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「星野恭子のパラスポーツ・ピックアップ」(469) アジアパラ大会、中国・杭州でまもなく開幕! 車いすテニスなどパリパラ出場枠がかかる競技も

連日熱戦が展開された中国・杭州でのアジア競技大会は10月8日、閉幕しましたが、そのパラスポーツ版「杭州2022アジアパラ競技大会」が同じ会場で22日から開幕します。4年に1度のアジア王者を決める大会で当初は昨年10月に開催予定でしたが、コロナ禍の影響で1年延期となったため、前回の2018年ジャカルタ大会から5年ぶりの開催となります。第4回となる今大会は28日まで、アジアから約40の国や地域が参加して22競技566種目にわたってアジアの頂点が競われます。また、一部競技ではパリパラリンピックの出場枠もかかる重要な大会です。

日本は20競技に総勢258名の選手と8名の競技パートナーという選手団で臨みます(10月12日時点)。注目の競技はまず、車いすテニスです。男女シングルスそれぞれで優勝した選手にはパリパラリンピックの出場枠が与えられます。日本からは男女計8選手が出場予定で、男子シングルス世界ランキング1位の小田凱人選手や同女子2位の上地結衣選手らがアジア王者とパリへの切符を目指します。

卓球もパリパラ出場枠がかかる競技で、男女各クラス(1~11)の優勝選手に出場枠が与えられます。男女19選手が出場予定で、例えば、今大会日本代表選手団の主将を務める男子クラス9の岩渕幸洋選手はリオ2016、東京2020に続き、3大会連続のパラリンピック出場を目指しています。

もう一つ、射撃でも各種目優勝選手の所属国・地域にパリパラ出場枠が与えられます。今年5月に行われたワールドカップで2位に入り、日本のパリパラ出場枠をつかんだ瀬賀亜希子選手など男女4選手がさらなる出場枠獲得に挑みます。

陸上競技や水泳といった個人競技ではパリパラの標準記録突破などそれぞれの記録や世界ランキングの向上を目指します。例えば、パワーリフティングはパリパラ出場要件の1指定大会であるドバイワールドカップ(2024年2月末~3月)日本代表の選考大会の一つとして、今大会が位置付けられています。自己記録を少しでも上げておきたいところです。

チーム競技では、パリパラ出場枠のかかる大一番を前に、アジアのライバルたちとの前哨戦となる競技があります。例えば、ゴールボール女子はパリ切符獲得の決戦の場となる11月のアジア・パシフィック選手権大会(11月9日~20日/中国・杭州)が目前です。また、車いすバスケットボール男女にとってもパリパラ出場枠をかけたアジア・オセアニアゾーン選手権大会が来年1月にタイで開催予定です。いずれのチームも東京パラリンピックから一部メンバーが入れ替わったチーム編成で、パリパラへ向けた決戦に向けていい弾みにしたいところです。

アジアパラ競技大会ではパラリンピック競技以外の競技も実施される点が特徴です。今大会でもパラリンピック競技19に対し、チェスや囲碁、ローンボウルズという3つの非パラリンピック競技が実施されます。日本からはローンボウルズに日本選手団男女各最年長となる71歳の児玉久雄選手と73歳の松本節子選手の2名が出場予定です。

ローンボウルズは芝生の上で行う屋外球技で、赤か青のボールを転がし、ジャック(目標球)に最も近寄せたほうに得点が入るというシンプルなルール。ボッチャに似ていますが、大きな違いはボールが偏心球であること。完全な球でなく重心が偏っているため、まっすぐには転がらず、カーブの具合や芝目、風を読むことなども好パフォーマンスには重要な要素だという奥深い競技です。

ところで、アジアパラ競技大会の歴史をご紹介すると、前身となる大会はフェスピック競技大会(旧極東・南太平洋身体障害者スポーツ大会:Far East and South Pacific Games Federation for the Disabled)で、これは日本における「パラリンピックの父」と言われる故・中村裕氏が提唱し、第1回大会は1975年、大分県で開催されています。当時は大会開催の目的として、この地域でのパラスポーツの振興や障害のある人のスポーツを通じた社会参加などが重視されていました。

フェスピック大会はその後、2~5年間隔の不定期に開催され、1989年の神戸大会を経て2006年の第9回クアラルンプール大会まで開催されています。しだいに極東・南太平洋地域以外からも加盟を希望する国はすべて受け入れるようになっていたこともあり、2010年からはアジアパラリンピック委員会が主催するアジアパラ競技大会として引き継がれることになり、今に至っています。

アジアパラ競技大会としては2010年中国・広州大会、2014年韓国インチョン大会、2018インドネシア・ジャカルタ大会とつづき、今大会が4大会目、中国では2回目の開催となります。ちなみに、前回ジャカルタ大会には日本から選手304名、競技パートナー12名が出場し、金メダル45を含む計198個のメダル(銀70、銅83)を獲得しています。また、次回、2026年大会は愛知・名古屋市での開催が決定しており、日本では初めての開催となります。

10月22日に開幕する第4回アジアパラ競技大会でも熱い戦いに期待です。どうぞ応援ください。

▼日本パラリンピック委員会(JPC) 杭州2022アジアパラ競技大会特設サイト
https://www.parasports.or.jp/paralympic/jpc/asianpara/hangzhou2022/index.html

(文: 星野恭子)