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【週刊Jリーグ通信】第4節「ドリブラー関根を生かして浦和首位を守る」

 日本代表の日程をはさんで2週間ぶりに開催されたJ1。「大混戦」と言われるなか、浦和レッズが3勝1分け、勝ち点を10に伸ばして首位を守った。


 これまでの3勝はすべてJ2からの昇格チームから挙げたもの。第1節では湘南に3−1で逆転勝ちし、第3節モンテディオ山形に1−0、そして第4節では松本山雅に1−0と、ともに終盤のゴールで勝った。第3節のサンフレッチェ広島戦は0−0だった。勝った相手の顔ぶれから、高い評価を与える人は多くはない。

 

 しかし山形と松本は浦和のホーム埼スタでひたすら守備を固めてカウンターを狙うサッカーをした。どちらも簡単な試合ではなかった。そこを勝ちきったのは見事と言ってよい。


 4月4日の第4節、浦和のペトロヴィッチ監督は今季初めてMF関根貴大を先発させた。1995年4月19日生まれ、20歳を目前にした若手だ。


 167センチと小柄だが、昨年ユースから昇格してすぐにデビュー、ステップワークと細かなタッチで相手をまるで「うなぎ」のようにするするとかわしていくプレーで人気者となった。昨年はほとんど交代での出場だったが、ボールが関根に渡るだけでスタンドが大きく沸くようになった。

 

 3−4−2−1システムの浦和。私は「2」にあたる「シャドーストライカー」での起用も面白いのではないかと思うのだが、ペトロヴィッチ監督は一貫して関根を外側のMF、とくに右のMFとして、攻撃のギアアップをするために起用してきた。

 

 しかし松本戦では、この関根を右MFとして先発させたのだ。松本が守備を固めてくるという予想からだった。

 

 ペトロヴィッチ監督が過去4年間をかけて鍛え上げてきた攻撃の最大の強みは、「1トップと2シャドー」、攻撃の中央に並ぶ3人の素早いコンビネーションプレー。ワンタッチパスを多用して相手の守備ラインの中央を破るプレーだ。

 

 昨年まではFW興梠慎三、FW李忠成、MF柏木陽介、MF梅崎司らがその軸だったが、今季はそこに大宮からFWズラタン、広島からFW石原直樹、仙台からFW武藤雄樹、そして清水からMF高木俊幸という即戦力の4人を補強、一挙に層が厚くなった。この松本戦では、FWズラタン、MF梅崎、そしてMF高木の3人が起用された。

 

 だが松本の戦い方を分析したペトロヴィッチ監督が最も大きなポイントを置いたのはアウトサイドだった。人数をかけて守る松本の中央を破るのは簡単ではない。当然、突破の主体は両アウトサイドとなる。そこで関根の先発に踏み切ったのだ。

 

 実際、この試合の前半、浦和の決定的なチャンスは8回だったが、そのうち7回は右サイドを起点としたもので、さらにそのうち6回は関根がつくりだしたものだった。

 

 最大のチャンスは前半31分。ボールを受けるとほとんどの場面でドリブルをしていた関根が、そのドリブルを警戒して相手が当たりにこないのを見ると、ドリブルをせず、相手を前に置いたまま中央にパスを送ったのだ。このパスを受けたFWズラタンが見事なコントロールでマークを外し、右足で強烈なシュート。松本GK村山智彦が見事なセーブで防いだが、決定的な場面だった。

 

 後半にはいると浦和は左からの攻撃が多くなる。MF宇賀神友弥とDF槙野智章が互いにスペースをつくりながら攻め込み、チャンスをつくる。

 

 昨年の関根はスタミナがなく、U−19日本代表の試合で先発しても前半は活躍しながら後半は動きが落ちて攻撃にからむことができないケースが多かった。この試合でもそろそろ交代かと思っていたが、ペトロヴィッチ監督が送り込んだ交代選手はすべて他のポジションだった。

 

 そして後半35分、関根に最大の見せ場がくる。右サイドでDF森脇良太からボールを受けると、ドリブルで次々と相手をかわし、ゴールライン沿いにゴールまで5メートルのところまで迫って松本の守備陣を混乱させたのだ。このプレーが決勝点の重要な伏線となる。

 

 5分後の後半40分、再び森脇からのパス。関根はドリブルでゴールライン近くまでボールを運んだが、そこで無理をせず、ペナルティーエリアの右角あたりにいた森脇にボールを戻した。そして森脇が左足を振り抜くと、ボールはきれいなカーブを描いてゴールの左上に吸い込まれた。

 

 

 結果的には、浦和に勝利をもたらしたのは森脇のミドルシュートだった。しかしそのゴールを生んだのは、「関根のドリブル」だった。関根がドリブルを始めたとき、松本の守備陣は「また抜かれてくる」とカバーの位置にはいり、パスを受けた森脇へのアプローチが遅くなったのだ。それまで浦和のシュートのほとんどすべてを体に当ててブロックしてきた松本守備陣の対応が遅れたのは、関根に気をとられたためだった。

 

 日本代表と同じように、「縦に、シンプルに速く」という傾向が強まっているJリーグだが、いくつものチームが関根のように圧倒的なドリブルの力をもった選手をもち、試合のなかでそのドリブルを生かそうとしている。川崎フロンターレのMFレナト、横浜F・マリノスのFW斉藤学など、何人もの顔が思い浮かぶ。

 

 そうしたドリブルの力をそれぞれのチームがどう生かそうとしているのか、パス主体のサッカーとどう組み合わせようとしているのか、それを考えてみると、サッカー観戦のおもしろさも倍加するのではないだろうか。

 

〈写真:Jリーグホームページより〉