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「星野恭子のパラスポーツ・ピックアップ」(79) 4.19~4.23

国内外のパラリンピック競技の話題を独自にセレクトした「パラスポーツ・ピックアップ」シリーズ。今号はシーズン終盤を迎えたマラソン大会の話題が国内外から集めています。また、日本サッカー協会の呼びかけで開かれた「第1回障がい者サッカー協議会」という画期的な会議の模様をリポート。まもなく開幕する「アイススレッジホッケー世界選手権」の大会情報も掲載。インターネットなどで観戦もできます!

 

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■陸上競技

・19日: 2万8千人がエントリーした国内最大級の市民マラソン大会、「第25回かすみがうらマラソン兼国際盲人マラソンかすみがうら大会」が茨城県土浦市で行われ、フルマラソン車いすの部は吉田竜太が1時間30分8秒の大会新記録で3連覇を達成、同視覚障害者B1(全盲)の部は米岡聡(伴走:藤田欣也、樋口裕介)が2時間50分39秒で初優勝を果たした。米岡は、「二人の名伴走のおかげで、最後まであきらめずに走れた結果。初優勝はうれしいが、(2時間)50分切りを目指していたので少し残念」と話し、さらなる飛躍を誓った。

 

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【フルマラソン男子視覚障害B1の部で優勝した米岡聡選手(中央)と伴走者の藤田欣也さん(左)と樋口裕介さん=茨城県土浦市川口運動公園陸上競技場(撮影:星野恭子)】

 

 視覚障害の部は3種目(フル、10マイル、5キロ)合わせて118人が出走、98人が完走した

▼各部門別成績リスト

【リンク先: http://www.lap.co.jp/race/kiroku/kasumi/index.html 】

 

同マラソンでは視覚障害ランナーの伴走者として毎年、多数のオリンピアンが参加している。昨年につづいて参加した、ロンドン五輪マラソン代表の藤原新さんは大会前夜祭で、「ふだんは『自分のために走る』毎日だが、去年、初めて伴走者として走り、『誰かのために走る』ことを経験。また新鮮な気持ちでマラソンと向き合うことができた。走ることで誰かの役に立てることはうれしい」と話した。

 

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【今大会のゲスト伴走者。左から、有森裕子さん、君原健二さん、宇佐美朗さん、森川嘉男さん、喜多秀喜さん、中山竹通さん、藤原新さん=2015年4月18日/茨城県土浦市内ホテル(撮影:星野恭子)】

 

また、車いすの部でランナーの後方をロードバイクで走り、不測の事態に備える「サポートライダー」として、パラサイクリングのパラリンピックメダリスト、藤田征樹選手(両下腿義足)が参加、車いすの部で優勝した吉田を伴走した。「パラアスリート(障害をもつ選手)の車いすランナーを、同じパラアスリートの僕がサポートする。面白いことだと思う」と話した。

 

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【藤田征樹選手は大会新で優勝した吉田竜太選手の伴走を担当。「吉田選手の走りは途中のタイムもよく、後ろから見ていてワクワクした」=茨城県土浦市川口運動公園陸上競技場(撮影:星野恭子)】

 

同じ日、長野県では2つの大会が行われた。1つは「第17回長野マラソン」(フルマラソン)で、視覚障害者の部に22人が出走し、19人が完走した。各クラス優勝者は下記の通り。

 

B1クラス: 男子:福原良英(伴走:山岡辰朗)  女子:水野麻子(伴走:藤原慎太郎)

B2クラス: 男子:小林丈二(伴走:澤原雄一)  女子:林かよみ(伴走:星野淳子)

B3クラス: 男子:塩川昭彦             女子:鈴木慶子

 

もう1つは「第11回長野車いすマラソン大会」(ハーフマラソン)で、63人が出場し、56人が完走した各クラス優勝者は以下の通り。

 

男子53/54クラス: 樋口政幸 44分55秒

同T52クラス: 上与那原寛和 57分20秒

女子T53/54クラス: 中山和美 53分45秒

 

・20日: 「第119回ボストンマラソン」が米国マサチューセッツ州で行われ、車いすの部女子で、土田和歌子が2位、男子は副島正純が3位に入った。優勝はそれぞれ、マルセル・フグ(スイス)、タチアナ・マクファーデン(アメリカ)だった。

 

・22日~23日: 26日に開催されるロンドンマラソンで実施される、「IPC(国際パラリンピック委員会)マラソン世界選手権」に出場する、日本代表選手団があいついで羽田空港から現地ロンドンへ向けて出発した。視覚障害の部女子代表のT12クラス(弱視)の2014年度世界ランキング1位(2時間59分21秒)の道下美里は、「やれるだけのことはやってきたので、レースでは勝負にこだわりたい。以前、1500メートル走で競った海外選手がエントリーしている。スピードではかなわなかったが、マラソンは経験が生きる競技。しっかり走りたい」と意気込んだ。

