星野恭子のパラスポーツ・ピックアップ(75)2015.3.20~3.24
国内外のパラリンピック競技の話題を独自にセレクトした「パラスポーツ・ピックアップ」シリーズ。今号はシーズン終盤を迎えたスキー2競技の様子から、昨年の世界選手権以来、国内では初となるブラインドサッカー日本代表戦で、強豪を破った模様などをお送りするほか、今週末の大会情報も! また、来年に迫ったリオデジャネイロ・パラリンピックのプレ大会の日程が発表されました。準備の遅れなども懸念されていましたが、開幕に向けて準備は着々と進んでいるようです。
■ノルディックスキー
・20日: 世界12カ国から約80選手が参加してノルウェーのスルナダルで17日に開幕した、IPC(国際パラリンピック委員会)ノルディックスキー・ワールドカップ(W杯)最終戦の第3日は男女バイアスロン・パシュートが行われた。日本から2選手が出場、女子立位(10キロ)で阿部友里香(日立ソリョーションズJSC)が3位に入賞した。阿部にとってW杯バイアスロンレースでの初のW杯表彰台。タイムは36分秒43秒69で、射撃のペナルティー=4(0+0+1+3)だった。
パシュートは、前日のバイアスロン・ショートのレース結果(タイム)に障害の程度に応じて予め決められた値を掛けて求めた計算タイムをもとに遅い順にスタートし、途中で5発の射撃を4回行う。射撃でミスした場合は、1発につき1周150mのペナルティーループを周回しなければならず、フィニッシュした順位がそのまま最終順位になる。
▼コメント
・阿部友里香選手
今日は一周目からしっかり呼吸調整をして射座に入った。最終射撃で初弾が出てこないアクシデントがあり3発外してしまい、最終的にはペナルティーは4だったが、身体も一周目から動いていたため最終周もいつもより動かせていたと思う。周を重ねるごとに滑りの勢いがなくなりがちだったが、今日は最後までやるべきことをできたと思う。
・荒井秀樹監督
阿部がワールドカップのバイアスロンレースにおいて、初の表彰台となった。前半から飛ばし、射撃も好調で3位をキープした。しかし、上位のウクライナ勢は強く、3年後のピョンチャンを見据えた場合、このウクライナ勢と互角に戦う実力をつけなければならない。今日のレースを教訓に、さらに上をめざして精進してほしい。
・21日: W杯最終戦4日目は男女クロスカントリー・ミドル・クラシカルが行われ、日本からは5選手が出場し、男子立位(10キロ)の新田佳浩(日立ソリューションズ)が25分00秒0で3位に入賞した。
▼コメント
・新田佳浩選手
今シーズン最後のレースだったので、来シーズンにつながるレースでもあると考えていたので、今回3位になることができたことは非常に重要だった。またレース自体も、数秒差を争う展開だったが、昨日の阿部選手の意地の滑りに刺激されて競り勝つことができた。
・長濵一年クロスカントリーコーチ
日本のエース新田選手が見事3位に入り銅メダルを獲得する力走を見せてくれた。この種目一本にしぼり、狙い通り勝負を賭けて挑んだレースで、しっかり結果を残してくれた新田選手の勝負強さはまだまだ健在で、我々日本チームの強さを大いにアピールできたレースであった。多くのカテゴリーがある中で今最も過酷な激戦グループとされるクロスカントリー男子立位の部、各国の若手選手が勢いを増して成長して来ている中で、これまでの経験とベテランの意地を見せ、冷静な判断で戦ってくれた新田選手の強さを世界に大いにアピールできたレース内容でもあった。
