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「星野恭子のパラスポーツ・ピックアップ」(479) 車いすバスケ男女日本代表、パリパラ切符獲得へ大一番。「勝って明るいニュースを届けたい!」

2024年が始まりました。8月に開幕するパリパラリンピックなど、今年もパラスポーツの情報をさまざまお伝えしていきます。どうぞよろしくお願いいたします。

さて、新年早々ですが、パリパラ出場権をかけて、車いすバスケットボールの男女日本代表が1月12日から20日までタイ・バンコクで開催されるアジアオセアニア選手権(AOC)に臨みます。男子は全11チームが、女子は9チームが出場しますが、パリへの切符をつかめるのは20日の決勝戦で男女それぞれ優勝したチームだけという厳しい戦いです。

強化合宿で円陣を組む男子代表チーム

日本男子はプールAに入り、まずオーストラリア、中国、イラン、韓国、タイの5カ国と総当たり戦を戦って上位を目指し、プールB(アフガニスタン、サウジアラビア、ニュージーランド、フィリピン、UAE(アラブ首長国連邦)の総当たり戦上位2カ国を加えた8チームが進める決勝トーナメントを勝ち抜かなければなりません。

日本女子はプールAでオーストラリア、中国との総当たり戦2回を行い、順位を決め、プールB(アジアオセアニアゾーン選抜、カンボジア、インド、ラオス、フィリピン、タイ)による総当たり戦1回での上位1チームを加えた4チームが決勝トーナメント準決勝に進出し、優勝を目指します。

能登半島地震など辛く悲しいニュースがつづく今だからこそ、男女日本代表ともに、「優勝して『パリへの切符獲得』という明るいニュースを届けたい」と意気込んでいます。

なお、大会は全試合、国際車いすバスケット連盟(IWBF)公式Youtubeチャンネルでライブ配信されるそうです。男女日本代表戦のスケジュールは下記にリストしましたので、ぜひご視聴、ご声援ください。

▼Youtube配信:国際車いすバスケット連盟(IWBF)公式チャンネル
https://www.youtube.com/@iwbforg

この決戦を前にした1月6日、味の素ナショナルトレーニングセンター・イーストで行われた男女日本代表の強化合宿がメディアに公開されました。

男子は銀メダルを獲得した東京パラのメンバーから3名が入れ替わった12名の新代表がゲーム形式を中心に攻守にわたって戦術を確認するなど、決戦に向けて調整していました。

強化合宿で戦術を熱心に確認した日本代表

京谷和幸ヘッドコーチ(HC)は、東京パラでもチームのテーマとしていた「ディフェンスで世界に勝つ」を継続しながら、得点力強化も進めてきたと言います。12月の合宿では外部のシューティングコーチに依頼してシューティングクリニックも実施。「いい効果がでている」と言い、以前から武器とする切り替えの速いトランジションオフェンスとともに、ハーフコートオフェンスも強化。「いいバランスをとりながら起点をつくって(相手守備を)崩し、アウトサイドシュートを確実に決めていくという狙いでやっている。チームとして今できることは、パリへの切符を掴んだという明るいニュースを日本にお届けすること。最後に勝って、パリの出場権を獲得して帰ってきたい」と意気込みました。

川原凛キャプテン(ローソン)は、「優勝しか見えていない。チームの強みは粘り強さ。『ディフェンスで世界に勝つ』というのは自分たちが勝つというより、相手が心折れてギブアップするイメージ。最後まで走り続けて根気で勝つことを出せれば。ディフェンスのレベルも確実に上がっている」と現在のチーム状態と手応えを話しました。

東京パラの大会MVP、鳥海連志選手(プロ選手)はチームの司令塔、さらには得点力も期待されています。シューティングクリニック以来、「シュートの確率はいいので、その感覚は大事にしたい」と言い、「チームの軸としてプレーすることは自覚している。たぶん僕が一番長い時間、出続ける選手なので、僕が試合のトーンを決めると思うし、ゲームをコントロールして勝ちにいく道筋をつくっていくことが役割だと思っている」。2024年への意気込みを聞かれ、「まずはAOCで優勝しないとパリにも行けないし、2大会連続メダルをとる場にも立てない。勝負に勝ち切る年にしたい」と目標を語りました。

男子のエース、鳥海連志選手

ドイツリーグで活躍するベテラン、藤本怜央選手(SUS)は東京パラ以来の日本代表選出となりますが、「HCからは40歳になってスタメンで起用される場面もあるかもと言われている。若い選手にとって保険として使われるような選手になりたいし、チームを鼓舞するのは僕の仕事でもある。チームをもっと高めていくという要求を、しっかり努められるように頑張りたい」。パリ大会に出場すればチーム最多、6大会連続出場となりますが、「回数ではない。もう1度、メダルを獲るというチームの中に僕がいたい」と力を込めました。