 

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【22日にロンドンに出発した、視覚障害の部代表第1陣。前列左から、羽立祐人選手、西島美保子選手、道下美里選手、安部直美選手、藤井由美子選手、松原衣里さん(伴走)、後列左から、大槻学さん(同)、溝渕学さん(同)、熊谷豊選手、堀内規生さん(同)、成田フサイさん(同)、橋本寛明さん(同)】

 

同男子代表の堀越信司は2012ロンドン・パラリンピックや2014アジアパラ競技大会のトラック種目の日本代表だが、マラソンでは初代表となる。「今年に入って約3000キロと、練習量はしっかりこなせた。自信にしてレースに臨みたい。トラック競技で競った海外の友人とマラソンで勝負できるのは楽しみ」と話した。

 

<視覚障害の部代表 全8名+伴走者8名>

男子: 岡村正広 「経験を生かして、今の力を発揮できれば」

堀越信司 「ペースを守りながら、攻めるときは攻めたい」

熊谷豊 「2時間30分前後を目指して、練習の成果を発揮したい」

羽立祐人(伴走:大槻学、石橋恭) 「初めての日の丸で少し緊張。調子は上向きなので、自己新を目指したい」

 

女子: 道下美里(同:樋口敬洋、堀内規生) 「自己ベストも更新できれば」

西島美保子(同:溝渕学) 「落ち着いてマイペースで走り、去年のリベンジをしたい」

藤井由美子(同:橋本寛明) 「悔いの残らない走りがしたい」

安部直美(同:成田フサイ、松原衣里) 「15年来となる2人の伴走者としっかり練習してきた。

3時間20分を切りたい」

 

<車いすの部代表 全8名>

・T54クラス

男子: 副島正純(ソシオSOEJIMA)/洞ノ上浩太(エイベックス)/山本浩之/久保恒造/西田宗城/吉田竜太

女子: 土田和歌子(八千代工業)

・T52クラス

男子: 上与那原寛和

 

■東京発

・22日: 歴史や予算規模、法人格の有無なども異なり、これまでバラバラに活動してきた障がい者サッカーの7団体が日本サッカー協会(JFA)の呼びかけで初めて一堂に会し、JFAハウス(東京・文京区)で開催された「第1回障がい者サッカー協議会」に臨んだ。

 

出席したのは、日本アンプティサッカー協会、日本ソーシャルフットボール協会、日本知的障がいサッカー協会、日本電動車椅子サッカー協会、日本脳性麻痺7人制サッカー協会、日本ブラインドサッカー協会、日本ろう者サッカー協会の各代表7名と、障害の有無に関係なく、より多くの人がサッカーを楽しむには「各団体が同じベクトルで歩むことが必要」という視点で同会議を主導する、JFAグラスルーツ推進部の松田薫二部長。

 

会議の冒頭では、JFAの大仁邦弥会長が、「スポーツを通したノーマライゼーションの実現を目指す」と挨拶した。今後は各団体の法人化のサポートを進めながら、来年4月に統括団体を創設することを目指して検討を重ねるほか、将来的な代表ユニフォームの統一や指導者や審判の研修会、団体間の交流などを目標としている。

 

最も歴史の浅い、日本ソーシャルフットボール協会の徳堂泰作副理事長は、「精神障害については疾患の種類も多く、偏見も多い。サッカーを通して正しい理解を広めていきたいし、一緒にプレイすることで選手が社会とつながっていくことを目指したい。この会議は歴史的な第一歩」と話した。また、日本ブラインドサッカー協会の松崎英吾事務局長は、「課題は多いが、10年後、30年後に、『障がい者サッカーと一緒に歩んでよかった』と言ってもらえるようにがんばりたい」と話した。

 

<まもなく開催の大会情報>

■アイススレッジホッケー

・26日~5月2日: 「バッファーロー2015アイススレッジホッケー世界選手権Aプール」

日本代表をはじめ、アメリカ、ロシアなど、世界トップ8が激突!

▼試合日程リスト (現地、米国ニューヨーク州時間。日本との時差は-13時間)

http://www.sledgejapan.org/news/346-buffalo-2015-ipc-a-pool.html

▼インターネット中継 (予選から決勝まで全試合を予定)

https://www.youtube.com/channel/UCi8n36NkW2uCQSFZNiYtuMQ

▼スカパー!TV生中継 (日本代表戦予選3試合+プレーオフ/準決/3位決定戦および決勝戦。ただし、5位以下決定戦は中継なし)。放送チャンネル

 BSスカパー!(BS241ch/CS585ch)

 

 (文・写真: 星野恭子)