・22日: 大会最終日は男女バイアスロン・ロングが行われ、日本からは2選手が出場し、女子立位(12.5キロ)の阿部の4位が最高だった。タイムは44分34秒9、ペナルティーは4(0+0+2+2)だった。荒井秀樹監督は、「2014-15シーズンを締めくくるバイアスロン・ロングレースで、阿部は前半を首位に迫るレース展開だった。しかし、後半は走力、射撃とも差をつけられ表彰台を逃した。射撃命中率の向上、走力の強化が急務で、来シーズンに向けチームとして強化に取り組みたい。クロスカントリースキーでは、新田佳浩がクラシカルで世界と互角の戦いができている。日本チームも新体制になり、今後も強化を進めていきたい」と今大会と今シーズンを総括した。
▼コメント
・阿部友里香選手
今日は今シーズンラストレースだったため、来シーズンに良い形でつなげられるような滑りを心がけた。朝から強い風が吹いていてタフなレースとなった。射撃の方は2回目まではリズムよく撃つことができるが、苦しくなった3、4回目で外してしまうのがこれからの課題だ。滑りの方は周回を積むごとに勢いが落ちてしまうが、最後まで諦めず滑ることができた。いつもシーズン後半になるにつれ、コンディションが落ちてきてしまうが、今シーズンは徐々に上げることができ、最後まで元気良く滑ることができたのはよかった。
(情報提供:日本障害者クロスカントリー協会)
■アルペンスキー
・21日~24日: 長野県の白馬八方尾根スキー場を舞台に日本最高峰の大会、IPC(国際パラリンピック委員会)公認ジャパンパラアルペンスキー競技大会が開催され、各障害クラス別に4日間で順に大回転、回転、スーパーコンビ、スーパー大回転が行われた。各種目のクラス別の結果は、大会公式サイトで公開されている。また、同サイトには大会を記録した動画の配信サイトへのリンクもあり、選手の力強い滑りを振り返ることができる。
アルペンスキーのジャパンパラ大会は1993年から毎年開催されており、パラリンピックの実施クラス(立位、座位、視覚障害)に加え、知的障害と聴覚障害クラスも実施され、幅広い選手が参加できる。また、現在はIPC公認大会としてランキングポイント獲得の機会でもあり、外国選手の参加もあり、今年も韓国選手が参加していた。
■ブラインドサッカー
・22日: コロンビア代表(2014世界選手権7位)を迎えた国際親善試合「さいたま市ノーマライゼーションカップ」が同市内のフットサル場で行われ、日本代表(同6位)が1-0で勝利した。前半6分、エース黒田智成が得意のドリブルで相手陣内に攻め込んであげた1点を、持ち味の固いディフェンスで守り切った。MVP(最高殊勲選手)には黒田が、MIP(最も印象に残った選手)にはコロンビアのジョン アレクサンデル・エルナンデス ガルシアがそれぞれ選ばれた。
【先制後、さらに追加点を狙う黒田智成選手(右)と、MIP受賞のコロンビア7番、ジョン アレクサンデル・エルナンデス ガルシア選手 】
黒田は決勝点を挙げたシーンについて、「粘り強いディフェンスから、いいボールがこぼれてきて、いい形でドリブルに入れてシュートまでもっていくことができた。シュートは、キーパーが近いことがわかっていたので、キーパーを外そうと角度をつけて蹴った。かなり角度をつけたので不安だったが、うまく入ってくれてよかった」と振り返り、反省点としては、「後半疲れてくると、ボールを簡単に奪われたり、相手にチャンスをつくられたりしたので、これからの課題として練習していきたい」と話した。
魚住稿監督は、「(昨年の)世界選手権以降、オフェンスとディフェンスの融合をテーマに置き、いい形で得点し、得意のディフェンスで守りきるという試合展開を考えているが、今日は自分たちが攻撃していた時間帯でまず1点を挙げることができ、ディフェンシブの場面ではしっかりと守り、0点に抑えることができ、狙い通りの戦い方ができた」と手応えを口にした。また、来年のリオデジャネイロ・パラリンピックの予選となる今秋のアジア選手権について、「優勝してリオへの切符をつかみたい」と話した。
