「星野恭子のパラスポーツ・ピックアップ」(463) ゴールボール日本代表オリオンJAPAN、男子がパリパラリンピック出場へ! 女子も大きく前進
8月18日から27日までイギリス・バーミンガムで開催されていた視覚障害者スポーツの総合大会「2023 IBSAワールドゲームズ」で、ゴールボール競技は「パラリンピック予選ランキングトーナメント」を兼ねて行われ、男子日本代表が14チーム中1位となりました。この結果、優勝国に与えられるパリパラリンピックへの出場権を獲得しました。日本勢の団体競技でのパリ大会出場枠獲得は車いすラグビーについで2番目となります。
「2023 IBSAワールドゲームズ」で初優勝し、同時にパリパラリンピック出場権もつかんだゴールボール男子日本代表チーム。左から、金子和也選手、宮食行次選手、佐野優人選手、信澤用秀選手、一人おいて、川嶋悠太キャプテン、工藤力也ヘッドコーチ、田口侑治選手 (提供:日本ゴールボール協会)
世界ランキング7位の日本は、まず7チームずつ総当たり戦のグループリーグを戦い、同3位のリトアニアには10-3で敗れたものの、通算5勝1敗のグループ2位となりました。つづく準々決勝では同4位のアメリカを5-1で退け、準決勝は格下9位のウクライナと接戦となるも、ゴールデンゴール方式の延長戦で4-3と勝ち切ります。
迎えた決勝では韓国を相手に先制点を上げると終始危なげない試合運びのまま7-3で勝利。ワールドゲームズ初優勝を果たすとともに、悲願のパラリンピック出場権もつかみ取りました。男子日本は東京パラに開催国枠で初出場し、5位入賞を果たしましたが、東京パラ以降は自力でのパラリンピック出場を大きな目標に強化を進めてきました。
チーム一丸で目標を達成したオリオンJAPAN男子メンバーから喜びのコメントが届きました。抜粋して紹介します。
市川喬一ハイパフォーマンスディレクター(HPD)
本大会では男女で金メダルを獲得し、パリパラリンピックの出場枠を獲得することが最大の目標ではありました。男女とも大変厳しい予選を戦い抜き、このような大きな大会で男女ともに決勝に進むことができたことは大変喜ばしく、そしてこれまでの選手たちの努力が報われた瞬間であったと思っています。特に男子チームは、TOKYO2020では開催国枠で出場することはできましたが、自力でのパラリンピック出場枠獲得するまでに足掛け30年の長い期間を経て、ようやくたどりつくことができました。TOKYO2020のレガシーが脈々と受け継がれ、チームを活性化させ、今回の金メダルにたどり着くことができたと感じています。女子チームは、11月に中国・杭州で開催されるAsia/Pacific
Championships(アジア大陸予選)でのパラリンピック出場権獲得を目指します。
川嶋悠太キャプテン (センター)
今大会は日本チームの強さ、チームメイトの頼もしさ、スタッフの心強さなどたくさんのことを感じることができました。決勝戦での最後のブザーが鳴った瞬間はこれまでの取り組みが間違いではなかったことを証明した瞬間でもありました。それとともに、次はパリパラリンピックでの金メダル獲得が明確な目標となった瞬間でもありました。
田口侑治選手 (センター)
男子は東京パラリンピックで準々決勝敗退し、非常に悔しい思いをしてきました。パラリンピックで受けた悔しさはパラリンピックでしか晴らすことができないと思っております。世界一の選手、世界一のチームになるためにパリまでしっかりと準備を進めていきたいと思います。必ず金メダルを獲得します。
金子和也選手 (レフト)
多大なるご声援とご支援くださった皆様、本当に力となりました。ありがとうございました。得点源としてチームに貢献できた部分と、パリパラリンピックで優勝するために、課題を感じた大会です。今後さらなる飛躍のために邁進していきます。
佐野優人選手 (ライト)
この優勝はチームメンバーが一丸となったことはもちろん、ベンチスタッフ、サポートスタッフの皆様のお力だと思っています。そして、日本からのSNSでの応援も力になりました。ありがとうございました。これからパリに向けて頑張りますので、今後とも応援宜しくお願い致します。
信澤用秀選手 (ライト)
今年になり、代表に復帰し、パラリンピック出場権獲得がかかる重要な大会に出場できたこと、このチームの一員として戦えたことに感謝と、幸せだという感情でいっぱいです。次はパラリンピック代表選考の戦いが始まります。この代表選考の戦いに勝ち抜き、パラリンピックで金メダル獲得を目標にトレーニングに取り組みます。
宮食行次選手 (レフト)
夜遅くまで映像を見ながら戦略を練って、的確なベンチワークをして頂いたベンチスタッフ、映像分析班、最高のコンディションにして頂いたケアスタッフ、みんなで勝ち取った金メダルだと、ひしひしと感じます。2022年のアジア・パシフィック選手権の初めての金メダルに続き、今回は世界大会で金メダル獲得と、男子ゴールボールの歴史に新たな1ページを刻むことができて大変嬉しく思います。次はパラリンピックで金メダル!