■女子は、「Frealess(恐れない)」を合言葉に

日本女子は東京パラのメンバーから5名が抜け、若手4名が加入した計11人でAOCに臨みます。岩野博HCは「今までは個人スキルを挙げることを中心にしてきたが、昨年12月の合宿からチーム力をあげて仕上げていて、チームビルディングはプラン通り順調に進んでいる」と話し、AOCでは最大のライバルとみる中国の攻撃力対策として、「ディフェンスのバリエーションを増やした。攻撃のセットプレーにも新しい形を取り入れ、(1つが)崩れたあとにもう1回セットできたり、タフショットをできるだけ減らし、3ポイントも含めた得点力を上げる取り組みをしている。中国の得点を50点台に抑え、自分たちは60点を取っていければ勝ちが見えてくる」と展望。新メンバーについては、「若い選手たちなので思い切ったプレーをしてほしい。世界の経験値を上げて、(パリ大会の)次の大会も見据えたプレイヤーになってくれれば」と期待を寄せていました。

新たに加えたディフェンスの形やセットオフェンスを強化合宿で確認しあった女子日本代表

北田千尋キャプテン(LINEヤフー)は「12月の合宿から一体感も生まれ、チームの雰囲気がすごく良くなってきている。チームの強みは皆が良く走り、誰がでても40分間変わらない戦術、変わらない強度で戦えること」と話し、また、チームスローガンである、「Fearless~地獄の40分間のその先に~」について、「Fearlessには“怖れない”や“勇敢な”という意味があり、どんな相手にも怖れることなく自分たちのバスケットをやろうという思いが込められている。さらに、相手にとって“地獄”となるくらいに40分間走り続けて、“その先に”あるパリへの出場権をつかみ取る。どんな時でもこのスローガンを胸に秘め、心を一つに戦います」と力強く宣言。「日本では今、大変な状況の方がたくさんいるなかで、自分たちは日の丸を胸に海外で試合をさせていただく。今年の夏は健常の男女代表、車いすの男女代表の全カテゴリーでオリンピック・パラリンピックに出場し、『バスケで日本を元気に』を目的に戦いたい。がんばってきます」と意気込みました。

東京パラ代表で、現チームではリードガードとして司令塔を担う柳本あまね選手(コロプラ)は、「自分が言った通りに皆が動いてくれて、それが得点につながる大事なポジション。ビデオで(相手)ディフェンスの動きなどを確認したり、そもそもすべて私がボールを触ったら何かが起こるので、自分のシュート力向上も練習してきている」と自信を見せました。

中国対策でもある新しいディフェンスについては、「経験としてはまだ浅いが、やる切って自分たちのものにすることがカギと思っている。今回の優勝で(パリ出場を)決めるということしか考えていない。ここで決めて、パリへの道をつなげていきたい。パリでも皆さんに輝くものをお見せできるように頑張りたい」と語りました。

新司令塔として活躍が期待される柳本あまね選手

ベテランの網本麻里選手(ビームス)は、「ディフェンスの引き出しを増やせたのはAOCで楽しみにしているところ」と話し、新加入の若手の一人で169cmとチームでは長身の江口侑里選手(Sky)は、「今は右45度のシュートを強みとして挙げている。そのシュートはしっかり決めたいし、高さがある分、リバウンドや私にしかできないプレーをお見せしたい」と大一番への意気込みを語りました。

パリ出場権については4月に、男子はフランスで、女子は大阪市で世界最終予選大会も予定されています。しかし、日本代表は男女とも、このAOCで決めると強い覚悟で臨んでいます。「パリ切符獲得!」という明るいニュースを期待して、車いすバス男女日本代表をぜひ、応援ください!

【2024アジアオセアニア選手権 日本戦スケジュール】 (開始時間は日本時間)
<男子>
1/13  19:30 vs オーストラリア
 14  15:00  vs 中国
 15  16:30  vs イラン
 16  20:30  vs タイ
 17  18:30  vs 韓国

以下の試合時間は戦績しだいで決定。
1/18: 準々決勝/19: 準決勝/20: 決勝、3位決定戦

<女子>
1/14  17:00  vs 中国
 15  14:30  vs オーストラリア
 17  16:30  vs 中国
 18  15:00  vs オーストラリア

以下の試合時間は戦績しだいで決定。
1/19: 準決勝/20: 決勝、3位決定戦

■参考
国際車いすバスケットボール連盟(IWBF)
https://iwbf.org/event/2024-iwbf-asia-oceania-championships/

日本車いすバスケットボール連盟(JWBF)
https://jwbf.gr.jp

(文・写真:星野恭子)