世界で戦う日本のスポーツマンに足りないもの(玉木 正之)
スポーツマンは英語が必須! 体育の授業はすべて英語で!?
2012〜13年のフィギュアスケートの最後を飾る世界選手権シングルは、男子はパトリック・チャン、女子はキム・ヨナの優勝で幕を閉じた。
浅田真央はショートで6位と出遅れたもののフリーで巻き返して3位。来年のソチ冬季五輪へと期待をつなげた。
が、そんなこと以上に私が注目したのはキム・ヨナのインタヴューだった。彼女は、すべて英語で答えていたのだ。
ともすれば少々生意気なふて腐れたような態度を見せるキム・ヨナに批判的な声も多い(正直言って小生も好きではない)。
また、彼女のあまりの高得点に韓国企業のバックアップなど、疑惑の声もあがっている(猫宮黒埜・著『フィギュアスケート疑惑の高得点』東京図書出版)。
それはともかく、バンクーバー冬季五輪の前にカナダで生活して身に付けたという彼女の英語力に、(たとえ、それほど高度な英語の表現力ではないにしても)日本のスポーツマンやスポーツウーマン、さらに日本のスポーツ界は、大いに注目するべきだろう。
世界女王で五輪女王の彼女が、インターナショナルな言語を使いこなせば、彼女は将来、国際世界スケート連盟(ISU=International Skating Union)の幹部になることも十分に考えられる。
あるいは、国際オリンピック委員会(IOC=International Olympic Committee)の役員への道も開けるかもしれない。
そうなると、当然韓国スケート界にとって、何かと好都合な事態もあるだろう。
そのとき日本のスケート界(と日本のスポーツ・ジャーナリズム)は、「また日本に不利なルール変更が……」と言って嘆くのだろうか?
そんなことを考えたのは、同じ時期に日本の柔道界に不祥事が相次いだからでもあった。
女性五輪代表候補選手に対するパワハラやセクハラ、さらにコーチに与えられた選手強化費の不正流用疑惑……。
しかも日本は柔道発祥の国にもかかわらず、英語を流暢に話せる人がほとんど存在せず、国際柔道連盟(IJF=International Judo Federation)では、意見の主張できる(投票権のある)理事が一人も選ばれていない。
同じ時期、WBC(World Baseball Classic)も開かれ、日本はベスト4で3連覇を逃したが、WBCのルール作りや組織作りを、堂々と英語で討論し、意見を主張する野球人がいるかどうか……。
これからのスポーツマンはスポーツの能力と同時に英語の能力も磨くべきではないか
2月下旬に、「体罰問題」で「朝まで生テレビ」に出演した折、番組終了後に、杉並区立和田中学校の元校長だった藤原和博氏に、「学校での体育の授業というのは、本当に必要なんでしょうかねえ?」と話し合った。
私は、身体を鍛える授業からスポーツを楽しむ授業への変化を……と言ったところが、藤原氏から、「僕は、体育はすべて外国人教師によって、英語で行うべきだと思う」という答えが返ってきた。
大賛成である! 日本のスポーツ界の将来のためにも、スポーツを離れて生きた英語を使いこなすためにも、是非とも実現してほしいものだ。
【連合通信4月9日配信 + NLオリジナル】
写真提供:フォート・キシモト