工藤力也ヘッドコーチ
選手とスタッフが役割を果たし、今大会中試合を重ねるごとにチームが成長していったことが勝因です。そして何より、日頃より選手を支え応援してくださる皆様がいてこその結果です。男子チームの目標はパリパラリンピックでの金メダル獲得です。目標達成に向け精進して参ります。引き続き、応援の程よろしくお願いします。
■11月のAP選手権でパリパラを目指す女子
世界ランキング2位の女子日本代表は今大会、決勝で中国に0-3と敗れて準優勝。惜しくもパリパラ出場権の獲得はならず、最終チャンスとなる11月の2023アジア・パシフィック選手権(中国・杭州)で再挑戦することとなりました。
今大会では6チームずつのグループリーグを4勝1敗の2位で突破しましたが、以降は厳しい試合が続きました。準々決勝は世界ランク3位のアメリカと延長前後半を戦って0-0でエキストラスロー(ET)に突入。5人ずつの2巡目までもつれ込み、3人目の萩原紀佳選手がゴールデンゴールを決め4-3で勝利しました。つづく世界ランク4位のブラジルとの準決勝も同様に1-1からのEXTなり、こちらも2巡目に入り、一人目の安室早姫選手が決めて3-2で勝ち切りました。
決勝は世界ランキング7位の中国。グループリーグで0-1と敗れた雪辱を狙いましたが、0-3で敗戦しての2位。ワールドゲームズでの準優勝は過去最高成績でしたが、パリパラ出場枠は逃す悔しい結果となりました。
パリ切符は11月の2023アジア・パシフィック選手権で優勝すれば獲得できますが、もし逃しても中国が優勝すれば、今回のワールドゲームズで中国につづいて準優勝となった日本がパリ切符を手にできる規定となっています。2度のETと苦しみながらもチーム一丸で勝ち抜いたことで、日本はパリ切符獲得競争で優位に立つことができたというわけです。
「2023 IBSAワールドゲームズ」で初の準優勝を果たした、ゴールボール女子日本代表チーム。左から、市川喬一HPD、2人おいて、神谷歩未選手、安室早姫選手、天摩由貴選手、萩原紀佳選手、高橋利恵子キャプテン、欠端瑛子選手 (提供:日本ゴールボール協会)
高橋利恵子キャプテン (センター)
銀メダルというパリパラリンピックまで一歩届かない結果となってしまい、大変悔しい思いでいっぱいです。ですが、パリへの道が閉ざされたわけではなく、すぐに次の機会がやってきます。立ち止まることなく、今回できたこと、できなかったことを見つめて練習に励んでいきたいと思います。
安室早姫選手 (レフト)
女子チームは決勝で敗れ、目標としていたパリの切符獲得はならず、あと一歩ではありながら、予選と決勝で中国に連敗し遠く及ばぬ一歩となってしまいました。しかし、2試合連続でサドンデススローまでもつれこみながらも勝ち切れたことは大きな経験値となりました。今回得た課題と自信を糧に、11月のアジア・パシフィック選手権に向けてまた努力します。
欠端瑛子選手 (レフト)
今大会は決勝まで進んだものの中国に敗れ銀メダルという結果で終わってしまいました。個人的には先制点を入れられず得点を許してしまったことがとても悔しいです。今回出てきた課題を日本でしっかり練習し次の大会そしてパリ大会に繋げていきます。
神谷歩未選手 (センター)
1位の国にパリパラリンピックの切符が与えられるという大事な大会で優勝できなかったことは非常に悔しいです。しかし、まだ切符を獲得するチャンスは残っているので、チームとしても個人としても今大会での課題を整理して一つ一つ乗り越えて必ずパリパラリンピックの切符を獲得します。
天摩由貴選手
準々決勝、準決勝は全員で繋いで勝ち切りましたが、決勝は中国に惨敗でした。悔しさはありますが、気持ちは既に次の大会に向いています。10月のアジアパラ競技大会で中国や韓国に勝ち、良い流れを作って、11月のアジア・パシフィック選手権では必ずパリパラリンピックの出場権を獲得します。
萩原紀佳選手
準々決勝、準決勝と追い詰められた場面でも全員が最後まであきらめることなくチームにつないで決勝戦に進出できたことはよかったと思います。ただ決勝戦で負けてしまったのはまだ弱い部分や足りない部分があると思うので、気持ちの整理をしてからまた次に向けて進んでいきたいと思います。
男女それぞれ、新たな目標に向かってリスタートしたオリオンJAPAN。さらなる躍進に期待です。
(文:星野恭子)