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「星野恭子のパラスポーツ・ピックアップ」(480) 車いすラグビー日本選手権、BLITZが8年ぶり9度目の優勝! 競技の広がりも実感

予選ラウンドなどを勝ち上がった全8チームが参加した「第25回車いすラグビー日本選手権」が1月12日から14日にかけて千葉ポートアリーナ(千葉市)で行われ、決勝ではBLITZ(東京)がTOHOKU STORMERS(福島・東北)を55-46で破り、第17回大会(2015年)以来9度目となる優勝を果たしました。3位決定戦では、昨年優勝のFreedom(高知)がFukuoka DANDELION(福岡)を54-47で下しました。

BLITZは今季から加入した池崎大輔選手(3.0クラス)をはじめ、ベテラン島川慎一選手(3.0)など、日本代表経験者を多数擁し、大会前から本命視されていました。日本代表でも活躍する小川仁士キャプテンが「今大会のテーマは勝ち切ること」と言っていたように、予選ラウンドを3戦全勝で勝ち上がり、準決勝ではDANDELIONを53-38で下すなど安定した強さを発揮し、8年ぶりの栄冠をつかみとりました。

8年ぶり9度目の優勝を果たしたBLITZの小川仁士キャプテン(左)と、今季から新加入した池崎大輔選手(左から2人目) (撮影:吉村もと)

■若手や女性選手も増加中

なお、今大会は若手選手や女性選手が増え、存在感を示すなど車いすラグビーの国内での広がりを感じられる大会でもありました。例えば、AXE(埼玉)の島崎瑛漣(あれん)選手は中学2年生の14歳で、今大会が公式戦デビュー戦でしたが、初戦で初得点もマークし、「最初は緊張したが、いいプレーができたと思います」と笑顔を見せました。

味方からパスをもらって、トライを決めるAXEの島崎瑛漣選手(中央) (撮影:吉村もと)

先天性の脳性まひにより手足にまひがあり、幼い頃から車いすを使っているという島崎選手は小学校4年のとき、体験会に参加して車いすラグビーに出会い、「車いすでぶつかれるところが楽しいと思った」ことから競技を始めたそうです。

東京パラリンピック代表の橋本勝也選手を目標に、「きついけど、筋トレも頑張っています」と話し、「4年後のロス大会を目指しています」と力強く目標を話してくれました。

今大会には島崎選手のほかにも、競技を始めたばかりの10代の選手たちが、それぞれの目標に向けて懸命なパフォーマンスを見せてくれました。

また、車いすラグビーでは選手それぞれに障害の程度に応じた「持ち点(0.5~3.5)」が付けられ、コート上4選手の持ち点合計を8.0点以内で編成するという大きな特徴があります。さらに男女混合競技であり、女性選手1名につき0.5点を持ち点合計に追加することができます。つまり、女性1人が入ると、持ち点合計8.5点でチームを編成できるわけです。

今大会には女性選手が5人、エントリーしていました。その一人、Freedomの森澤知央選手にお話を聞いてみました。

味方のからのパスに手を伸ばす、Freedomの森澤知央選手(右) (撮影:吉村もと)

「久しぶりの試合ですごく緊張していました。日本選手権は2回目で、1年間やってきたことをちゃんと出したいという思いが強かったので」と話し、昨年の自身と比べて、「簡単に止められていた選手もかわせるようになったり、できるようになったことが増えていて、成長を感じました」と充実の表情で振り返りました。

先天的な病のため、幼い頃から車いす生活を送る森澤選手ですが、ラグビーを始めたきっかけは「コロナ禍」だったと言います。もともと身体を動かすことや旅行好きでしたが、コロナ禍で職場と自宅の往復だけの毎日を変えたいと思い、地元の障害者スポーツセンターに相談したところ、紹介されたのが車いすラグビーだったそうです。

森澤さんが26歳のときで、ちょうど東京パラ開幕直前の2021年8月で、勧められるままに大会期間中にテレビで車いすラグビーをテレビ観戦。激しいプレーの中、当時、日本代表で唯一の女性選手だった倉橋香衣選手のプレーに刺激されました。「男女混合とは知らなかった。やってみたい」と思って体験してみると、すぐに地元のチーム、Freedomに誘われ、9月初旬から練習開始。「どんどん話が進んで、10月には(昨年の)日本選手権の予選に出場していました。最初はプレーの激しさに圧倒され、怖さもありましたが、楽しさに変るのはあっという間。1カ月くらいで、自分の人生がすごく濃くなりました」と振り返ります。

森澤選手は車いすラグビーの魅力を聞かれ、「障害が重くてもできること」を挙げました。「物心ついたときから車いす生活で、スポーツとは無縁だと思って過ごしてきましたが、自分でもこんなにできるんだと思ったり、自分以上に障害の重い人もいます。素晴らしいスポーツだなと思います。女性選手が増えるのは嬉しいし、もっと広がれば」と、力を込めました。

■車いすラグビー日本代表戦、間もなく千葉で開幕!

若手や女性選手が増えるなど競技普及が進んでいるのは、間違いなく日本代表チームの活躍が大きいでしょう。パラリンピックで2大会連続の銅メダルを獲得し、すでに今年のパリ大会への出場権も手にして、「次こそ、金メダル!」と意気込んでいます。

その日本代表チーム(世界ランキング3位)を間近に声援できる大会、「2024ジャパンパラ車いすラグビー競技大会」がまもなく開幕します。ドイツ(同9位)、ブラジル(同11位)の2チームが招待され、1月25日(木)から28日(日)にかけて千葉ポートアリーナで開かれます。

総当たり戦3回の予選を経て、最終日に順位決定戦が行われます。入場は無料で、期間中体験会なども行われます。迫力あるプレーをぜひ、会場で応援ください。

▼2024ジャパンパラ車いすラグビー競技大会 特設サイト
https://www.parasports.or.jp/japanpara/wheelchair-rugby/

2024ジャパンパラ車いすラグビー競技大会ポスター(提供:日本パラスポーツ協会)

(文:星野恭子)