さいたま市は2011年、障害の有無に関係なく、安心して生活できる社会を目指す「ノーマライゼーション条例」を政令指定都市として初めて制定。この条例を具現化するイベントとして、「視覚障がい者と健常者が当たり前に混ざり合う社会を実現すること」という理念を掲げる日本ブラインドサッカー協会(JBFA)と共催で、2013年からこの「ノーマライゼーションカップ」を開催している。対戦国には第1回はブラジル、第2回はドイツを迎えたが、日本はいずれも敗れており、今大会が初勝利だった。
なお、今週末の28日(土)と29日(日)には神奈川県川崎市で「クラブチーム選手権」が開催される。昨年8月から全国で行われていた「地域リーグ」の上位チーム5チームと予選を勝ち抜いた1チーム(*)に、今年はコロンビア代表を加えて頂点を競う。入場無料で観戦できる。
<ブラインドサッカー クラブチーム選手権2015>
日程:3月28日(土)、29日(日) ※小雨決行 荒天中止
1日目 予選第一試合13:00から 開会式14:20から(予定)
2日目 第一試合10:00から
会場: フロンタウンさぎぬま (東急田園都市線「鷺沼駅」下車 正面出口から徒歩3分)
※入場無料
出場チーム:
F.C.Avanzareつくば(関東リーグ代表)/たまハッサーズ(関東リーグ代表)/兵庫サムライスターズ(関西リーグ代表)/新潟フェニックスファイヤーズ(東北北信越リーグ代表)/ラッキーストライカーズ福岡(公式認定試合で決定)/コロンビア代表(海外招聘チーム)/予選優勝チーム(*)
(*)予選参加チーム:
buen cambio yokohama (神奈川/関東リーグ所属)/埼玉T.Wings (埼玉/関東リーグ所属)/乃木坂ナイツ(東京/関東リーグ所属)/コルジャ仙台(宮城/東北・北信越リーグ所属)
■パラサイクリング
・22日: オランダ・アペルドールンで26日に開幕する「2015パラサイクリングトラック世界選手権」に出場する日本選手団が成田空港から開催地へ向けて出発した。代表選手は下記の5名。大会には世界30カ国から約160選手がエントリーしており、大会最終日の29日の模様は史上初めて、YouTubeでのライブ中継(日本時間29日午後8時25分から)が予定されている。
<代表選手>
藤田征樹(日立建機株式会社)
石井雅史(公益財団法人藤沢市みらい創造財団)
鹿沼由理恵(楽天ソシオビジネス株式会社)
田中まい(パイロット、日本競輪選手会)
藤井美穂(楽天ソシオビジネス株式会社)
■ブラジル発
・24日: 2016リオデジャネイロ・オリンピック・パラリンピック大会組織委員会は来年に迫った本大会開幕を前に、44のプレ大会を実施すると発表した。34がオリンピックで6つがパラリンピック、他4つが両大会を含んだテスト大会になる。プレ大会は全156日間に及び、合計で7800人以上の選手と16000人のボランティアが参加する見込みだという。
プレ大会は全3期に分けられ、今年7月から10月の第1期には屋外競技を、11月から来年2月にかけての第2期は主に屋内イベントを、そして来年3月から5月の第3期には大会直前での最終確認の場となる。それぞれ会場設備や計測システム、ボランティアら人員体制などがテストされる。有料で観客を入れる大会と、クローズドで行われる大会とがある。
パラリンピック関連のプレ大会は以下の通り。
<2015年>
・8月1-2日: トライアスロン
・9月4-6日: カヌー
・9月15-22日: アーチェリー
・11月12-14日: ボッチャ
・12月10-12日: 車いすテニス
<2016年>
・1月19-22日: パワーリフティング
・1月29-31日: ウィルチェアーラグビー
・4月19-23日: 水泳
・5月4-5日: ゴールボール
・5月17-21日: 陸上競技
(星野恭子/文と写真)