と意気込んだ。

 

一方、ロービジョンフットサルはパラリンピック競技ではないため、ワールドゲームズは数少ない国際大会の機会となる。日本は2011年、13年大会に出場しているが、いずれも大敗を喫しており、今大会では悲願の1勝を目指す。岩田朋之キャプテンは、「初勝利という結果が、ロービジョンフットサルの新たな歴史をつくることになり、それが未来につながると信じている」と話した。

 

13年秋から指揮を執る斎藤友規監督は、「守備を重視して培ってきたチーム力を十分に発揮し、まずは一勝を目標にがんばりたい」と力を込めた。

 

なお、全9カ国(日本、中国、韓国、ジョージア、英国、ロシア、アルゼンチン、スペイン、トルコ)がエントリーしているブラインドサッカーは2組に分かれた予選リーグを経て、順位決定戦となる。グループ1の日本は開幕戦(11日)で、最大のライバル、中国と対戦する。ロービジョンフットサルは5チーム(日本、韓国、イタリア、スペイン、ウクライナ)で総当たり戦を行った後、上位国が3位決定戦、決勝戦を行う。日本は11日にイタリアと対戦する。

 

⇒「ソウル2015IBSAワールドゲームズ」: 視覚障がい者のスポーツを統括する国際ブラインドスポーツ連盟(IBSA)が主催する国際総合競技大会で、第6回となるソウル大会は5月10日~17日に韓国・ソウルで行われる。9競技(陸上競技、チェス、サッカーB1全盲/B2/B3弱視、ゴールボール、柔道、パワーリフティング、ショーダウン、水泳、テンピンボウリング)に、60カ国約6000選手の参加が見込まれている。日本は陸上競技、サッカーB1、B2/B3、ゴールボール、柔道、パワーリフティング、テンピンボウリングの6競技に、選手82名+ガイド7名がエントリーしている(日本パラリンピック委員会発表資料より)。

 

(文・写真: 星野恭子)