「星野恭子のパラスポーツ・ピックアップ」(77) 4.2~4.5
国内外のパラリンピック競技の話題を独自にセレクトした「パラスポーツ・ピックアップ」シリーズ。今号は、リオデジャネイロ・パラリンピック予選を控え、海外遠征で力試しに挑んだ2競技の結果などをリポート。
また、最近は、「マラソン日本記録更新で1億円!」など、2020年東京大会を見据えた対策がさまざま発表されていますが、パラスポーツ界でも画期的な計画が明らかになりました。エリート選手の指導者の待遇を見直した「専任コーチ」制度です。
この制度について、新コーナー『ピックアップ・トピック』(不定期)で取り上げてみました。
=============================
■ゴールボール
・2日~5日: 男子7カ国、女子12カ国が参加して、スウェーデンのマルモで「マルモ・レディ&メン・インターカップ」が開催され、日本女子チームが3位に入った。男子は7位だった。すべての最終結果は下記の通り。
<男子>
1位:トルコ/2位:ベルギー/3位:フィンランド/4位:ドイツ/5位:スウェーデン/6位:ハンガリー/7位:日本
<女子>
1位:アメリカ/2位:トルコ/3位:日本/4位:ロシア/5位:フィンランド/6位:ドイツ
/7位:スウェーデン/8位:イギリス/9位:ギリシャ/10位:デンマーク/11位:スペイン/12位:ベルギー
なお、5月には韓国で、リオデジャネイロ・パラリンピック出場権をかけた世界選手権が行われる。ロンドン・パラリンピックで金メダルを獲得した女子チームも、またパラリンピック初出場を目指す男子チームも、あと1カ月に迫った本選に向け、さらならレベルアップに期待したい。
■車椅子バスケットボール
・3日~4日: 日本男子代表は欧州の競合国との国際親善試合、「第11回イースタートーナメントinベルギー」に出場し、2勝2敗の3位となった。詳しい対戦成績は下記の通り。
<最終順位>
1位:ドイツ(4勝0敗)/2位:フランス(3勝1敗)/3位:日本(2勝2敗)/4位:オランダ(1勝3敗)/5位:イギリス(0勝4敗)
<日本戦詳細>
●日本 63-74 フランス○
●日本 38-60 ドイツ○
○日本 58-50 オランダ●
○日本 60-51 イギリス●
日本代表は10月に千葉市で開催される、リオデジャネイロ・パラリンピック出場権をかけた、「アジア・オセアニアゾーン予選」に向け、チーム力を強化中。車椅子バスケットボール連盟によれば、今大会でもエントリーメンバー全員を起用し、さまざまな戦術を試すなど、本選に向けて手ごたえを得たという。
◼ブラインドサッカー
・4日: 日本ブラインドサッカー協会(JBFA)によれば、新宿区のNPO協働推進センターで「ブラインドサッカー女子練習会」を開催、小学生から大人まで、視覚障害者と晴眼者(視覚障害のない人)を合わせて21名の女子が参加した。
練習会はJBFA普及育成部のスタッフがあたり、2つの部が行われた。1つは全盲クラスのブラインドサッカーの部で、アイマスク着用がルールなので誰でも参加できる。
今回は、幅広い年齢層で初めてブラインドサッカーを行う人もいるなか、鈴入りの専用ボールの扱いに慣れる練習を中心に行われた。もう1つは弱視対象のロービジョンフットサルの部。アイマスクは着用せず、フットサルとほぼ同じルールで行われる競技で、練習会ではボールタッチや対角パス、シュートやゲーム練習など幅広いメニューを行うなかで、互いに自然と声を掛け合い、活発なコミュニケーションがみられたという。
日本には現在、女子単独のチームはなく、国内リーグでは男女混成のチーム編成が認められていて女子選手が所属しているクラブチームもいくつかある。
JBFAでは競技の普及だけでなく女子単独チームの結成も視野に、今後も女子練習会を開催していきたいという。
=================
◆ピックアップ・トピック◆
報道によれば、日本パラリンピック委員会(JPC)は3日、2020年東京パラリンピックを見据えた選手強化の一環で、トップ選手の指導を担う「専任コーチ」制度を今年度から始める方針を明らかにしました。
日本では現在、パラリンピック競技の指導者の大半はボランティアですが、「専任コーチ」は一定条件のもとで指導などの活動に対して報酬が支給されることになり、指導に集中できる環境が整います。同様の制度は、すでにオリンピック競技では導入されています。
JPCでは、初年度は国からの予算4000万円を充て、陸上や水泳などから約10人の専任コーチを選定する予定で、今後も競技団体と協議しながら、増員を検討していくようです。
たしかに現状では、パラスポーツのコーチや指導者には特別支援学校の教員や障害者スポーツセンターの職員など業務の延長で携わるようになり、そのままボランティアで続けている人たちも多いです。
また、選手経験があるなど競技との関係から携わるようになったものの、職場の理解が得られないなど本業との兼ね合いで長期の合宿や海外遠征の帯同などは制限せざるを得ない人たちも少なくありません。「専任コーチ」制度は、そうした現状の改善に役立ち、また、専門性の高い指導という意味では、パラリンピアンのセカンドキャリアの可能性も広がるかもしれません。
もちろん、まだ枠も限られているし、パラスポーツの場合は指導の対象となる選手層がうすいという課題もあり、2020年大会後にも制度が続くのか将来的な不安は残ります。でも、現状に100パーセント満足していない限り、新たな試みは現状を変えるいいチャンス。どう機能し、どんな広がりを見せるか、期待をもって見守りたいと思います。