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「週刊Jリーグ通信」 第8節/第9節「日本人ストライカー花盛り」

 J1のファーストステージは、4月29日(水)に第8節が、そして中2日の5月2日(土)に第9節が開催された。

 

 そのなかで目立つのが日本人ストライカーたちの元気さだ。

 

 第9節終了時の得点ランキングを見ると、宇佐美貴史(G大阪)が9点で首位を走り、大久保嘉人(川崎)と豊田陽平(鳥栖)が7点、そして武藤嘉紀(F東京)が6点と、上位4人までを日本人選手が占めているだけでなく、猛烈な勢いで得点を取っているのが目立つ。

 

 9節はシーズン全34試合の4分の1強といったところ。仮に4倍してみると、宇佐美は36点、大久保と豊田は28点、そして武藤も24点になってしまう(そんなに計算どおりにいくわけがないが)。

 

 Jリーグがスタートして昨年まで22シーズン、その間に日本人の得点王は延べ10人。3人が2回このタイトルを獲得しているから、わずか7人ということになる。

 

 35試合を終わった時点で得点ランキングトップが42点(クリスティアノロナウド=レアル・マドリード)、2位が40点(メッシ=バルセロナ)という別世界のような例もあるが、1シーズンに34~38試合程度で行われている世界中のリーグ戦で、得点王となるのはほとんどが20点台だ。1試合あたりの得点は0.6~0.7点程度にすぎない。

 

 現代のサッカーでは、「2試合に1点のペースでストライカーとしては合格」と言われている。

 

 Jリーグ(J1)で得点数が試合数(その選手の出場試合数ではなく、1クラブあたりのシーズンの試合数)を上回ったのは、1998年の中山雅史(磐田=34試合で36得点)ただひとり。「シーズン20ゴール」は、ストライカーたちにとって大きな指標なのだ。

 

 その「指標」に達した日本人ストライカーは、1993年から2014年までの22シーズンで延べ22人にすぎない。三浦知良(カズ)、武田修宏(ともにV川崎)、福田正博(浦和)、中山雅史の4人が2シーズンにわたって「オーバー20」を叩き出しているから、人数としてはわずか18人ということになる。

 

 Jリーグが始まって3シーズン目の1995年に初めての日本人得点王(福田)が誕生し、日本人の「オーバー20」も4人を数えた。しかしこのシーズンは14クラブで2回総当たりを2ステージ戦い、シーズンの試合数は52にもなっていた。Jリーグ22シーズンのなかでも飛び抜けて試合数が多い年だった。この年に限っては、「指標」を30得点にしなければならないかもしれない。

 

 さて、Jリーグの歴代得点王には、豪華な顔ぶれが並んでいる。

 

 ディアス(アルゼンチン代表)、エムボマ(カメルーン代表)、ワシントン(ブラジル代表)、ケネディ(オーストラリア代表)…。

 

 長い間、日本人ストライカーたちはそうした「外国人エース」たちの陰の存在だった。彼らをおしのけるようにカズ、福田正博、中山雅史、高原直泰らが脚光を浴びたシーズンもあったが、21世紀にはいると外国人ストライカーの圧倒的な活躍が目立ち、日本人ストライカーは「脇役」に甘んじざるをえなかった。

 

 それをひっくり返したのが、前田遼一(磐田)の2年連続得点王(2009年、2010年)だった。2012年には佐藤寿人(広島)が追いすがる豊田陽平(鳥栖=19点)をおさえ、22点で得点王となった。そして2013年、日本人ストライカー大活躍の年がくる。

 

 大久保嘉人(川崎)が26点という7シーズンぶりの高得点で得点王となったのだが、その大久保に川又堅碁(新潟、現在名古屋)が猛烈な競り合いを見せ23点をマークして2位、3位柿谷曜一朗(C大阪、現在バーゼル)21点、4位豊田陽平(鳥栖)20点と続きき、なんと得点ランキングの上位8人を日本人が占めたのだ。

 

 そして今季は、その再現、いや、それ以上の日本人ストライカーの「暴れん坊」ぶりが発揮されている。

 

 何よりすごいのは、彼らが「得点数」が多いだけでなく、「得点試合数」が多く、それがチームに大きく貢献していることだ。

 

 G大阪の宇佐美貴史(9得点)は、第9節こそ浦和(なかでもGK西川周作)の堅守に得点を阻まれたが、9試合のうち7試合で得点を記録し、第3節から8節まで6試合連続得点。チームを6連勝に導いた。

 

 7得点で宇佐美を追う川崎の大久保嘉人と鳥栖の豊田陽平はともに6試合で得点を記録。3年連続得点王を目指す大久保は多彩な得点能力を見せているが、豊田は圧倒的なヘディングのパワーで対戦チームを恐れさせている。

 

 そしてF東京の武藤嘉紀(6得点)も5試合で得点。F東京の好調(6勝2分け1敗で2位)を牽引している。

 

 第9節の注目カードのひとつ、F東京×川崎(調布・味の素スタジアム)では、前半に大久保が見事なヘディングで先制、終盤に同点としたF東京は、残り3分にFKを受けた武藤が豪快なヘディングシュートを叩き込み、2-1で逆転勝ち。「多摩川クラシコ」(多摩川をはさんだライバル同士の対戦)を見に集まった4万2604人もの大観衆を熱狂させた。

 

 この4人のほかにも、工藤壮人(柏、現在4得点)、永井謙佑(名古屋、4得点)、小川慶治朗(神戸、4得点)、川又堅碁(名古屋、3得点)、金崎夢生(鹿島、3得点)、伊藤翔(横浜FM、3得点)、大前元気(清水、3得点)など、各クラブで個性的な日本人ストライカーたちが活躍している今季。ぜひいちど、スタジアムで彼らの「生ゴール」を堪能してほしいと思う。

 

〈写真:Jリーグ公式サイトより〉