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「星野恭子のパラスポーツ・ピックアップ」(468) パリパラにロシア・ベラルーシ選手が個人・中立の立場で出場へ/愛知・名古屋2026アジアパラ競技大会開催へ

今号では直近に届いた、これからのパラスポーツにとくに大きな影響を及ぼすだろうニュース2つをピックアップしました。一つは「来年のパリパラリンピックにロシアとベラルーシの選手が個人・中立の立場で出場へ」、もう一つは「2026年アジアパラ競技大会の愛知・名古屋開催が正式決定」です。

まず、一つ目のニュースですが、2022年2月のロシアによるウクライナ侵攻が始まって以降、ロシアと同盟国ベラルーシの選手は同年3月の北京冬季パラリンピックをはじめ国際大会から除外されてきましたが、一部の規制が緩和され、例えば、来年のパリパラリンピックには個人資格で国旗や国歌などを使用しない中立の立場といった条件付きで参加できることになったというニュースです。

9月29日にバーレーンで行われた国際パラリンピック委員会(IPC)の総会でロシアパラリンピック委員会の会員資格を巡る投票が行われ、これまでのように国際大会には一切出場できないなど「完全な資格停止」は賛成65-反対74で否決されたものの、今後2年間の部分的資格停止については賛成90-反対56で可決されたことから、両国の選手・関係者のパラリンピックや世界選手権などへの出場が条件付きで認められることとなりました。ベラルーシについても同様の結果となったそうです。

この結果により、両国の選手・関係者はIPCが定める条件を満たせば、パリパラリンピックへの出場資格も与えられます。ただし、まだ団体種目の出場は認められません。

この決定についてIPCのアンドリュー・パーソンズ会長は、「IPC総会はIPC、ロシアとベラルーシのパラリンピック委員会から証拠を提示された後、長時間の議論を行い、この決定に至りました。すべてのIPC会員がこの決定を尊重することを期待しています」とのコメントを出しました。

日本パラリンピック委員会(JPC)の森和之会長も同IPC総会にも出席し、両国の「完全な資格停止」 に賛成票を投じたことを明かしたうえで、下記のコメントを発表しています。

「JPCはパラスポーツを通じて、活力ある共生社会を実現することを目指しており、そのためには人命、人権、平和の確保が何よりも優先されるべきと考えています。ロシアのウクライナに対する一連の行為はこれと対極を為すものであり、決して許されるものではありません。今回、ロシア・ベラルーシのIPC加盟権の全面的な停止に関する動議は否決されましたが、JPCは戦争に明確に反対する立場から、この動議を支持しました。パリ2024パラリンピック競技大会に両国の選手が中立的な立場で参加することについて、JPCは全面的に支持したわけではありませんが、IPC総会での最終決定として尊重します。引き続きJPCは、即時停戦とロシア軍の撤退がなされること、そしてウクライナの平和の回復と復興を祈願致します」

この後の報道で、ウクライナパラリンピック委員会のスシケビッチ会長はこの決定を、「ロシアによる戦争犯罪への無関心」などと批判し、パリパラリンピックへのウクライナ選手団の出場についても「まだ決まっていない」と話しているようです。

「終戦まで両国選手の大会復帰を認めるべきでない」「政治とスポーツは切り離すべき」など、さまざまな意見が交錯する難しい問題ですが、今回のIPCの決定について皆さんはどう思われますか。パリパラリンピックは来年8月28日に開幕します。それまでに、停戦やウクライナからのロシア軍撤退など事態が好転していくことを願ってやみません。

■次回2026年アジアパラ競技大会、愛知県内で開催へ

2つ目のニュースは現在、中国・杭州で熱戦展開中のアジア大会のパラスポーツ版となる、「アジアパラ競技大会」が2026年に日本国内で初開催されることが正式に決まったというニュースです。パラスポーツ振興の大きな後押しとして期待されます。

10月3日、愛知県の大村秀章知事と名古屋市の河村たかし市長はアジアパラリンピック委員会(APC)との間で2026年10月に行われるアジアパラ競技大会について愛知県を主な会場として実施する開催都市契約を正式に締結しました。

この「愛知・名古屋2026アジアパラ競技大会」は2026年10月18日(日)~10月24日(土)に開催されます。すでに決定していた「第20回アジア競技大会愛知・名古屋2026」(2026年9月19日~10月4日)から約1カ月後の開幕となります。

アジアパラ競技大会は4年に1度開催されるアジア最大のパラスポーツの祭典で、日本国内で開催されるのは初めてになります。「愛知・名古屋2026大会」には45の国と地域から選手は2,400人から2,700人が参加し、陸上や水泳など18競技(*)の実施が決定しています。

(*実施予定競技:アーチェリー/ブラインドフットボール/バレーボール(座位)/車いすフェンシング/陸上競技/ゴールボール/水泳/車いすラグビー/バドミントン/柔道/卓球/車いすテニス/ボッチャ/パワーリフティング/テコンドー/自転車競技/射撃/車いすバスケットボール)

大村知事は「大会には重要な社会的意義がある。しっかりと準備を進めていく」、また河村市長は「世界に素晴らしいものを残したと言われるようにしたい」と3年後の地元開催への大会に向け、意気込みを語りました。

また、JPC 森会長も、「これから大会準備が本格化していきますが、障がいのある方々の意見を反映して、アジア各国から愛知・名古屋に来訪する選手や関係者が活躍し、歴史に残る素晴らしい大会であったと感じてもらえるように、開催都市と連携して尽力していきたいと思います。また、大会の成功のみならず、この大会を通じて、愛知・名古屋でのパラスポーツの普及・振興が一層進むと共に、ボランティアの皆さんの参加、企業のご協力、さらにメディアでの大会意義や価値のご紹介を通じて、社会の変革に繋がるような様々なレガシーが継承され、誰もが違いを尊重し認め合う活力ある共生社会の実現に一緒に取り組んでいきたいと思います」とのコメントを発表しています。

なお、愛知・名古屋大会の一つ前の大会として中国・杭州2022大会がまもなく10月22日に開幕予定です。新型コロナの感染拡大の影響で1年延期となっていました。日本からは9月29日時点で、20競技に選手262名、競技パートナー8名、他スタッフなど約400名の選手団の派遣が発表されています。こちらもぜひ、応援ください。

▼JPC: 杭州2022アジアパラ競技大会特設サイト
https://www.parasports.or.jp/paralympic/jpc/asianpara/hangzhou2022/index.html

(文: 星野恭子)